第50話 モヤモヤ申告

【ホステス控除(通称)】

 報酬-(5.000円×月日数)×10.21%=所得税

 ※5.000円/日が美容理容代、衣装代、交際費等の“見なし経費”として計上されている。

 ※出勤日数ではなく、期間が適用される。

 ※月イチの支払いの場合、月日数が30日以上で報酬が15万円以下なら非課税。

 ※0.21%は復興特別所得税。

 ※店は毎月ホステスの所得税を翌月の10日までに税務署に納付する義務がある。



 個人事業主?のホステスの皆さん。

 確定申告、お疲れ様です。


 報酬明細ではなく給与明細を貰っていたり、タイムカードで勤怠管理されていたり、

時給や最低保証があるならホステスは従業員のはずだが、年末調整はなく、なぜか?確定申告しなくてはならない。

 20万円以上の雑所得や医療費控除等がなくても、だ。

 諸経費を除いた48万円以上の収入を“報酬”と見なして確定申告するなら、ホステスは個人事業主のはずだが、税務署に開業届を出した覚えはない。

 あくまでも“扱い”なのだ。

 ホステスの働き方のグレーゾーンは、いまだ、手つかずだ。

 ナンバー(売上上位者)が血を吐くほど働いても年収が一千万円に満たない熟キャバでは、経費の負担からも税理士に依頼する嬢はいない。

 店の言い分としては、マイナンバー制度が施行された当初から

「できればしておいたほうがいいですよー」

と言う曖昧なもの。

 それまでは、店によってだが、支払調書(個人事業主の源泉徴収票。支払い方は年間48万円以上の手取りを支払ったホステスについては毎年一月に税務署へ提出するが、手取りが50万円以下のホステスへの発行義務はない)などどこ吹く風で、源泉徴収が不要な日雇い(9.300円以下)扱いで嬢をいっしょくたにしていた(※嬢からは10~15%という謎の項目で徴収していた!)。

 つまり、稼ぐ嬢は架空の二人程度の日雇いに分割されて“透明人間”になる。

“稼ぎすぎない”熟キャバ嬢に特化したやり口だ。

 稼ぎのいい若いキャバ嬢が三人や四人に分割されるのでは、さすがに怪しい。

 嬢は嬢で、これも人によってだが、無収入の体で同居家族の扶養に入っていたり、別居で誰かの家に居候していても住民票は実家に残したまま扶養に入っていたり、扶養を外れていても報酬を過少申告できる“からくり?”や“抜け道?”があった。

 マイナンバー制度が施行されるまでは、店と嬢(によってだが)の利害関係が成立していた。

 だが、今日ではそれも通用しなくなった。


 明細(※給与か報酬かを曖昧にするために明記しない店もある)の謎の項目は“所得税(徴収)らしきもの”だ。

 たいがい、10~15%。

 報酬が低い熟キャバ嬢相手に多めに徴収され、かつ、店からの謎の天引き(協力費など)前の総支給額にかけ合わされる。

 ちなみに、交通費の支給がなく、厚生費(雑費のこと。トイレやロッカールーム等のレンタル使用料。500~1.000円/日)の徴収はあるので、ホステスはやはり個人事業主らしい。

 厚生費は本来(労使協定書に記載がなければ)雇用側から従業員への報酬・経費(※非課税)であり、徴収の対象ではないからだ。

 二月に貰う支払調書(※健全な店なら請求せずとも発行してくれる)は源泉徴収税額が少なく、明細のそれと一致したためしがなかった。

 残りの超過分は“店にプールされている”ことになる。

 一年分の“売上ノート”と何度も照らしあわせたが、こちらに落ち度はない。

 ホステスの所得税法に詳しいと謳う税理士のサイトをあちこち覗くも、釈然としなかった。

 ビビりながらもeーTaxで“正規の報酬”を打ちこんでいた。

“所得税(徴収)らしき項目”の超過分を支払調書の支払金額から差しひく。

 正しいのか?

 だが“支払調書の源泉徴収税額にない店がプールしている超過分”を、還付申告できるはずもない。

 復興特別所得税の0.21%の明記がなければ“10%”の項目は所得税(徴収)ではない!と言いのがれできるのか?

 さすれば、支払調書では明記されている源泉徴収税額が、明細ではどこにも見あたらないことになる。

“10%”は“業界の悪習”で済んでしまう類いのものなのか?

 私には一刀両断できる専門的な深い考察と胆力がなかった。

 謎が多すぎて、どこまでが“合法”で、どこからが“違法”なのか、わからなかった。

 この先、万が一、申告に齟齬が生じた際の証拠となるべく明細や支払調書や領収書の類いは保管している(※七年は必須らしい)。


 ちなみに、本業で社会保険に加入している嬢は、社会保険料が副収入に左右されない性質はさておき、住民税の特別徴収を外して普通徴収(自分で払う)にすれば、経理から住民税の割りましを疑われる懸念はない。

 だが、そもそも、普通徴収にしたことで副業を疑われる懸念はある(笑)。

「社長も知ってるから」

 アットホームな会社に勤める嬢は気楽そうだった。


 10月からインボイス制度が始まる。

 年収が一千万円以下でも、消費税にかんしては情報更新が必要だ。

 うかうかしてはいられない。





 


 



 




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