第91話―マナだけの宇宙2―

どう接せばいいのか不明瞭だった。

相思相愛だけど付き合えないことで自然と出会う回数がみるみるに減っていた。

そして運命のイタズラか神の采配がこうなるよう紡ぐように今こうして雨の中で一つの傘を広げて相合傘で歩いていた。


「やっぱりワタシ達って似ていますよねぇ」


「急だね。でも確かに俺と真奈は似ているとは思う。けどこんな中年期に突入する俺なんかと似ているなんてないと思うよ。

真奈は、あらゆる分野では才媛の輝きを放っているのに謙虚で素晴らしいから似ているなんて」


心の内に留めずに抱くものをすっかりと打ち明けているべき間柄でも俺にはその相手としては相応しくないと客観的にそう判断。

優秀な逸材は優秀な人と付き合うものと相場が決まっていて世界の摂理だ。


「でもワタシが心から許しているのは複数いても、隣にいて欲しいのは……お兄さんだけ。

あまり自分の価値を貶めたり卑下はしないで」


顔を上げて見詰める真奈の瞳は揺れている。すがるようにして共感してほしいというもの。そんなふうにこいねがわれたら引っ込めるしかない。

まだ頭ではそうするべきで言葉通りに受け取るのが正解とは理解していても経験則や状況などをざっくりと鑑みると楽観視も出来ない。

真に受けてから順調に流れが進んでも、先が不安定で未知数ばかり。いつかほだされて後退するかもしれない。


「真奈……そうだね。ちょっとネガティブすぎたかもしれないな」


いつも冬雅のことをネガティブにあった。けど彼女は前へと突き進んでいったことで成長して前向きにとなった。

挫折しても立ち上がって理想の未来のためにネガティブからポジティブにと変わっていた。

そして恋を燃やす冬雅の相手といえば成長の兆しさえもみせない山脇東洋。俺は……不安が募るよりも根本的に相応しくないと痛感していた。その釣り合わないことは日に日に強くなっている。


「そうだよ。どこまでも貶めるような考えたらダメだからねぇお兄さん!前向きに」


「真奈、ああ……善処するよ」


すると真奈は歩を進んでもいた足を止めた。

すぐ足を止めたので雨に濡れてしまい俺は慌てて傘を入れようとさて数歩と下がり戻る。


「でしたら、お兄さんが自信を持てるようにワタシがいっぱい愛を告げます。

……え、えーと……お兄さんが釣り合わないとか後ろ向きなことを考えても大好きだよ。いつもいて欲しいし、なんなら結婚とか時々そんなことも妄想したりもしているから」


「――ッ!?」


告白をされる。何が起きているかいささか理解は追いつけずに混乱する。

きっとリアクションは目を白黒としている。

真奈は頬が赤くなっても構わずに言葉を続けようとして顔を迫る。


「まだワタシがギャルギャルしていた頃に見守ってくれたし適切な接し方とかしてくれた。

それに話題や趣味も鏡に移るように一緒。

好きなこととか違う点を探す方が難しいほどだし。お兄さんとは半身なんて勝手にそう信じているぐらい痛い子」


「痛い子では無いと思うけど……」


こんなにも感情的になるなんて目の前にある彼女の活力的な行動さに驚いた。

考える時間も与えずに畳み掛けられて言葉に対して返すのは吟味せずに時間かけずなもの。


「も、もう一度だけ伝えますねぇ。……

ワタシお兄さんのこと大好き。

だから隣にいてほしいし相談とか色々してほしい」


「そう言ってくれるなら、俺もすべては応えれないけど。友としてなら…付き合えるかな」


ここで抱きついたり愛を伝えるのは不誠実だ。ここにいない冬雅にも真奈にも対して。


「フフっ、その関係性でいいですよ。

お兄さんとワタシは何で話をして打ち解けてしまう絶対的な友。かけがえないの存在ですらかね」


恋に焦がれていたのを叶えられた花が咲くようにする満面な笑みを浮かべる真奈だった。

いつも子供のように見ていて守っていかなければと思っていたが励まされることになるとは。

感慨深くあり寂しさの感情がこだまする。

そうしていると真奈は手を伸ばした。


「やっぱりそうなるんだね」


「フフっ、うん。手を握ってくれませんか」


「ああ」


そう応えて俺は真奈の手を握るのであった。

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