第185話―天使と悪魔の太宰府天満宮2―
学問の神様として
謂れのない罪によって時の権力者がその流言を信じて大宰府に左遷させられることになった地。こうした黒幕は左大臣として意欲的に改革を着手する
「来ましたねぇ、見てください!お兄さんと香音。ここが御本殿のゲートである
目を輝かせて腕をのばし指を指す方向には、豪奢な門が立っていた。そういえば歴史を調べたことがあり楼門とは二階建ての櫓という意味。
太宰府天満宮には、参道から境内までの道には、いくつかの鳥居があるのも見所であるがやはりメインは正門のここだろう。
楼門を設けられた前に俺たちは見上げていた。
「これが楼門か。真奈がはしゃぐだけの威厳が立ち込められているなぁ。年甲斐もなく感動している自分がいる。香音はどうだい」
「真奈様が童心へと帰化されている。ああ、嗚呼。なんと尊い、エモーショナル。すこぶる」
横では圧倒される楼門よりも心に揺さぶる香音の喜色満面にとなっていた。なんていつも通りであろうか。
俺は微苦笑を浮かべながら頬をかく。
そして後ろを振り向く。楼門から前にあるのは敷地内にすすむ前に清めるために設置された
すでに手を清めている。ちなみに正しい作法を真奈に教授してもらった。ここで大人としての教養を発揮したかったが失念してしまいカッコ悪いところをみせることとなったのは記憶に消すとしよう。
「フフッ、二人を見ていると飽きないねぇ。
では豆知識でも。戦国時代では イクサに巻き込まれて荒廃。
見る影もなくなった建物を寄進されたのが豊臣秀吉の軍師である
その流れで楼門を再建されたのが、お兄さんの推しの武将である石田三成なんだよ」
毛利元就の息子で参謀として活躍した小早川隆景(こばやかわたかがけ)も寄進されていたのは初めて知る情報だった。それだけではなく真奈が俺の好きな武将まで把握していたことも素直にビックリだ。
おそらく語っていたのを憶えていたのだろう。
真奈は最後のセリフには俺を喜ぶだろうと期待で膨らませた屈託のない笑みを浮かべていた。
「う、うそぉぉっ!?石田三成公がここを……スゴイ。これは写真を撮らないとならない!」
「もう変態落ち着きなよ。
でも、そんなに石田三成すきなんだ。石田三成公って付いているし普通じゃない」
引き気味なのは声をつぶやかれた香音、ただそれだけではなくどこか羨望めいたものが声音に内在しているように聞こえた。
おかしい、羨ましがられるところあったかな?
とりあえず疑問は後にまわして楼門を撮らねばとシャッターを押した瞬間だった。機を見計らうように真奈が優しく肩に触れる距離に接近した。
そのせいでスマホを落としそうになった。
ふうぅー、危うく落とすところであった。美少女から近寄られてドキマギをしてしまう自分に失望めいた呆れを覚えて振り向く。
「それでは次はワタシとお兄さんのツーショットだねぇ」
「えつ?一緒に撮るの」
「もちろん!お兄さんと並んで撮れるなら何枚も撮りたいからねぇ。フフッ、そのつもりなので絶対に付き合ってほしいなぁ」
真奈はいかにも普段から甘えるような仕草と声で述べた。そもそも甘えて頼むようなタイプではない。けど甘えることもあるが滅多になく物事をひとりで解決していくのが真奈。
そんな彼女から違う迫り方をされた日にはドキマギしても仕方の無いはず。
そう誰も彼もが足を止めて振り返るほどの天女。
「ほーん、変態なんか邪な心を抱いていない?」
タカのような鋭い眼光を光らせたのは言わずとも振り返ずとも分かる、分かってしまう香音。
「い、いや気のせいだよ」
冷や汗を流しながら俺はそう言った。
「そのあとは香音とお兄さん、それで三人で撮ってから入りましょう」
「真奈様にビックバン賛成です……えっ?
私も変態と撮らないとならないのですか。
や、やむ得ないですね」
香音は照れながらも内心は吝かではないといった感じだった。照れるなんて愛らしいと笑っていたらギロリと睨まれ恐怖した。
――写真を何枚も撮ったところで楼門をくぐる。
敷地内から見える向かいに御本殿がある。
そして囲むようにして造られていると箱のような形だと率直な感想。
この時期となれば学生などが多く見られる。
菅原道真は学問の神様であるから当然か、受験があるわけだし。せっかくここへ訪れたからにはペネお嬢様の大学を合格するように祈ろわないと。
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