第65話―比翼記二の巻―

時間の流れは速いものだ。

わたしは東京都にある有名校柘榴坂ざくろざか高校で通うことを叶えられた。

それも多くの人から支えられ懇切丁寧に教えてくれたことで進学校に通学できている。

この恩は一生をかけて返すつもりである。まあ冬雅おねえちゃんたちの前でそんな直接なことは恥ずかしくていえないが。


(……今でも信じられないよね。パパ活をして生きていくのが必死で先のことなんて見えていなく藻掻もがいていた。

けど今は、こうして立派に前へと走っている)


離れた土地から東京まで逃げたことで、おにいちゃんの出会い救われた。

その助け方はあまりスマートではなかったのは、あの人らしいともいえる。

当初のおにいちゃんは困っているなら泊まらないかと口にして頷く。ついて行けば泊まるのは隣の家である冬雅おねえちゃん。さすがに男性と屋根ひとつの下で暮らすのはよくないと保護されたのも懐かしい。

いきなり彼女らしき人を見知らぬ女の子を託されたら厄介者として扱われると恐れていたが妹のように可愛がってくれた。

わたしの生きてきた劣悪な世界の普通ではそんな人種はいなかった。どうしてそんなに優しいのか怪訝になり迷惑だと知りながらも訊いた。すると幸せそうな顔で「そんなの決まっていますよ。お兄ちゃんの妹ボジションであるなら、妻ボジションのわたしの妹でもあるのだからだよ」キラキラした顔でたわごとの類がなくそう言い切った「ごめん。なにを言っているのか全然わからない」こんな頭痛薬を着用しないとならないような発言するとツッコミも出るもの。

……ヤバい今でも思い出しただけで頭を痛くなる。さすが冬雅おねえちゃん、もうあのときから頭のネジがはずれていたみたいだよ。


「てへへ」


つい失笑をこぼす。フッとして懐旧に浸かっては現実に帰るのは泡みたいだ。これが思い出というものなんだろう。

イヤな記憶として残るのは思い出とは表現しない。キズを愛おしく思う人はいない。

かけがえの記憶こそ思い出。思い出は人をより豊かにさせてプラスな道へと人格を作る。

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