第200話―悪夢のコスプレ会のはじまり―

またしても複数の女性が泊まることになった。

この決定には不承不承はあれど、せめて俺の意思も少しばかりは尊重してほしいと切実に思う。

部屋を貸すことや帰宅することが困難とするならパーソナルスペースといった距離を置いて提供だってしたよ。

いや、そもそも強く抗議や拒絶しなかった俺も悪いのだけど冬雅せめて一言だけ言って欲しかったよ。事前に泊める予定であるならコチラだって対策や準備はしていた。


「すぅー。すぅ」


寝息を立てる冬雅は落ち着くべき場所に落ち着くかのように眠っている。

ここは二階の自室。部屋の隅に配置したダブルベッドを真奈と香音の二人に使用してもらい冬雅は俺の隣で就寝するのだと主張した。

これには猛反発はした。

だが冬雅は『三人でベットを使うのは窮屈感になりますよ。ここは分けるべきなのです。

お兄ちゃんとスゴく!良好すぎる恋人の関係であるからこそです!!』これが最善な組み合わせだと冬雅は、ほとんぼ話を聞き入れてくれず準備に取り掛かった。されど香音はそれに静止しようとした『ならせめて同じ空間で寝ていてほしい。離れた部屋で二人きりさせると危険だから』と淡々としながらも慌てるようなな早口で反論した。

慌てるのは、きっと目を光らせ監視しておかないと過ちをおかすと危機感からだろう。

真奈は酩酊しており参加や反論には加わず『お兄さん頭ナデナデしてほしいなぁ』と甘えてくる。何もしないと号泣する気配があったので俺はこの場で被害が少なく解決するのはと考えて導き出したのは幼児化した真奈の頭を撫でること。『しわあせ』と顔の筋肉という筋肉が溶けるような笑顔をこぼす真奈。

それに苦笑いを零しながら俺は『寝所の割るなら俺だけリビングのソファで寝るから。それでいいかな』このあとどうなるか予想できながらも提案する。『そんなの駄目です。風邪ひきますよ!

恋人になってから一年近くいるのです。ここはわたしと一緒に寝るのが正しいはずですよ!お兄ちゃん』と真っ向から反論してきた。

よく思わないことは想定したが身体の心配や配慮よりも願望を優先した内容だった。

さすがのクレイジーガールの香音も『うわぁー』と過度な事に引くような唸りめいた声をする。

冬雅も願望ばかり口走ったことに言い切ってから恥じらいを覚えたとみて顔を赤くする。なら言わなきゃいいのにと俺も香音は呆れて思いながら指摘しない代わりに嘆息する。

そこまで想起していて目を瞑るが睡魔の誘いが降ってこない。やはり寄り添って眠っている冬雅が近くにいるからなのかと目を開ける。

あとげないほど滑らかに安眠に就いている彼女。


「えへへ、お兄ちゃんガッツキ過ぎですよ」


(どんな夢を見ているのだろう……いや、よそう。本人に訊いても年齢制限がつきそうだから)


マシュマロのように柔らかい頬を押してみたい欲望を払いながら俺はまた微睡まどろみよ降りて来いとリトライするのであった。

そして沈んだ日が昇りだして明日が今日の日となる。眠り落ちる前はあれだけ意識していたのに、いつの間にか眠っていたと覚醒して思った。

上半身をあげて周りを見渡すと部屋には誰もいない。どうやら冬雅たちは先に起きたようだ。


「まさか三十代よりも早く起きるなんて」


軽くショックだった。

中年にもなれば若い人よりも確保する睡眠の時間は減っていく。安眠する時間は個人差はあれど求める量は減って十分に確保できる。

とはいえ若人よりも披露した回復や免疫力は下がって今後はヘルシーな生活を心掛けないとならないだろう。

ベットから出て先にするのは指と指を合わせ両手をあげる。伸びをしてから実感するのは縮こまった筋肉を伸ばして解すのが。

部屋を出ていき洗面所でバシャバシャと顔を洗いタオルで優しく押すようにして拭く。ゴシゴシと拭くのは肌にダメージが受けるようなので優しく拭くようにと冬雅が以前そう勧めていたのを思い出す。そういえば冬雅は居室で勉強しているのだろうか。

静かであるが居間から小さな音が聞こえる。

洗濯カゴにタオルを放り入れてからリビングにくぐろうとドアを開けると三人の天使がいました。


「…………どうゆうこと?ここはエデンのその


目の前の状況についてこれず混乱していると俺の前にステップ踏むようにして近づく一人の天使。


「えぇーい」


エンジェルの格好をした冬雅が抱きついてきた。

両手を広げてそのままギューと脳内で流れてもおかしくない抱擁。腕を回した冬雅の奇行に戸惑っていると看護師のコスプレをした香音が地団駄じだんだを踏んで近づく。


「ちょ、ちょっと!朝から淫らなことしないでよ」


その叱声しっせいで迫ってきた香音に抱擁した両手を解放して身を反転する冬雅。


「ご、ごめん」


怒られて謝る冬雅であるが反省していないと思う。厳しいと判断したら手を変えてアプローチしてくるのは長い付き合いから察した。


(付き合ってから結構な年月になるからアプローチも下火したびしたとは思っていたが……考えが甘かった。玉砕も覚悟あってもいとわない。

あの冬雅がおとなしくなると考えたこと自体間違いだったと改めて再確認した……)


我ながら失礼な評価をつけていると客観的にそう感じてはいたが恋愛対象として狙われていることを。いついかなる時も対処を出来るように講じておかないとならないだろう。

その猛攻は危険だ。

例えるならゲーム。

推しのキャラクターを徹底的に集中的でいこうとアプローチをしてもどこか俯瞰的にしようと攻略、ただ画面越しから見ているプレイヤーが画面に入りそのまま妄信的なほど推しのキャラクターを口説いて攻め立てる。

そこまでやるのが冬雅である。

甘い言葉で相手を落としたりデートで整えるといった取り繕うとするが関係が深くなれば力を注いでいたアプローチも次第に減って行き落ち着いていゆく。

そうなるだろうと見ていたが逆だった。

冬雅のアプローチは下火すること知らない。


「お、お兄さんワタシの格好どうですか?」


真奈は色鮮やかな装飾で飾られた白の基調されるドレス。ファンタジーな白のドレスをひるがえすように一回転してから尋ねてきた。


「あ、ああ。

言葉を失うぐらい似合っているよ真奈。異世界に転生でもしたかのように王族のお姫様みたいで美しいよ」


「そこまで過分なお褒めに光栄ですわ。

フフ、ありがとう。それじゃあワタシと異世界で旅しませんか英雄様?」


手を差し伸ばす真奈。うーんこれ貴族然とした王子がやることのような気もしないが無班にというのも良くないだろう。さし伸ばした手を握る。

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