第2話
警察はある程度本気で動いていたと思う。
人形の顔がはがされただけで人的被害はなく、何も盗まれてはいないのだが、警察が気にしていたのは犯人のその神出鬼没さだ。
三件とも普通の一軒家で起こった。
そこに誰にも気づかれることなく侵入し、数体の人形の顔を丁寧にはぎとり、誰にも気づかれずに短時間で出て行っている。
あまりにも普通ではない。
一体どんなやつで、どんな方法を用いたのか。
地元のマスコミも騒ぎ出し、その点においても事件を無視するわけにもいかなくなっていた。
そんな中、四件目の事件が起こった。
今度はたまちゃんの人形だった。
家族全員が家にいる中、たまちゃんの数体の人形の顔がはぎとられた。
マスコミは過熱し、ローカルニュースから全国ニュースに格上げとなった。
警察もこれでもかと捜査したようだったが、何の成果も得られなかった。
全て半径一キロ以内で起こったこの事件。
近隣の住民は気が気でなかった。
今度はどこの家がやられるのか。
次は人形の顔をはぎとられるだけですむのか。
正体不明の犯人の行動があまりにも尋常ではないために、余計に不安がつのった。
そんな中、刑事らしき男が例の気味の悪い男を訪ねているのを、男と卓也の家に挟まれて住んでいる隣の主婦が目撃した。
近所で噂好きで有名な太った中年女性だ。
「やっぱりあの男、怪しいんだわ」
もともと「あの男が怪しい」とその容姿がゆえに一部で噂になっているため、警察がとりあえず聞いてみただけの可能性もあるが、警察が訪ねたイコールあの男が犯人で、もうすぐ逮捕されるという噂になって、盛大に広まった。
しかしあの男が怪しい派の人間が待てど暮らせどあの男はいつものように家にいて、一向に逮捕される様子がない。
刑事らしき男が訪ねてきたのも一度きりだけだ。
「あいつが絶対に犯人なのに」
何の証拠も確証もないのに、隣の主婦はそう言っていた。
そんな中、卓也は部屋にある数体の人形をどうしようかと悩んでいた。
お気に入りの戦隊ヒーローの人形五体。
もしこの顔がはがされでもしたら、とてつもないショックだろう。
卓也の心配をよそに、父も母も全く別のことを考えていた。
この人形がある限り、犯人がこの人形の顔をはぎに来るかもしれない。
そんな異常なやつを、この人形があるがために家の中に招き入れてしまうことになってしまうかもしれないという不安だ。
そんなやつが家に侵入してくるだけでも嫌なのに、もしもそいつと鉢合わせにでもなったとしたら、一体どうなるのか。
人形の顔をはぐ刃物も持っていることだろうし。
とにかくいろいろと心配だ。
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