第167話―起動武士マナダム水星の真奈―

外に出ると秋と冬が同時に押し寄せてくる。

今もってニートの俺はそろそろハローワークでも行こうかと考えていたけど真奈と約束の日がある。

断るという選択肢はない。わざわざ休みの時間を誘ってくれるなら断りたくないからだ。

強制的というものではなく個人的な判断として。

真奈には多大な感謝……そして悔いがある。


(真奈の家に訪れるのは懐かしいく感じる)


彼女がまだ女子高校生のとき、誘われたら家に訪れたし送ったりもしていた。

心に染みていて見上げていると二階の窓が開いて身を乗り出すようにして真奈は手を振る。


「おはよう。

わざわざ来てもらいすみません!お兄さーん」


少し離れた距離、声を届けようと普段よりも高い声で挨拶と謝辞をする。


「当然のこと。それよりも危ないよ真奈」


わずかな距離的の壁を超えるため俺も平素よりも大きな声で返す。


「心配ありがとう。今から降りて行きますねぇ」


まるで恋人みたいだなと閉まった窓を見つめて苦笑をこぼす。

――この日の真奈は綻んでいた。否、今日も綻んでいるのが適切か。手を繋ぎながら真奈が行きたいと場所へと歩いて向かっていた。

ツヤでかがやく茶髪のポニーテールは風に緩やかに揺れる姿はまるで清涼飲料水のCMみたいだ。

真奈のコーデは青のシャツ、同じく青色のプリーツスカート。


「真奈オシャレだね」


「フフッ、ありがとう。あの、ワタシを見てどうでしょうか?とても、かわいいですか」


「あ、ああ。可愛いよ!うん、とても可愛い」


「フフフッ。そう面と言われると照れるよぉー」


幸せそうな顔をして今でも溶けそうで崩れそうな程だった。それと幸せな時間が流れている。

今日のコーデはなかなか攻めていると思う。上も下も同じカラーというのは特にそう思わざるえないからだ。青の統一だと。

そこで不意に冬雅の言葉がよみがえる。

プリーツスカートは山折りまたは谷折りの細めで折り目な形のこととされる。足さばきが楽になり見た目の立体感やコーデの奥行きをもたらす。

そして、細めな折り目のないのをフレアスカートと呼ばれるらしい。


「フフっ、そんな事あったんですねぇ。

お兄さんご清祥せいしょうお過ごしされて何よりだよ。いつまでも健康でいてほしい」


「はは、そんな心配しなくても俺は元気で健康だよ。毎日と野菜や肉類などのバランスを取っているから滅多なことがない限り大丈夫」


街中を歩きながらエピソードトークで花を咲かしながら目的地まで続けていた。

真奈の自宅からそう離れていない所にある。目的地にたどり着く。

連れられたのは模型店もけいてん

ここで真奈が欲しいと申したのはガンプラ。

おそらく知らないオタクやそうではない方も用語を知らない者もいるだろう。

ガンプラとはガンダムのプラモデル略称である。


「おぉー!ガンプラがたくさんある……。

こ、これはゴッドガンダムそれにこれはダブルオーガンダムにレッドフレームもある。

なっ!?値段が思ったよりも高い」


まだ中高生であった当時の山脇東洋おれはよくホビーショップに寄って購入していた。

ここにあるガンプラは人型ロボットで開発されたのをモビルスーツと作中でそう呼ばれる。

同じモビルスーツであってもどれも同じではなく価格の高いものや安いものがある。

とはいえ俺が子供の時期よりも高いのが並んでいるのがある。いくらなんでも高いよと内心つぶやく。


「フフっ、たしかに高いかも。

だが、まあまあよ」


すると真奈は手を伸ばして次々と箱を手にするとカゴの中に入れていく。あれ、気のせいかな俺が欲しいと言った商品をカゴに入れたのだけど。

きっと真奈も俺と同じく欲しかっただけだろう。

そうだ。いくらなんでも高い商品を奢ろうなんて考えないはず…………あるかも。

それから模型店をあとして小腹しにと近くにあるカフェに入った。

丸テーブルに向かい合って座る……ことはしないのが真奈だ。想いを寄せる人と隣でいたい真奈は左の椅子に腰を下ろす。

そして握っている手は目立つのでテーブルの下で視線を覆い隠そうと考える、せめての苦肉の策。


「これだけ買うほど真奈はガンプラ好きだったんだね。最新のエアリエルは残念なことに売り切れだったけど」


「悪運だったよ。お兄さんこのあとですけどワタシの家に行きませんか?」


「真奈の家か。それは全然いいけど、どうして」


「そんなの決まっていますよ。お兄さんとガンプラ勝負するためです。

お兄さんの分を勝手に買いました。

一緒に楽しく作りましょう」


「や、やはりか。やっぱり俺の分だったのか」


ニューマナは伊達じゃない!


「安心してください。お兄さんちょっとアルバイトで湯水の如くありますので遠慮なく受け取ってください。

いただいた報酬の一割も減っていません」


知らずに真奈はアルバイトしていたのか。

ふむ確か真奈は東大の二年生。アルバイトしてもおかしくはないけど不安が少々とある。

ふむ、もしかして冬雅も俺が働くのを阻止しようとするのってこういう心境が動いたからかな。

いや、そんなはずがない。

まるで働いたら苦痛だけないみたいじゃないか。いや、そもそも俺が心配してきるのは真奈のアルバイト先はホワイトかブラックな環境のことだ。


「嬉しいよ真奈。でもバイト代は真奈の好きなことを使うのがいいよ」


「うん?ワタシが好きな使い方がお兄さんとデートしたり一緒に過ごすために。

いつも大好きな、お兄さんと隣り合って何かしたりするのが至福と感じているの」


くっ、ここでまた多大な感謝と悔いが重ねていく。落ち込んでいるときには忙しい時間を削ってでも献身的に面倒みてくれた。

それと真奈の想いには応えれないことも。

恋人になれないことを時間をかけて大きな傷にならないよう解決していく方向は変わっていない。でもこれが正しいのかいつも考えてしまう。

そして真奈は伝票を持って会計を済ませる。

また奢りたいのか!アンタたちは!!

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