第5話

『そっか,

ここにいる時

いつも一緒か.

そうだな…

考えてみたら.

何で,

こんな…

おかしな事気が付かなかったんだろ.

気が付きたくなかったのか…

どうなんだろ…

あぁ…

はー.

どーこーしよーもない事を

がたがたと…

もう、

俺らじゃ

どーしよーもねーんすわ。


馬鹿だ。』


『誰が?』


『登場人物みんな。』


『かもね…』


『何で、

あなたの主はいなくなった?

寿命?

それとも?』


『刺されたんだよ.

痴情のもつれ.


きちんとゴム着けてて偉いねー.』


『刺されてたんだ…

お前の元主も大概だな.

ごめん,知らずに.

もう失礼ついでに聞くけど…

どんな感じ?最期.

その話,他人事じゃねーわ.』


『感覚無いから

ダイレクトに痛みはなかったけど…』


『けど…?

心穏やかに聞けねーかも.』


『感情は流れてくるから

痛いんだなって思った.』


『そっか…

痛いのやなんよなー.

マジ勘弁.

んで何で

俺に執着してるの?

記憶にないんだけど.』



『前の主ここに来た事あるんだ.』



『あー

だから俺の事知ったんだね.

たら,

分かんねーじゃん.

あなた

中てられただけよ.

気持ち分かんなくなって

ごっちゃになってるだけだ.


残念だけど

そーゆー事.』


『残念って…』


『あー俺じゃない,

確実に.

お前が残念って事.

俺は…

お前に執着なんて

全く全然してないから.


そろそろ果てそうだから

この話おーしまい.


もう来るな.

オリジナルの配役に任せろ.』


『そうやって

暗闇に閉じ込めるのかよ!

全部無かった事として

振る舞って…

僕の気持ちは!

想いはどうなるんだよ!

ほんと勝手な奴だ.』


『違う!!

お前がちょろちょろしてたら

次の主が決まらんだろうが.

耐えろ.

皆…

みんな

鏡の中の奴ら

そーやって

時間を流してるんだから.

俺だって…

お前だって…

一緒だよ.

ただ,

その時間に重なりがないだけであって…

個々人で暗闇を消化していく時間.

自分で決められる事は無いけれど,

時が来たら

自然と選ばれて主と付き合っていく.


真っ暗闇で

ある一定の時間が過ぎたら…

その時に救いが来る.

無駄に時間を使うな.

支えになんてならない.

長引くだけ辛くなるだけだ.


次の主は

あなたと一緒に

笑えるような奴だったらいいな.

それだけ

願ってる.

もう会わない.』


『…

無駄な時間だなんて…

思った事はない…

最後までズルいんだ.

僕の気持ちは置いて…

いつだって話す.


あなたが…

僕にとって,

どれほどの光であったか.

知らない振りして.


重ならない時間なんて…

これからいくらあったって

意味が無いんだ!』


『意味が無い事なんて無い!!

俺は!!


何もしてあげられないんだ…

だけど,これから積み重ねていく時間で

いつか出会えるかもしれないじゃないか.

もう…

そこに託す.』


『…


ほんと馬鹿だな.

巡り巡って出会えたら,

僕は

やっぱりあなただったんだって

言うよ.


もう来ない.』


タクシーの窓は

もうオリジナルの配役だったようだ.

鏡の世界は今日も不自由で

寂しく賑やかに形どり

うつろう.

不器用が織りなす万華鏡.

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鏡よ鏡よ,おい鏡っ. 食連星 @kakumi

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