第141話―ツムギパーティーヴィクリーⅡ―
コホンと注目して欲しい意図の込められた咳払い。そこを視線を向けると比翼が立ち上がっていた。右手には持つのはジュースのファンターが入ったコップ。
開いているパーティーの主に参加しているのが未成年なためジュースは多めに用意していた。
「それじゃあ皆さんコップまたはグラスを天井へ向けて掲げてください。
いいですね?それじゃあ合図を始めるよ。
三、二、一、乾杯ぃぃぃぃ!」
なみなみ注いだコップなどを高々と持ち上げると一糸乱れないで口をそろえて乾杯!と
一体感に包まれていく。そしてその後やることは隣にいる人にコップなど軽く合わせて打ち鳴らす。音が響き渡る。それが複数が鳴り重なって大きな音のように響いてわたる。
一体感となった高揚感の余韻だけが残って音は消えていく。
このあとに起きるのは雑談を繰り広げていく賑やかな席。
比翼は腰を下ろして近くに座っている今回の主役である不死川さんと楽しそうに話をしていた。
ここで俺がやるべきなのは見守ることだけだろう。いい大人である俺が騒いだり盛り上がっても独りよがりで終わる。
テーブルを囲んでいるのが歳若いメンバーなため三十歳である年齢が全面にと出るのはナンセンス。
「むにゃあ、へっへへ。お兄さぁぁん!」
鈴を転がす凛とした声。
そんな緩んだ声音、今や甘い声を発しながら肩に頭をもたれてかかってきた。隣に座っていたのは真奈だ。大学生である真奈は肩に頭を預けている事実を理解できず俺は硬直した。そして事態が飲み込めていく。
「えっ?何事ッ!?」
「かわいい、そう慌てないでいいのですよ。せっかくの会ったのですからイチャイチャしたい!お兄さんだって同じはずじゃないですか」
そんな近くで密着されたら困るのだが……どうすればいいかと思案していたら酒の匂いがした。もしかしなくとも真奈は酒気を帯びているのでは?ゆっくりと首を動かして真奈の顔を見ようと試みる。
そしてその考えは正しかった。どうやら真奈は顔を燃えるように赤くなっている。
「たしか真奈が飲んでいたのは……アルコール高くないものだったはず」
「うん、そうだよ。サントリーの〖ほろよい〗」
「どうしてほろよいシリーズを飲んだのに!?理解できないよ。どうして、そこまで酔ってしまうのだい?真奈ぁぁぁーー」
まさか大胆な行動するまでに酔うのかと俺は目の前のことを受け入れず絶叫した。
周囲の視線を集めることになるが、すぐに興味を失っていく。また何か始まったみたいだと日常の光景ように扱われている。
これ当たり前だと認識しているのかと俺は絶句するしかなかった。
「うーん、詳しいことは把握していないけどアルコールに酔いやすいからで、そういう体質としか。
フフっ、お兄さん。ですので意識が朦朧するほど酔っているワタシは、お兄さんと関節キスして楽しみたい。一緒に楽しみましょう」
「楽しまないから!ちょっと待っていてくれ。今から水を持ってくるから」
このままでは何が起きるか分からない。逃げるように席を立つと台所に向かうのであった。
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