第77話 尻軽は口軽

 同僚だった嬢の話だ。

 メンヘラっぷりを発揮していたので距離を置いていたが、なぜか?好かれる(笑)。

 待機中、私の隣に張りつき、訊いてもいない日常をぺらぺら喋る。

「こないだホテルいったんですけど全然よくなかったです」

 リップグロスを塗りながら嘆く。

 場内指名(フリー客から取る指名)すらされていないのに、LINEの往復に終始していた不毛な客と、店休日にデートして寝た話だ。

 尻、軽っ!!!

 てか、キャバ嬢のプライドないわけ!?

「私は声が大きくて」

とか、聞きたくないっつーの!

 ごめんな。

 私、君、好みじゃないのよ。

 好みじゃない子のセックスシーンを想像させるような話、ただ、ただ、気持ち悪いから、しないでくれる?


 日曜日のとある居酒屋。

 私のグループとメンヘラちゃんのグループが出くわし、合流したことがあった。

 互いに知りあいがいたからだ。

 私のグループにはイケメン君がいた。

 メンヘラちゃんが隣にすうーと寄っていく。

 二人に面識はない。

 同席して雑談していた私は耳を疑った。

「○ェイスブックやってるんですね!名前教えてもらってもいいですか?」

 そんな時代の話だ。

 会って数十分。

 ガツガツしすぎだ(笑)。

 それに、その訊きかたは狡い。

「煙草吸ってもいいですか?」

と同じだ。

「駄目ですか?」

と訊かれれば

「駄目です」

と返しやすい。

 イケメン君は渋々、対応していた。


「図々しい子でごめんね。断ってよかったのに」

 メンヘラちゃんがレストルームに立ったので詫びた。

「○○(私の名前)さんの知りあいだから邪険にできませんでした」

 イケメン君は冷笑した。

「ただの同僚だよ。邪険にしてくれてよかったのに(笑)」


 開店前、その夜もメンヘラちゃんに張りつかれた。

「全然知らない相手より(嫁も)安心だと思って」

 知りあいの旦那と寝た話だ。

 三人とも、とある職場の元同僚だ。

 って、いやいやいやいや、罪悪感ないんかーい!

 夫が自分と共通の知りあいと寝たんだぜ?

 知ったら発狂すんだろ!

 てか、浮気を食いとめる発想ないんか!?

 暴論で性欲の強さをねじ曲げるが、まるで自覚がない。

 その後は……と?

 案の定、嫁にバレましたとも。

 何せ、ぺらぺら喋るからね(笑)。

 夫とメンヘラちゃんは慰謝料請求され、夫婦は離婚しましたとも。


 尻軽は口軽だ。

「(指名奪取のために)ヤっといたから!」

「(好みのフリー客と寝たら)音信不通になった。もう二度とヤらない!」

 客と寝たのをぺらぺら喋るオバサン嬢がいる。

 家庭やパートナーや社会的立場のある男性諸君は肝に銘じるがいい。

 不特定多数性交の尻軽は同時に性病の懸念もあるので、ご留意を。

 難攻不落でも、性病持ちでなく、秘密は墓場まで持っていく相手を選ぶべし。

 金を撒くのもよし。

 精神性に訴えるのもよし。

 とにもかくにも

『大切にされた』

『楽しい時間をありがとう』

と相手に思わせるべし。





 

 








 



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