第165話―冬雅はイチャイチャしたい花恋は引く2―

ドタバタとした日でも明日は迎えられる。

室内に差し込む光に起床。

ルーティンである朝の走りに付き合う、、、、と着替えてます。

二階の部屋を出て、階段を降りる。

音を極力と立てないよう気をつける。

ドアを開けてリビングのソファーで寝ている人をわたしは発見した。

迷わずに接近します。もちろん足音で目覚めないよう軋まないよう意識して近づく。


「お兄ちゃん起きていますかー?

……どうやら気持ち良さそうに眠っているようです。

えへへ、いつまでも見ていられる可愛い顔。

そんな無防備な顔をさらしてしまうとイタズラしちゃいますよ」


耳元に近づけて囁いて起こそうと試みます。

ただ本当に安眠しているのを邪魔をするのは彼女としてはしのびない。

それなら囁くようなことはするべきでは無い。と、思うのですが悲しいかな。どうしてもイチャつきたい欲求を満たしたいのです。

なので折衷案として息を当てない距離をとって囁く程度に留めることを思い至ったのです。

我ながら天才的な発想力ですねぇ。


「その冬雅さん」


楽しくイチャついていると背後から恐る恐るといった感じで名前を呼ばれる。

声から察して花恋でわたしを名前だけで注意を促してきました。

ここの建物内、というよりも家にいるのは三人。恋人である山脇東洋やまわきとうよう、実の兄ではないけど可愛い女の子に妹と呼ばれることを喜びを覚える変態的な性質のある人です。

いつも変態と言われるのでたまには言ってもいいでしょう痛み分けということで。

やや強引な解釈を済ませて、家主である恋人のお兄ちゃんに泊まっているのは、わたしと花恋だけです。


「ちょっと待っていてください。

お兄ちゃんに挨拶しているのです」


「挨拶……ですか」


わたし的には今日のドラマは面白かったよねの感覚で返事をしたつもりでしたが変だったようです。

どういう反応かなと一瞥しますと花恋の目は白黒させていました。

どうやら……わたし…………

また、やっちゃいましたか。


「そうです。挨拶です。

なにも不純な動機のまま近づいているわけではありません。どういった反応かを観察することで今日の調子はすぐれているかをセルフチェックをしていただけなのです!」


「は、はぁ……」


花恋は、わたしの言動を図りかねない範疇はんちゅうの外にあるさまの曖昧な返事をした。

願望にも近い行動をして理解してもらえるとは思ってはいません。わたしのイチャイチャしたい欲求の願望はストレートすぎる。

真っ直ぐである想いの丈は、度を超えれば異常。

それとは別に、花恋はわたしを憧憬や羨望の理想的な女性としての対象として向けられているようにも薄々と感じるのです。

あまりイメージを壊すことは、しのびがたい。ほどほど眠っている想い人を堪能してからジョギングに行きましょう。

わたしは改めて理想な女性像を壊さず保とうとする自制心を忘れず、再開しましょう。

せっかくですので普段ならできないことをしましょう。

ここへ泊まることがないため先に起きて寝顔を触れる距離で眺めるのは幸せの時間を噛み締める。……早く目覚めても運が良かったら隣のベランダから寝顔を眺めるしかなかった。

だが今はどうか?今は手を伸ばせば頬を触れる。寝言や寝息などの音が聞こえる。

そうなれば滅多に出来ないことしよう。


「お兄ちゃん失礼しますねぇ」


当たり前だけど返事はありません。

ありませんので起こそうとして目覚めないよう、、、、、、細心の注意で行います。


「ちょっ!?

冬雅さんなにをしているのですか。また東洋お兄ちゃんにイヤらしいことはじめるのですか」


あれ理想のお姉ちゃんイメージを崩落しないよう心がけていたけど過去形で現在進行形では良くないイメージがつけられている?


「うーん」


あわわ。

お兄ちゃんが寝返ってきました。甲高くとツッコミをした花恋の声に起きようとしています。


「花恋シィー、しぃーだよ」


わたしはこれ以上は目覚めるラインだと判断して人差し指を伸ばして口元にあてて静かにしようとジェスチャーをする。


「あっ、すみません。

っていうか冬雅さんがそれを言うのですか!

起こしたくないのでしたら外に出ましょうよ」


追い打ちを掛けられるような指摘にぐうの音も出ませんでした。でも怒鳴るのはやめて。


「返す言葉がない。

でも一つだけ言葉を返さないといけないのがある。

でも!せめて、お兄ちゃんの手を少しだけ握ってから待ってほしい」


「いつもなら駄目と言っても引こうとしないでしょうね。こういうのカリギュラ効果で否定すればするほど人はしたくなるものですし。

いいですよ。でもそういうことなら私も握ろうかなと考えたりしたり……しなかったり」


細々とした声で花恋はそう言いました。

こんな表現するのもどうかと思いますが花恋その反応たるや恋をする乙女ものでした。

どうすればいいか、何が正解なのか迷いました。

花恋がライバルとして自分の立ち位置が危うくなる危機感よりも成就じょうじゅすることが厳しすぎる現状に心苦しくかったからです。

残酷な決断かもしれませんが、わたしはいつか冷めてくれるか諦めてくれるか期待していました。

だからその言葉にいささかの驚きを禁じえませんでしたし心の痛みが走りました。


「えっ!花恋も手を握りたいのですか……」


「うん。この機会に東洋お兄ちゃんの手を握っておこうと考えてまして……面と言っても断れるから。せめて起きていない間にと。

うわぁーーッ!?私も冬雅さんのようなことを」


「ストップ!ストップ。

起きてしまうよ。わたしも偉そうなことを言えないからねぇ。花恋の欲求はよく分かりました。

それじゃあ……うん。それぞれ片方の手で握るとしましょう」


花恋は何かを言いたそうでしたが不当なものになると悟ってなのか否定的な言葉を紡がず、とりあえず頷いてみせたのでした。

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