第128話―閉ざされた世界と心―
花恋は誰かが止められないかぎりに、のべつまくしと喋って説明をする。
隙をうかがって質問をかけても華麗にスルー。
腕を引っばられて連れてこられたのは二階建ての家だった。建築してから数年ほどしか経過していないだろうと傷の少ない外観。
予備鈴を見抜きも押そうともせず花恋は、そのまま門扉を通り過ぎていくと手を伸ばして開ける。
「東洋お兄ちゃんを獲ってきたよぉぉーー!」
いったいどこの部族なのか花恋は開口一番したことは獲物を捕まえたことを声高に上げたこと。
「……」
いつの間にか獲物のような扱いに異議を唱えたいところではあるが我慢しよう。
そこを突っ込んでしまったら大人げないですからね。かつては海千山千と広がる社会に挑んできた者ですので大人の余裕を持っているのだ。だからこそ培ったものは易々と崩れない。
なにもせず誰かが現れるのを待つことを好まない花恋は無許可のまま土足で入る。
勝手に入ることに対しての比喩的な意味としてであって靴のまま入ったわけではなく。
手を洗いリビングへ向かって入る。
「お待たせした。ヒマそうにしていた東洋お兄ちゃんを獲ってきました」
アレンジしたセリフは声を届かなかったセリフ。あとに続いて中へと入ろうとした俺は足元にカランとなにかを踏みつけた。聞き覚えのある音を思い出さずに視線を落とすと缶コーヒー。
ああ、どこか懐かしいと感じた正体はこれか。
「いやちょっと待ってくれ。
へ、部屋が散らかっているッ」
無惨な景色。その荒れ果てたようになる部屋は、まるで彼女である冬雅のかつての部屋とも匹敵ともする汚れたものだった。
俺が愕然としていると三角頭巾と雑巾を手にする美少女が近寄ってきた。
な、なかなかの個性にあふれた衣装。
「追加戦力よろ!それじゃぁ早速だけど兄ちゃんが担当してもらうのはリビングを頼むね。
あっ、それと冷蔵庫の整理も」
「まるまる全部だねソレだと……まあ、いいけど。それよりも元気そうで何よりだよ
「へへ、毎日エンジョイしていたからね」
女子高生である不死川さんは白い歯を見せてはにかむのだった。外見を良くしようと飾るためとかではなく実用性を重視したメガネをかけており暗い印象を与える。
そしてまたもデザインなど目を向けていないのが窺えてしまいたくなるジャージ、
手入れをしていないボサボサの伸ばし放題の黒髪を掻く。
これもし中年の男性なら目も当てられないものになっていただろうと想像してしまう。
「進捗は……よくなさそうだね」
「あはは。カナカナ秒でドーンと来てくれたのは感謝感激あめあられ気持ち。
でも部屋の中は暑いからね。休憩をとっていたら信仰結果は芳しくないからね」
「そもそも普段から掃除していたら……
どれだけ休んだか知らないけど。ほら再開、再開!」
「くっ、やらなければならないか」
背中を押されて不死川さんは顔を嫌そうにしながらも抵抗をせずに歩いて進むのだった。
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