第166話―冬雅はイチャイチャしたい花恋は引く3―

ひんやりとした風が吹く。

もう季節は冬に近づいてゆき秋のみなと

そろそろ乾燥しないよう保湿クリームを買わないといけないかと出費のことを考えながら近くの河川敷で歩いていた。

のんびりと景色を眺めているけど秋の果てが迎えようとする分かりやすい移り変わりはなかった。

季節のゆるやかに顕著な変化は意外とも感じないものらしい。


「あの、一応というか。冬雅さんにひと言謝らないといけないんです。

この前に東洋お兄ちゃんと浅草寺で二人だけで……デ、デートしたのです。ごめんなさい」


堤防の上、わたしと並んで歩いていた花恋は小さく頭を下げて無断でデートしたことを謝った。



「いいよ、わたしは気にしていないよ。

それよりも楽しかった」


「えっ、はぁ……はい。それは楽しめました」


なぜ嫉妬をしないのと訝しむ花恋は首を傾げていた。おそらく否定的な言葉またそしりを浴びるものだと覚悟していたのだろう。

わたしの返答があまりにも慮外りょがいな言葉だったのもあり怪訝さと混ざっていた。

迷わずに疑問を応えるべきとしたがすぐに返答するのも悪い方に解釈させるかもしれない。

なので『うーん』と考えていると唸りながら応えることにした。


「そうだねぇ。本音を漏らすならデートしたかったですよ。でもお兄ちゃんが楽しめて今後の足しになってくれたなら嬉しいんです。

あっ、もちろん花恋も休日を満喫したなら嬉しいよ」


でも効果はあまり薄いようでした。


「それはどうも。

でも、東洋お兄ちゃんが楽しめたらと仰りましたけど。そんな話題していないと思うのですが。

楽しいと聞かれたのは私であって、なんで東洋お兄ちゃんなのですか冬雅さん?」


「なるほど、確かに不気味と感じますよねぇ」


「そんなこと感じていませんけど」


そこはキッパリと否定する花恋。


「わたしも何度とデートを重ねているので良く分かるのです……。

楽しんでいるかと気にする人なんです。なので周りが楽しんでいないと感化されて落ち込んだりしたりして、最初の頃は難儀な人だなとは思ってはいたのだけど、そこが愛おしくて大好きなんです」


「そう……なのですか。

なんというか女房みたい」


人差し指を立てて裏とかなんてそうな無邪気の笑顔で言った。突然そんなことを述べられて驚く。


「にょ、にょぼうッ!?えぇーーどうして」


そこは奥さんとかお嫁さんではないことに衝撃的でした。まあ、どちらでも良いとは思うのですが実際にそう評価されるとなんだか

単純な意味だけではないような付加された言葉に捉えてしまうのです。

ほとんど同じなのにどうしてだろうねぇ。


「だって若妻とかそんなイメージというよりも深くまで理解していると通り越して女房ですよ冬雅さん」


「そ、そうなんだ。わたし……お兄ちゃんの

女房ですか。えへへ、なんだか強く想っていると言われているようで嬉しいですねぇ」


参りましたねぇ。えへへ、まだ恋接吻とかしていなければ夫婦でも婚約の約束までしていないのですが結婚した前提で言われるのは。

とくに他の人から見てどういう関係性に映るかは。

わたしの心は甘さで埋もれて悶絶していると花恋は嘆息して肩を優しく叩きます。

なんでしょう?欲しいのがあるのでしょうか。しょうがないですねぇ。今月も金欠ですが上限は十万円なら出せます。


「ここからランニングで行きませんか?

のろのろとジョギングするの私あまり好きではないのですよね」


どうやら買って欲しいものではなく提案のようですねぇ。さすがは女子高校生です。

わたしは、もう大学生なので若人のような活動力さなんてありません。

歩きから走りをしようと誘いでした。


「ここからランニングか。構わないよ」


「そう来なくちゃあ!

ただ、走るだけじゃあつまらないよね。

冬雅さん競走しませんか?」


「勝負ですか。望むところです!」


「勝った方が東洋お兄ちゃん独占権ことで」


「えっ!くっ負けられない戦いが……ここに」


この戦い。負けるわけにはいきません!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る