冬の贈り物
ハリー
冬の贈り物
「おい淳、おまえ年末どうすんの?」
「年末ですか。特に予定はないですけど、、、」
「田舎に帰らなくていいのか」
「まあ、帰省と言っても隣県ですからね。特別、帰ろうとも思ってませんけど、、、
何かいいバイトでもあるんですか?」
「そうじゃなくてさ。山行かないか。初日の出山行だ」
「へー、良いですね。面白そう。行きますよ」
「全く、まだ行先も行ってないのに、、 でも淳ならそう言うと思ったよ」
自分と先輩は大学の登山クラブの先輩・後輩の仲だ。先輩には入部以来、登山のノウハウや、クラブと関係無いバイトの紹介なんかもしてもらってる。簡単に言えば、普段、お世話になっている人だ。
「でも、先輩こそ帰省しなくていいんですか?先輩、確か宮城でしたっけ」
「俺か。うーん、まあ良いんだよ」
この学校は都内だし、普段の会話で先輩はそう帰省してないことも知ってたが、、
理由を詮索するのも気が引けるし、そのままにしよう。
「で、どこに行きます?」
「雲取山を考えてるんだけど、、雲取と言ってもこの時期は雪山だけどな」
「雪山で初日の出ですか。良いですね。装備はどうしましょう?」
とんとん拍子に話を進め、自分と先輩2人の年末年始、つまり大晦日と元旦ですね、
2日間の雲取山山行は決定した。
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雲取山も頂上付近まで来ると登山靴が埋まる程の降雪だった。天気は予報通り晴天だったのが救いだ。初日は頂上直下でテント泊、明日、初日の出を見たら撤収だ。
「雪山の大晦日なんて初めてですよ」
「なかなかおつなもんだろ」
ラジオを聴きながら、他愛もない話をしつつ、簡単な食事で夜は過ぎていった。
「さて、締めはこれだ」
「お、『緑のたぬき』ですか」
「こんな年越しそばで申し訳ないけどな」
「とんでもない、御馳走ですよ」
テントのそばの雪を溶かしてお湯を作る。『緑のたぬき』にお湯を注いで、っと。
「「頂きます!」」
「うまい!」
「うーん、うまいなあ」
冷えた体に熱々の汁が沁みる。今日は、これで暖まった内に寝てしまおう。
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「「明けましておめでとうございます」」
「今年もよろしくお願いします」
「よろしく」
寝起きと共に新年の挨拶を済ませれば、朝食の準備だ。
餅を焼いてっと。
「おお、餅か。良いね」
「それと、これです」
「何、『赤いきつね』か。ほう」
「これに焼餅を入れて、力うどん、いや『きつね雑煮』の完成です」
「良いねー。今日一日、元気が出そうだよ」
「でしょ」
なんて言う内に、きつね雑煮の完成だ。
「「うまい!」」
「お揚げもうまいですね」
「変わらぬうまさだな」
きつねとたぬきから元気を貰った我々は、無事、雲の隙間から初日の出を
拝んだ後、下山した。
冬の贈り物 ハリー @hurryup1
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