第13話 結婚しても大丈夫ですか?
オリヴェイルは、ジュリアンと具体的な話を進める。
「で……君と結婚するって?」
「はい」
「……その方が魔術師協会的にはいいけど。大丈夫なの? 色々あるんでしょ?」
「彼女に見合うだけの身分のことを考えても、ソーンツェの花の事情を考えても、僕が適任です。彼女の事情もわかっているわけですし」
私の事情を広めないようにするには、ジュリアンが適任で……。私の心理的な問題としても、できればジュリアンにしてほしいと思っている。
(他の人じゃ、信用できるかどうか不安だもの。だけど……)
ジュリアンは結婚すると、何か問題が出る人なんだろうか?
見合う身分ということは、貴族で間違いない。けど、結婚に関して親族がうるさいのかも? 一体どの家の人なんだろう。
「たしかに身分的にはジュリアンが一番だろうね」
オリヴェイルもそこは納得していた。そこそこ身分が高いというなら伯爵家? 侯爵家?
「結婚の書類を作ったら、協会長に直接依頼しに行くことにしよう。こっそり受理させるように手回ししておくとして……」
そこで私は、気になっていたことを聞く。
「あの、結婚の際の名義はどうするんでしょう? セリナのままで申請するのでしょうか。それとも平民として結婚したことにするとか?」
答えたのはオリヴェイルだ。
「貴族の、セリナ嬢として結婚してもらいたいですね。嘘を申告したことで、王家がいじわるのために結婚を取り消しにしては困ります。
そもそも我々がこっそり申請するのは、この重大な任務について説明したところで、彼らには理解できないだろう、とわかっているからです。今の王家の人間は実際に問題が起こってから嘆くような、浅はかな人達ですからね」
かなり厳しいことを口にするオリヴェイルに、私はびっくりする。
「でも、王家が嫌っている私との結婚がバレた時に、ジュリアン様達にご迷惑をおかけするのではと心配なのですが……」
婚約破棄したとはいえ、王家は私のことを嫌っているままだ。
今はいじめの対象だった私――自分より下に見ていた相手が、婚約破棄でもう結婚もできない立場になったと喜んでいるはず。
なのに、突然別の貴族と結婚したと知ったら、どうなることか。
気分を害し、もう一度不幸にしてやろうと手を回してきそう。
魔術師協会そのものには何もできなかったとしても、ジュリアンの家族にいやがらせをしたり、冤罪を押し付けたりしないか心配だ。
誰か一人を理由もなく悪者にして楽しんでいた人間は、悪者がいなくなったら自分の悪さが発覚してしまうから、覆い隠すために次のイケニエを探す。
(ジュリアンが魔術師協会の仕事を続けるなら、協会の保護は得るけど逃げられないわ)
ジュリアンが私と結婚するのは、ソーンツェの花を増やすためだから、ここにいなくちゃいけないのだ。
私を保護するために動くのも魔術師協会。
だから魔術師協会とは切っても切れない関係だ。
なのに、ジュリアンは首を横に振る。
「問題ありませんよ。だからこそ私が結婚相手になるのです」
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