第46話 ファーストキスは亀さんに
一方の崎は暫しの異性物観察タイムを終え、何か納得した様子で心なしか爽やかな表情だ。
で、彼女の口から出た言葉はと言うと……。
「先端部がツルッとしてる。それにピンク色ね」
散々観察した結果としての結論がそれかい!
「そうか、ピンクか……その比喩はちょっとエロいな」
それが、十五歳の無自覚系美少女の口から溢れると、艶やかさがプラスされてエロさ十倍だ。
「ドドメ色とか言われたら、即座に遺憾を表明するつもりだったのだが、その心配は無さそうだな」
確かに新品・未使用品であることは間違いない。
「ねえねえ万代、先端部の構造はどういうふうになっているの? お父さんのモノと形状が違うみたいなんだけど、どうして? 教えなさいよ」
なんでも知りたがる子供か、お前は!?
そもそも僕がそれに答える必要ある?
まあ、ここで説明を拒んだりしたら彼女の好奇心が詰まったびっくり箱から、何か得体のしれない物が飛び出して来ないとも限らない。
さて、どこからどう説明していいのやら……。
ちょっと手間だが、急遽、崎に頼んでお親父さんの部屋からタートルネックのセーターを持ってきてもらった。
ま、取り敢えずセーターを頭からすっぽりかぶって、頭を出したり引っ込めたりして見せた。
亀とか首とか真性・仮性等のキーワードを織り交ぜながら、あーでもない、こうでもないと解説しては見たものの、彼女の理解がどの程度深まったかは疑問だ。
こればかりは崎本人のみ知るところである。
てか、目の前に実物があるんだから、これで説明したほうが早くないか?
「もう少し詳しく聞かせて?」
「詳しくって……。まあ、僕の説明でどこまで正確に伝わるか分からないが」
一度探究心に火が付くと、後戻りできない崎の性格はなんとなくこれまでの経験則から僕も学習している。
「僕のおふくろさんが、元看護士だったことの影響があるのかもしれない」
「オフクロだって? 一丁前に大人ぶって」
「人のこと言える立場か?」
「でっ? でっ?」
僕の股間にぶら下がってる××が、崎の探求心に火が付いたようだ。
「元々、男の子の×××は×をかぶった状態で生まれてくる訳。さらに言えば哺乳類のオス(男)は全て×を被ったままで生まれてくんだ」
「でも、お父さんのとは違うよねえ?」
「それは、そうだが……。十人十色とでもいおうか、男十人いればそれぞれ違った形状や大きさ、それに性能も、か……。まあ、その辺に踏み込むと話がややこしくなるので、ここは一旦その件は横に置いといて話を先に進めさせてもらうぞ」
そもそもこの程度の知識は今どきの女子なら、ネットでも簡単に入手出来る情報だと思うのだが?
と、訝しんではみたが、当の崎はくえらく真剣な表情で興味深げに僕の話に耳を傾けて聞いていた。
「んん……。んっ? うーん……」
崎に、質問をさしはさまれると、話がどんどんややこしい方向に逸れてしまいそうだ。
できるだけシンプルに、分かりやすく、要点だけをかいつまんで説明することにした。
「分かってもらえるだろうか……? 端的に言ってしまえば、僕が赤ん坊のときに母親が息子の××××を、オムツ替えをする時毎にム×××したせいなんだ」
正確には××と言うのだろうか?
そのせいで、子供の頃からアソコは言うなればズル××状態だったこと。
僕は物心ついた時から×をかぶった状態を経験していないということ。
自分の××××が、外の男の子たちの形状と違うことを母に、泣きながら問い詰めたこともあったが、母親は「そのうち私に感謝する時が来るから、今は我慢しなさい」の一点張りだったこと。
今でこそ母親に感謝してはいる。
小さい頃は、こと対同年代の男子には筆舌に尽くしがたい苦労を強いられたこと等々を分かりやすく講義したつもりだが、彼女の理解が深まったかは不明だ。
女の子の君には窺い知ることはできないと思うが、僕がこれまでどれくらい苦労してきたか分かってもらえると嬉しい。
そういえば、最難関かつ最大障壁の修学旅行イベントの際には、もう、ハラハラ・ドキドキだったことも思い出される。
小、中学校の修学旅行の風呂場で裸になるときは、高度な防御態勢を維持しつつ、細心の注意を払っての入浴だったのは言うまでもない。
万が一、それがバレようものなら、どんな仕打ちが同級生から跳ね返ってくるかは想像に難くなかったからだ。
ふとその時、下半身へのガードが極めて固かった出雲のことを思い出した。
やつはやつでクラスの人気者という立場上、この手の厄介事には関わり合いたくは無かったのだろうか?
そして、その間も僕はっていうと、ビキニ姿の十五歳の少女の真ん前で全裸フル××状態の、誠に恥ずかしく、かつ不名誉な立ち姿をさらけ出しているのであった……!
などと考えてる間に、何やら股間の××の先端に冷たい感覚が……。
「えっ、えええええええ……?!?!?!」
思わず下を見下ろした時には、崎の『唇』と僕の剥き身状態の『亀』の頭とに接触した形跡が……。
――すでに手遅れであったようだ。
さすがの崎でも、まさかそこまでの行為(暴挙)におよぶとは考えもつかなかった僕の落ち度だ。
僕の大切なファーストキス、どうしてくれるんですかああ!!
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