第4話
「瓜野さんちのお母さん、オーガニック教の過激派らしいよ」
僕がそんな噂を耳にしたのは、カップ麺事件から数日後のことだった。
もちろんそんなヘンテコな宗教なんて存在しないのだけど、そういうふうに揶揄されるということは、瓜野家は食に関して内にも外にも厳しいんだろうと想像できた。
実際、彼女と同じ中学の出身者に聞くと、給食があるのに彼女だけ弁当持参だったとか、お土産にお菓子をあげたら親から抗議の電話がきたとか、ネットで見かけるトンデモニュースみたいな出来事がざくざく発掘されて、気の毒になった。家族の誰かにアレルギーがあるというワケでもなさそうだから、よけいだ。
そんなふうだから、ウリさんは、僕には想像も及ばないような苦労をたくさんしてきたようだった。学校で改めて謝罪してきたとき、彼女はひどく落ちこんだ様子で、それでいて、
「でも店の中にいるときは、食べたいと思ったんじゃない?」
と確認すると、目を赤くしながら頷いた。
僕は彼女に同情した。
泣きたい気持ちがよく分かるのだ。僕も体験として知っているから。その家に生まれたばかりに避けられないものもある、ということ。
だから、僕は共犯者になることを決心し、彼女に話を持ちかけた。
「初詣行かない? それで、よかったら神社行く前にカップ麺食べない?」
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