第36話 思うところあって……

 つい数年前の話だ。

 四十代で水商売デビューした新人嬢が言った。

「大丈夫です!セクハラには日ごろから慣れているので!」

 昼職でどんなブラック企業に勤めているか知らないが、風俗と性風俗の区別もつかず、ちょろっと腰かけて触らせていれば金になると思っていた。


 とりわけ、見ばえのしない嬢が言った。

「私は綺麗じゃないから触られても拒否しちゃいけない気がして……」

 ならば、ほとんどの熟キャバ嬢が拒否できないことになる(笑)。

 彼女の行為は営業妨害だ。

 個人的な卑屈が、店全体の格下げにつながるとは考えないのか?


 客も従業員も知らずにいるが、客に身体的サービスを求められたホステスには、やめてください!と断っていい権利があるのだ。

 パトロン持ちやパパ活や愛人や〇リマンを除けば、身体的サービスはホステスの仕事ではない。

 従業員は甘い認識をあらためたらいい。

「所詮、水商売」

と言う揶揄を生みだしている張本人なのだから。

 本来、飲み屋は酒と会話を楽しむ場所。

 大人の粋な社交場だ。

 それが不可能な昨今でも、客を上手に導くのが従業員の仕事だ。

 へいこらすれば、客が増長する。

 増長した客は店の質を下げる。

 頭を使え!

 技術を磨け!

 水商売にプライドを持て!

 飲み屋に未来あれ!

 


 



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