第193話―夢をいつまでも追いかける―
ついに物語は完結を迎える。
理不尽に切られることのない正社員で解雇されたビジネスマン。親しい頼れる人がいない孤独、乾き渇望する愛情を抱えた女子高生。
物質性な距離がとても近い、されど関心をさえ向けないほどに限りなく遠くある。
常時なら巡り会うことのない二つの星は閑静な街中の夜道で偶然にも知り合うことになった。
不器用な二人による年の差ラブコメ。
とうとう終わろうとしている。
「……よし最終話を投稿したし完結の説明文も今ようやく書き終えた。
まだ
止まることのない打鍵音を止めて俺は出来上がった小説の達成感に浸かっていた。
しみじみとなりパソコン画面を見詰めていたら台の手前にコーヒーが置かれて現実にと帰る。
「お兄ちゃん完結おめでとう。えへへ、では一息つきながら話でもしませんかダーリン。すごく大好きだっちゃ」
コーヒーを置き労らいの言葉を送ったのは我が未来の妻となる峰島冬雅だ。
屈託のない笑顔と全開の愛情で満ち満ちていた。
それらを一身に向けられてしまえば心の内で、つい一人称が我と俯瞰的な使い方にさせてしまう心を奪われてしまう魔力がある。
やや禍々しい表現したが要は照れていることを少しでも意識から避けたいからなんだけどね。
「ありがとう冬雅。
勉強を……いや、レポートは捗っているかい?」
俺の部屋がある二階で休日を過ごしていた。
俺は、いつかプロを目指そうと実力のため投稿サイトで執筆活動を。
冬雅は少し離れて筆を動かしていた。
「提出するレポートというよりも、知識を蓄えていました。退屈かもしれませんけど大学での生活でも。うーん、でも愚痴みたいになりますけど」
振り返りながら視線を下げると部屋の中央に小さなテーブルの上には紙などが広げて置かれてある。
ここ最近でもないが教科書などの紙からデジタルにと移り変わっていると聞くが彼女が在籍する大学では紙がまだまだ主流のようだ。
その背景にはデジタル化する時間やカリキュラムなどの手間が掛かってよるものなのか、学んで教育するのは科学的な根拠を基づいて紙類のほうが頭に入れやすいメリットからの決断か。
「それじゃあ
自分のマグカップを両手で抱えながら冬雅は了承をえられる時間を待たずに腰掛けた。
柔らかい感触と温もりが伝わって否が応でも伝わる。それに柑橘類の香りもする。
茫然自失となりながら俺は理解するまで時間を要した。
自らの後ろ髪を少しだけ持ち上げて有言実行に動いた雪の精霊ような女性の冬雅にドギマギしていた。
「こんなこと聞くのは無粋なのか空気を読めていないかと葛藤するが思い切って尋ねるよ。
冬雅なぜそこに座るのかい?」
「……だ、駄目でしたか」
表情は窺えないが後ろから身を縮小となるように
「い、いや。そんなことないよ」
「それじゃあ座ってもいいのですねぇ?」
「肯定じゃないか。大胆なことは出来ないカップルだが座る程度わざわざ確認しなくてもいいよ」
「えへへ、先に謝らせてもらいますねぇ。
ごめんなさい。録音しておりました」
「ロクオン?」
録音という単語がしっかりと聞こえたけど意識は理解することを拒み、俺はカタカナで拙く単語だけを呟くようにして返していた。
「これで
えへへ、これから
今後からは予告なしで座ってイチャイチャして照れる顔を見るのが楽しみで舞い上がる気持ちです」
またロクでもない計画を企てているよ冬雅。
こうも何度もやられて羞恥ばかりだと癪というか情けないというか悲しくなってくる。
本人は頭が熱暴走しており気づいていないが悶えている。その
「…………そ、そろそろ降りてください」
「むうぅ。いいでしょう。譲渡したくはありませんが譲り合いが好きな人と長い付き合えるといいますし。
一時間だけにしておきましょう」
ニコッと冬雅は頬が仄かに朱色に染まった顔で振り返って優しく応えるのだった。
意見を汲み取り折ってくれた条件の口頭に。
「いやいや長い、あまりにも長いから。
待ってくれ冬雅それは譲渡とはいわない気がするのだが?」
「えぇーッ!?ここまで時間を短縮したつもりでしたつもりだったのに……えへへ、もちろんユーモアなトークです」
「ユーモアなトークって、というのもツッコミはこの辺にして冬雅は楽しいのかい?俺なんかと言って」
「むうぅ。前にも言いましたよねぇ!楽しいか疑うようなネガティブな言葉は改善するようにって」
「つい言葉に出てしまったか。すまない冬雅
ネガティブな言葉を気をつけないとならないと」
俺の方が年上で大人だ。その気を引き締めて彼女を気持ちを優先にしないといけないからと考えていた。
それに冬雅は学生なので俺が振り回されながらも支えないとならない。とはいえ執筆活動を捗れるように試行錯誤してくれた冬雅、
それだけなら良かったけどデートする時間を削って選択肢してサポートしてくれている。
「気をつけて絶対に反省です。
はぁー……あっ!いいこと思いつきました!
えへへ、お兄ちゃんには少しばかり罰を受けてもらいます」
「その天使のような笑顔が怖い……」
「お兄ちゃん戦慄しているところでさり気なく天使のような笑顔と褒められると照れます。
や、やめてください!
罰はわたしと手を握ることです」
「……手をにぎは?だけでいいのかい」
つい俺は首を傾げて聞き間違いかと訊いた。
「そうですよ。えいッ!」
うわあっ!?両手をさぐりさぐりと冬雅は俺の手をの甲を握ろうとする。膝の上からでは見えにくいのだろう、冬雅は手に柔らかく当たる。すると特定した手の甲を包むように上に重ねてきた。
「どわあっ!?」
「さあ捕まえたよ。えへへ暖かい……だっちや」
そういえば冬雅は語尾だっちゃ……言っている。
前期のアニメであった『うる星やつら』のメインヒロインの語尾。たしか俺が産まれる前に連載していた作品で令和では完全新作として制作となる。
「冬雅とても愛らしいけど。何故だっちゃ」
「旧作品からの名作から拝借しただけでして、お兄ちゃん反応の次第ではアタックしようと実験的にしているだけでして気にしないでください」
「あー、うん練っているのか。そうか……」
そのバイタリティと特定だけのアプローチに注力を注ぐことの余念のなさに感心は起きず、その真逆となる脱力を覚える。
「そこで真奈みたいに豆知識でも教えましょう。
国々の言葉には強みのわたし。〖だっちゃ〗という言葉は東北の方言でありまして主に宮城県となります。意味は〖です〗なのですよ」
「へぇー、アニメから来たと思っていたけど前からあった言葉なのか。
東北地方というなら宮城県とそれ以外の隣の県では普通なのか少し気になるなぁ」
こうした分野では冬雅の得意とするもの。
様々な言葉をつかい挨拶していた。本人の口からはあまり深くは語らないが語学は強い。
「真奈みたいには何でも応えれないけど語学なら教えれます。
ではお兄ちゃん今からデートしませんか?」
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