第47話 いろんな意味で限界です
「チュウしちゃった」
「チュウって……なあ君ぃ! おのれは、ほんと何て事してくれてまんねん!!」
「なんで……でしょう?」
「ちゃ、ちゃんと僕が納得できる説明をしろ!」
「わかんない?」
「それで納得できるか!」
「納得して」
「そんな上目遣いで訴えてもダメだから!」
「お願い、後生だから」
「腰を振って甘えても許せる訳ないからな!」
「自分でも分かんない、どうしてだろう、不思議?」
「『どうしてだろう?』じゃないわ!」
僕は、唾を飛ばしながらがなり立てた。
「それに『不思議?』の一言で全て収まれば、葬儀屋も八百屋もいらんわ! ホント勘弁してくれよ!」
自分でもあまりの混乱から、ヒステリックに自分を失って意味不明の暴言を吐いてしまった。
葬儀屋さん八百屋さんごめんなさい。決して他意はございません。
その間も崎のたわわに実った豊満なバストは、容赦なく、許可なく、僕の目の中に土足で踏み込み、そのイメージは瞬時に脳にまで達した。
初心な童貞男子にとっては本来至福の瞬間のはずなんだが、そんな状況とは程遠い現実が堰を切って流れ出していく。
気づけば眼下数十センチの所に、二つの『洋ナシ型』の乳房がまるで生き物であるかのように蠢いている。
時に8の字を描いたかと思えば、柱時計の振り子のように『ブルンブルン』と、唸りを上げながら(空耳か幻聴です)豪快に揺れて始末に負えない。
ああそうか、目を閉じればいいのか? 簡単じゃないか。
しかしそうすんなりとはいかない。
目を瞑れば崎には申し訳ないが、僕の瞼の裏で彼女はあられもない姿へと変貌を遂げてく映像が浮かぶ。
こりゃいかん。ダメだ、ダメだ、ダメダメ!
目を閉じても崎の煽情的で完璧なプロポーションをした肢体が瞼の裏に張り付いて離れない。
剥がそうとしても剥がれない!
要するに一糸まとわぬ、すっぽんぽんの姿まであと一歩!
遂には、最後の砦ともいえる真っ白な薄い布切れ(白ビキニ)を脳内万代は引き剥がす作業に取り掛かった。
すまん、これだけは男の性というものだ、許せ!
降参だ、降参。
アイ・サレンダー!
すぐそこに……
すぐ僕の目の前にそれがある
手を少し伸ばせば触れられる
男を惑わす神が与え給うた
愛しき君の天然の造形物があるというのに
僕の夢をひとつだけ叶えてくれスイートハート
触らせてもらえないだろうか?
マイクロフォンは拾っているか?
ボクの激しく鼓動する心臓の音を
物言わぬ聴衆の、声なき声を
さあ、今がまさに立ち上がるとき
タッチ・カンバセーション
マッチ・コミュニケーション
指先でツンツンするだけでかまわない
そしたら、きっと空も飛べるはず
君の心の扉はきつく閉ざされたまま
ダメもとでお願いしてみる
でもそんな勇気もなく……
「…………」
間違いない。
僕は作詞の才能とは無縁のようだ。
そんな、僕によって拘束を取り外され、完全に無防備な条件を獲得した奇跡の“おぱーい”がこれでもか、これでもかという勢いでグイグイと迫ってくる。
もうこうなってしまっては、おっぱい星人は白旗を上げざるを得ない。
もうこれ以上僕に近づいてくれるな!
僕に
――無念!!
どうやらこれがマイ・サム(僕の××××)の限界のようだ。
こうなるともはや制御不能。
何が制御不能かと言うと、皆まで言わなくても分かるだろう。
順当な成り行きとしてその股間にぶら下がった我が××は、大人しくそのままの状態を保っていることを拒否ってきた。
もう次の瞬間には股間の暴れん坊は、その秘めた本性をむき出しに……!
至近距離から見つめる崎の鼻面をかすめて、グイッ! と体積を約三倍、角度を下向きから、九十度の角度に垂直上昇! 先端部分を天井に向け、堂々たる立ち姿の仁王立ちに…………。
目出度く最終形態の完成である(決して本意ではなく、目出度くもないのだが)。
限界点突破は呆気なかった。
お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください。
あなた方の息子(下半身のムスコも含め)はもう、もう、もう……。
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