第13話―遥か遠くにある日常ラストワールド―
元旦。元日の朝という意のある言葉がある。
その早朝でベランダ出て、いつも挨拶を交わす目の前に立つ冬雅に新年の挨拶をする。
冬雅は、太陽のような橙色の振り袖。
「新年、明けましておめでとうございます!お兄ちゃん。えっへへ、今年もいっぱいイチャイチャして告白することを峰島冬雅は
誓います」
「そ、そうか…明けましておめでとう冬雅。
朝食はどうする。お家か一緒に?」
「お兄ちゃんと一緒に朝を食べます」
「分かった。用意しておくよ」
この確認をするのは隣同士ではある一方で
冬雅のご両親は多忙を極めていて愛娘と一緒に取る時間さえ、ままならない事情がある。
そんな彼女が高校生の頃、笑うことなかった。けど今は、陽が
「わぁ!お兄ちゃんの手料理スゴくッ楽しみです。ご
「はは、でも。いつも食べているじゃないかな冬雅」
「でも、でも。いつも食べれることが嬉しいんです。大好きな人と一緒だから」
混じり気がなく屈託の無き笑顔。
これを拝見するだけで今年を乗り越えれる動力源が湧き溢れてくる。
しかし…俺は今年で30歳になって冬雅は二十歳になる。この恋はいずれ終わる。
若い冬雅が燃えるような炎を消えるそのときまで俺は、いつでも別れやすいようにしないとならない。
「冬雅らしいなぁ。けど俺は……」
その先の言葉を発せれない。
どうやら激しい抵抗感で拒絶の言葉を軽い気持ち、冗談でも言いたくないと抗っている。
「えへへ。お兄ちゃん分かっていますよ真奈とわたし。選ばらないとならないよねぇ。うん、辛い選択だってなんとなく想像はつく。でも、わたしを選んでくれなくても……かなし…くは……な…いからねぇ」
分かっていると冬雅は言ったが違う。
俺は例のごとく年の差の恋愛に懸念を抱いている。嗚咽をこぼす冬雅は、たぶん不安で苦しんでいる。
前にした約束を、成人式のとき告白の答えを出すことを。
「冬雅それは違う!その約束まで冬雅を選ぶとは残念だけど断言は出来ない。
気休めを言っても駄目だから本当のことだけ言わせてもらう。
現在進行形で、この世界――いや過去と未来を森羅万象を加えて一番に大好きなのは
冬雅だ」
「えっ――あの、ありがとう。すごく
幸せで、嬉しいです」
ここで身体を揺らして照れられても困るのだが、まあそうさせた俺が言うことじゃないけど。こっちまで恥ずかしくなって沈黙が訪れたのだった。
「ほう。貴様、朝っぱらから娘を相手に大声で愛を叫ぶか。あぁ」
冬雅の後ろ部屋の中を入ってくる者は、冬雅の父親だった。
おそらくドアの前とかで耳を傾けて一部始終を聞いていたようだ。
「パ、パパッ!?」
聞かれたくない父親のまさか登場に冬雅は顔を両手で覆っていた。
こうすると乙女にみえますね。この後、どうせ冬雅とんでもない行動をするんでしょう。
鉄の心で対策しないと。
ともあれ冬雅のお父さんに聞かれて…いや、認める絶好の機会ではないだろうか。
有耶無耶にしたことを決着つけたい。
冬雅の父親はベランダに出ると冬雅の隣に。
「このペテン師があぁぁっーー!!…怒鳴りたいところだが親である俺が出来なかったことをしてくれた。それには感謝している」
「すみませんでした…えっ?
感謝ですか?」
「そうだ。ここまで心を許す相手なんだ。
不安はあるが。親らしい事するなら選んだ相手を信じる。それだけだ。幸せにしろ必ず」
「は、はい。必ずや果たしてみせます」
俺は深々と頭を下げてお礼を申し上げる。
どうやら認めてもらえた、その事実が頭にあっても実感がしない。
「ま、まるで…娘ください場面みたいだよ」
ボソッと呟いた冬雅の言葉に俺は心で同意するのだった。
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