第9話―生々流転だった想起のワンデイ2―

冬雅は化粧品を購入してから気持ちが

割り切れないままファッションフロアへと

向かう。


「遅くなったけど大学祝いと足りなかった誕生日プレゼントの保留していたのをそろそろ送りたい

と思う」


足を止めて後ろの冬雅に振り返って言った。


「保留、ですか?」


絶妙に可愛いさを発揮して首を傾げる冬雅。

言ってから自分が突拍子もないことを

言い出している。

そうする俺の動力源は冬雅に今年内で、してきたプレゼントに足りないと感じていた。

その不足した分を年末で済ませたと個人的な事情、独り善がりのエゴがある


「ああ、保留していたというより渡したい。

年末年始キャンペーンやっているからという今のうちに買おうとだけなんだけどね」


「で、でも…記念日に祝ってくれたのに。

後になって、またプレゼントを貰うの……。

お兄ちゃんにあまり負担かけたくないよ」


施しをあまり受けたくないと分かって、それを気遣わないよう気をつけて楽観的な口調で振る舞う。

けど笑って肯定すると思っていた反応とは違い困惑気味になっていた。


「全然そんなことないよ。

もしかしたら冬雅にピッタリなお気に入り見つかるかもしれないから。ほら行こう」


「……けど」


「はは、本当に気にしなくていいんだよ冬雅。日頃の感謝と思ってくれたら」


またも断ろうとする冬雅は言葉を紡ごうとする前に俺は先を促して遮る。

選んでいる内に楽しくなっていくと考えたが、結果はそうにはならず何着か購入して後にする。

そして次に向かうのは地下一階にある食品フロア。エレベーターで降りて向かう。

移動をしていくと隣で浮かべていた顔にはくもらせていた。


(やっぱり強引すぎたかな。気乗りじゃ無かったし)


自省して今度は気をつけないといけない。

そう決意してカートを押して野菜コーナーに。まずこういう買い物の入り口に入ってコーナーが必ず野菜コーナーと位置づけとなっている。

すぐ食べれる惣菜そうざいのコーナーは手を出しづらいよう入り口よりも遠い位置コーナーに設置されてある。


「野菜の値上げをニュースで聞いた事あったのですが思ったよりも上がっていますねぇ」


「良い方向ではない値上げだからインフレ効果は期待は出来ないからね。

でも冬雅が見て分かるぐらいに目利きを身につけたの驚いたよ」


「お兄ちゃんと買い出しする機会が増えたから自然と身につけますよ。

あっ、小松菜が安いみたいですよ」


と生活感のありすぎる会話をして商品をかごに入れていく。

旬の野菜である大根とほうれん草も入れていき日常品コーナーでブラシや生理品なども

入れる。

大勢で駆け込むのを想定して余分に購入するとカゴは今にもあふれ落ちそうになる。


「そうだ。

他にも冬雅のご両親に贈り物も選ばないと」


「えっ?いえそんな配慮をしなくていいんですよ。そこまでしなくても……

贈り物しなくても大丈夫だよ、お兄ちゃん」


「大丈夫だよ。ついでだから」


土産コーナーの数千円する菓子類をカゴに入れてレジへと行き会計を済ませる。

買いすぎて、なかなかの値段であったが極端な節約に強いられる程ではなかった。

エコバッグを二つ持参して正解だった。

冬雅も手伝ってもらい、俺は二人分のバッグを持って歩く。

ショピングモールを出ると日はすっかりと、沈んでおり景色は真っ暗。

夜の帳が降りていた中、俺は冬雅と並んでそのまま帰路にく。

ラニーニャ現象もたされる寒気に当てられ一刻も早く帰って暖房に当てたい。

寒さに耐えながら電車に乗って降り。

静寂な夜の住宅街を尽きることない話に咲かして歩いていた。

冬雅は寒さから巻いていたマフラーをより隙間ないよう巻き直すの隣で一瞥。

そして視界の端に自動販売機が見えた。


「寒いからコンポタを買うけど冬雅は欲しいのあるかい?」


「わたしは…いいです」


財布を取り出して投入口に硬貨を入れ、コンポタのボタンを押す。

しゃがんで手にして、やっぱり寒さに堪える冬雅の分も買ってあげるかと温かい缶コーヒーを押す。後ろから「あっ!」と声をこぼして俺の行動に驚嘆していた。


「はい、冬雅。これで温めて」


後ろに立つ冬雅に、さわやかに笑みで渡そうとする自分の気障きざみたいな行動に遅れて羞恥心が襲ってくるが冬雅が自分に課している毎日の告白と比べるに値しない。


「……どうして」


驚愕をする冬雅は顔を俯いて肩を震わせる。

気のせいか声にも震えていた。


「んっ?」


「どうして、頼んでも…お願いもしていないのにお兄ちゃんは。

どうして一方的な善意をするんですか!

そんなお兄ちゃんなんか…大好きだけど嫌いになりそうです!」


素早く顔を上げた冬雅の瞳はいつもよりも潤っていた。悲鳴を上げるような甲高い声で非難する。

涙目になる冬雅は、走って夜道を一人で駆けていくのであった。

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