第186話―天使と悪魔の太宰府天満宮3―

五円玉を投じて手を合わせて祈願する。

これで少しは合格率は上がればいいのだがと

一抹の不安を抱きながら踵を返して進む。

祈った後は何をしようかと考えていると真奈がまたも肩にもたれかかるように接近。

それナチュラルにされると心臓をわしづかみされたようになるから是非やめてほしい。


「どうしたのかな、お兄さん。フフッ」


「わ、わざとやっているだとッ!?」


「ちょっと恥ずかしいけどねぇ」


恋愛を戦略をしないと思っていた真奈。そう判断していたが計算された行動を取っていた。

ほのかに赤らめて見上げる真奈の素直な言葉は思ったことをそのまま口にしていると推測。


「あ、アンタは……むかつく。真奈様をたぶらかさないでほしいんだけど」


「香音よく冷静になってほしい。

見ていたなら分かるはず、俺はなにもしていない」


「なら私は監視として腕を拘束します」


「え、えぇ……」


人は理解おいつけない状況であると戸惑いの声を自然と吐くようだ。空いている反対側に香音は腕を組んできた。

こうなれば参拝者から奇異な視線と蔑視を向けられる。彼女たちは一瞥する程度であるが主にまじまじ集まるのは俺のほうである。

えっ、居心地が悪くならないからって?ここまで観光したのだ。地元では無いから評価を下げても痛くないし、なによりナンパされる可能性が激減と考慮したら安いものだ。

慣れているし萎縮めいたこともないのだ。


「ここには梅の木がおおく植えられている。その由来は文武両道だった菅原道真が愛していたのが梅とされるから」


真奈は楽しそうに歌うように解説する。


「なるほど梅がよく目にするのはそういうことか。

貴族で学者ありながら政治家。

たしかに文武両道と謳われるぐらいに武力も備えられているよね菅原道真は」


「うん。

フフッ梅は春が満開に咲いて素敵な彩る。

ワタシの心は隣にお兄さんといるだけで、ずっと春日和だよ」


うれしそうに告げたので俺は軽い気持ちで頷いた。真奈がいるのは楽しくて舞い上がるのは同意だったから。でもよくよく考えるとセリフには想念が向けられるの明白で、真奈が告白してきたと受け取ってもおかしくない内容だった。


「お、お兄さん知っていましたか?あそこにあるのは神木の飛梅とびうめ。菅原道真を逢いにここまで飛んで来たんですよ」


「そ、そうなのか。へぇー」


すこし迫りすぎたから羞恥になる真奈。その緊張したのは俺にも浸透、ぎこちない返事をする。


「それで百人一首にもある句がありまして……

東風吹こちふかばにほひおこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れろ」


聞き覚えのある句。

でもけっこう馴染みのある言葉ではあるが意味その内容をイマイチ理解していない。でも今は輪郭が見えて形としてなっていくように遺された言葉が徐々に理解していく。


「真奈がいうと素敵な詩だね」


三人でまわって寄ったところは梅に関連するものが多い。なら恋愛のうたと思われたこれは家族との別れめいた意味では無いだろうか。


「フフッそうかな。

梅が開花期となる春ですよねぇ。訳しますと

……東からの風が吹いたら梅の匂いをここまで届けて欲しい。主がいなくとも春は忘れるな」


飛梅を見上げながら真奈は独自の言葉で言った。


「古文は苦手だけど覚えやすいなぁ真奈の説明だと。そうか、やっぱり家族と同然に向けたのか」


「えっ、分かりやすいのは同意見だけど。

家族同然ってどういうこと?」


まだ腕に抱きついている香音は小首をかしげてたずねてきた。意識しないようしていたが膨らみが当たっています!

ポーカーフェイスを貫こうと小さく深呼吸してから疑問符を答えよう。


「左遷される前に邸内には梅の木が佇んでいたんだ。菅原道真はその梅に送ったんだよ。

きっと家族のような心の支えだったんだろう」


「ふーん。ロマンチックじゃない」


「邸内の梅は主の元に飛んだ。字面通りに梅は飛んでいった」


「はっ?」


ポカンとする香音。

そして真奈はニコッと笑い話を聞いていた。


「そして現在、いま目の前に立っているのが邸内から飛んだ梅なんだ。

飛梅伝説と呼ばれる話なんだよ」


「ほ、ホントーなのですか真奈様」


「うん本当にそう言い伝えられて残っているよ」


簡単に返事だけをする香音。きっと荒唐無稽な飛梅伝説に信じていないといった反応していた。

まあ、物事の原因が判明されていた時代ではファンタジーな逸話には信じられないのは仕方ないか。

俺は飛梅の幹を見つめながら心の中で届くかなと考えて問う。やはり返事が返ってこなかった。

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