孤心穿破

二千十五年五月*×日、彼は、悪夢を見ていた。

夢にうなされ突然大声を上げながら飛び起きた彼は、身体中を真っ黒に塗りつぶしたような大声を上げ、そのまま裸足で家から駆け出していった。

走り続け、走り続け、いつの間にかたどり着いた駅で電車に飛び乗った彼は、水色のパジャマによれよれの三角帽を頭に被っている。その車内には彼以外の誰の一人だっていなかった。

電車は汽笛を上げ出発する。最初は住宅街だった窓の外はみるみるうちに暗くなり、闇に包まれてしまった。



次の瞬間、彼はジャングルにいた。彼の右手には刃渡り2メートルはあろうかという金属製の槍が握られている。彼は、大声で叫びながら自分の腹を、その、槍で突き刺した。前に倒れ込んだ拍子に、もう反対側の槍が地面に刺さり込む。その反動で、彼の腹を貫通する槍はさらに深く刺さり込む。血液が滑り、しかし、気持ちがいい。気持ちの良さに溺れたまま霧に包まれ、彼は瞼を閉じた。

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