第4話 翌日。
翌日。僕は相変わらず平野につきまとわれていた。
「ほんさぁん。次、化学だよぉ。『出欠取ります。はい、あ~べ』が今日も出るのかなぁ」
化学の先生は出欠を取る際、阿部くんを呼ぶときだけ面白く言う。いや、僕たちが面白がっているだけだ。カエルの鳴き声を、八割方人間っぽくした声色が先生のマネに適当なのだ。クラスメートが真似し始めたが、どうしても微妙なラインで似ていない。やっぱり本人にはかなわない。
「ほんさぁん。八〇ページ綴じのノート買ったぁ?今日から使……」
「ねぇ。本多くん…だよね?」
凛とした綺麗な声が僕の名前を呼んだ。
「あ……うん」
「昨日、喫茶店に財布、忘れていったよね? はい、これ」
彼女が差し出した財布は、僕のだった。気づかないうちに忘れていたようだ。
「あ……! ありがとう」
僕はすぐに財布の中身を確認した。大した金額は入れていなかったが、それでもバイト禁止の高校生にはたとえ一円でも無かったらショックだ。
「ふふっ。疑わないでよ。マスターはお金盗むような人じゃないから。私もそういう趣味無いし」
「ごめん…」
「謝らないで、冗談だよ? じゃあ」
「ありがとね!」
彼女は振り返り、ニコっと笑って、列の最後尾にある自分の席に戻っていった。彼女の後ろ姿を目で追っていると平野が耳元で囁いた。
「あれあれ、本多くぅん? 顔赤いよぉ?」
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