第11話 検証終了
「とりあえずはこんなところか……」
数日後、一通りの検証を終えたルカは息をついた。
あらためて、メモに記した条件を確認していく。
「まず現状、スキル載せ防具は複数作れない」
基本一つのスキルを使って作れるパーツは一つ。作り放題とはいかないようだ。
そしてスキルの【全体化】について。
「後付けの別素材は全体化の恩恵を受けられない。対して同素材なら、後付けでも装備した時点で全体化がかかる」
現状【耐衝撃】は、鉄鎧の胸部についている。
よって後造りの装備品で【耐衝撃】の【全体化】を受けるには、同じ『鉄製』の装備品であることが必要になる。
後作の青銅製ガントレットでは、【全体化】の恩恵は受けられない。
「ただ意外な発見として、最初から『全体鎧の一部として青銅のパーツを作った場合』は【全体化】がかかる……と」
これは少し予想外だった。
青銅のガントレットを含むセットの鎧を作った場合は、ガントレットにも鉄パーツに担当させたスキル効果が発動していた。
要するに。
一つの鎧として作れば、鉄の各パーツに載せたスキルが【全体化】されるため以下のようになる。
全身(鉄) :耐衝撃2、耐魔法1、パワーレイズ2、滑走跳躍1
左腕(青銅):耐衝撃1、耐魔法2、パワーレイズ1、魔力開放1(滑走跳躍も全体化されているが、腕に載っても意味がないので割愛)
ただし、青銅の装備は鉄より【耐衝撃】や【パワーレイズ】のレベルが低いのは変わらないし、そもそもその素材に載らないスキルは【全体化】がかからない。
よって右腕の鉄ガントレットで【魔力開放】が使えるようになったりはしない。
そして。青銅のガントレットが後付けの場合は、素材が違うためそもそも【全体化】が起こらない。
左腕(青銅):魔力開放1
鉄部分のスキル構成は変わらないが、左腕はこれだけになってしまう。
「よって万全を期すのであれば、最初から【魔力開放】を載せた左ガントレットを織り込んだ全身鎧を作って【全体化】させる。その上で本体と同素材の鉄製ガントレットも準備しておくって形だな。あとは必要に応じてインベントリで交換すればいい」
再確認を終えて一息つくルカ。
「さて、それじゃ今日の分を始めるか」
もちろん今夜も、水見を開始する。
【――――魔装鍛冶LEVELⅦ.感知】
今回もまた、レベルが上がっていた。
「今度は戦闘系じゃない……いや待てよ、これって」
【審眼】のスキルを発動し、あらためて鉄と青銅のガントレットを手にしてみる。
「そうだよな。このスキルは鉄にも青銅にも載らないよな」
新たなスキル【感知】は、二つの金属の『搭載欄』にはなかった。
「ということは、他の金属か」
考える。近いうちに触れることができそうな素材は二種類。
「こうなってくると確認したくなってくるなぁ……よし、明日はちょっと色々試してみるか。うまくやらないと面倒な感じになりそうだけど……」
「……な、なんでニヤニヤしながら困ってるの?」
「うん? ああトリーシャか、なんでもないよ」
口ぶりは困っているのに表情はまるで困っていないルカに声をかけてきたのは、困惑顔をしたトリーシャだった。
「ほら、今夜も夕食まだでしょう?」
「……あ」
「ダメですよぉ、ルカ君。ちゃんと食べないと大きくなれませんよー」
まるで面倒見の良い姉みたいな態度でそう言うと、一転。
「一緒に食べよ」
パッと、明るい笑みを浮かべる。
「そうだな、それならいつものやつで頼む。ここを片付けたら行くから」
「りょーかいっ」
笑顔のまま「早く来てね」と残し、跳ねるような足取りでギルド酒場へと向かうトリーシャ。
ルカはガントレットを手にしたまま、その足取りを見つめる。そして。
「……いつもありがとうな、トリーシャ」
その背中に、そっとつぶやいた。
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