キジバトの巣

もりまりも

第1話

ある日、我が家の庭にあるツルバラの木にキジバトのつがいがやって来た。


どうやら巣を作り始めたらしい。面倒な事は苦手だ。奴らを追い払おうと努力をした。

だがどかない。それどころか生意気にもこちらを威嚇してくる。

万事休すだ。あっという間に巣はでき上がり、キジバトはそのままどかっと巣に座り込み、卵を2つ産んだ。


ところが、抱卵中に台風が直撃した。巣を作ったツルバラは枝がひょろひょろとした不安定極まりない木だ。台風が来たらひとたまりもない。


翌朝、案の定、ツルバラの木は倒壊。あ~あ。無惨にも巣はバラバラになり、卵も下に落ちていた。一個は割れていたが、もう一個は無事のように見える。親鳥の姿は見えない。台風にでも飛ばされたかな。


さて、この惨状をどう対処したらいいのか。気が進まないが動物病院に電話で問い合わせてみた。


「カップ麺、どん兵衛みたいな形の空のカップに巣と卵を入れて元の場所に戻してみてください。親鳥が戻るかどうかは分かりませんけれども。」


どん兵衛ときたか。ちょうど家に赤いきつねがあったのでそれを食べて、その空のカップをきれいに洗って、中にかき集めた巣と、無事だった卵を突っ込んだ。そして倒壊したツルバラの隣にあるハナミズキの木にヒモでくくりつけてやった。何の因果で私がここまでしなきゃならんのだ。


すると、どこかでこっそり様子を伺っていたのか、親鳥がすぐに戻って来た。

まるで何事も無かったかのようにどかっと巣に尻を下ろす。驚いたことに、赤いきつねのカップはキジバトの体のサイズにぴったりとはまるのだ。さすがは動物病院。これには感心してしまった。


そしてこの赤いきつねの巣の中で無事、ヒナがかえった。

ヒナはすくすくと育って、時々私を威嚇しつつ、最後は元気に巣立って行った。

本当にまるで何事も無かったかのように。


さて今年、またまたキジバトのつがいに木を乗っ取られた。

どうして再度、台風シーズンにやって来るのだろう。つくづく頭が悪いよなと呆れる。


いや待て、今回はツルバラではなく、ハナミズキの木に巣を作ったのだから、わずかな脳みそでも少しは学習しているのかもしれない。


仕方がないな。台風が来ないことを祈りつつ緊急事態に備えて、例のごとく赤いきつねをスタンバイさせている。


全く、家賃を取りたいくらいだ。

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