第140話―ツムギパーティーヴィクリー―

三好さんも加わりリビングで腰を下ろす。


「あれ花恋たちの姿が見えないけど。いずこへ」


「二階で着替えるって」


戻れば居なくなっている三人。どこへいるかと視線を巡らしていると疑問符を応えてくれたのは香音。頬杖をして何故か淡白に応えたがテンションが下がっていることを気にしない。

関心はないけど聞かずにはいられないだろう。


「先までは無邪気で明るかったのに。香音なにかあったなら聞かせてほしい。もちろん無理強いはしない」


「……私を見てくれないからよ。気づいてよ」


目を逸らして香音は低い声でそう返事した。その立ち振る舞いには、もどかしいと出ている。


「えっ?香音を見ているつもりだったけど最近は疎かにしたかもしれない。ごめん」


よく分からず俺は頭を下げて陳謝した。

立っているので見下ろすような形になることに機嫌を悪くしないかなと不安を覚える。

冬雅のことを将来的にどうするかと悩むことは多いせいで無意識に香音を見ようとしなかったかもしれない。自分の失態は、俯瞰的に見ようとしても完全には見えないなあと嘆いていると。


「フフっ、お兄さんそんな不安そうにしなくて大丈夫ですよ。きっと香音は好みに合わせて勇気を振り絞ろうと髪や私服を大胆に返ったと思うよ。

お兄さんを可愛いと褒めてほしくて」


「そ、そうなのかい香音?」


「…………知らないッ!」


プイッというマンガのような擬音語が視覚化してもおかしくない程に顕著に表した香音。

ふむ、そういえば髪型はポニーテールに束ねており他にも違う身拵みごしらえには橙色の長めのワンピース。そのワンピースはフリルが多めで八丈ほどのスカートとなっている。橙色という明るすぎる色とフリルで落ち着いた雰囲気を纏っている香音が幼い印象を与える。

それによくみれば靴下やバックの色まで橙色で統一している。な、なるほど香音の中では

俺の理想的な好みの女性というのは橙色で身を纏う女の子でフリル多めな格好、次に加えるのは髪型はのポニーテール。

これは疑いもなく冬雅と真奈の特徴を合わせている。橙色に選んだのは冬雅の自他ともに認めるイメージカラー。そして真奈が最もよくセットにする毛先がポニーの尻尾ように垂らしたポニーテールにしていた。


「……で?」


逸らしたまま香音の片目だけこちらに瞥見し向けてなにかを促してきた。さて……なんと答えれば正しいのか。


「えっ。えーと、そうだね。

趣があって太陽のように――」


「……あのねぇ。そう無理して美辞麗句を連ねなくてもいいからストレートに!」


逸らしていた顔を戻した香音は真っ向からそんな事を言い放った。よくよく見ると香音の頬は淡く染めていた。


「まあ、可愛いとは思っているよ」


「ふーん、それだけ?」


狩人のごとく眼差しで睨まれて背筋に悪寒が走った。や、やられるッ……。


「は、はいぃ!とても似合っています。

高圧的――もとい活発的な立ち振る舞いが放っている魅力だけど香音のいつもと違う一面を見れて眼福であると感じた所存であります!

今は鷹揚おうようの溢れていて目に惹きつける魅力があり――」


賞賛の言葉が浮かんでは、まったく熟考せず発していく。きっと羅列られつ的な言葉が並べて、まとまりのない酷い賛美だけになっている。

自分の人物像が崩壊したような言葉を言い切ると香音の表情というと――仮面を被っていた。


「な、なぜ仮面を付けておられるのですか」


「フフっ、お兄さん敬語が抜けていないよ。

そうですねぇワタシが返答しよう。いつまでも直接お兄さんは止まらないから耐えられなくなった香音はポーカーフェイスが保ってなくなって近くにあった仮面を装着したんだよ」


ほのぼのと真奈は控えめな笑顔で返答。


「そ、そうなのか」


「油断していた。冬雅と兄だということを失念してしまった。まったく……こんな変態ロリコンを変態の事実のこと警戒しないといけないのに」


仮面つけたままの香音がどんな表情をなっているか読めないが声調でなんとか喜怒哀楽を推測することは出来た。いまの声音には哀だけが除かれた三つの感情が混ぜられた。

そんな声で蔑称という意味で使っている変態と異常な状態の意味である変態がひっきりなしに言われると蔑称なのか判別つけれない。

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