第8話―生々流転だった想起のワンデイ―

今年も終わろうとしている。

コロナ禍になってから変異型による驚異に我々は恐れて経済を悪化していた。

総理も変わって、ついでに主任しても主張も変わった。

スローガンだった所得倍増計画から新しい資本主義という形だけのいつもと結局は変わらない現状維持な資本主義だった。

人流を抑えようとした結果に経済は悪化していた。その対策に予算など出すのも少なく、税も下げようとしない始末。

そしてオリンピックは静かに成功をしてレガシー効果は後の未来で分かるだろう。

そんな今年も少しとなれば年末年始のイベントがあるので俺は冬雅とショピングモールに来ていた。


「わぁー、すごい混んでいますねぇ…」


「ああ。でも年末年始キャンペーンを考えれば少ない方だけど。確かに、この人の数はすごいなぁ」


物流を収めようとしても人の集まる所は、どうしても集まっていくものだ。

こんなひしめく中に入って往来の人になると考えると引き返したくなる。


「やっぱり、ここは冬雅は先に帰ってくれるかな。

買い出しなら一人で出来るし…デートする楽しみもないだろうからね」


「いえ、デートはどこでも気持ち次第で出来るものなのですよ。

お兄ちゃんがわたしを想って、わたしがお兄ちゃんを想って同じ空間、一緒にいたら。

それがデートの定義だと思っています」


弾けんばかりの笑顔を向けて哲学的な言葉を口にした冬雅。

彼女らしい言葉に俺は、つい声に出して笑うのだった。突然そんな奇行に走って驚いていたがすぐに冬雅も釣られて笑うのだった。

心が通っていると年甲斐もなく、そんなこと考えてしまった。

お互いにデートをしていると認識しているが恋人に至っていない。だからなのか仲睦まじいカップルを見ると無性に恥ずかしくなる。

ふむ、我ながらこんな羞恥心がまだ残っているとは思いもしなかったぞ山脇東洋よ。


「わ、わたし達も周囲から恋人に見られているんでしょうか。だとしたら嬉しい」


隣に歩いてボソッと呟く冬雅。

内容は、残念ながら耳が遠いという不滅の展開にはならず。この耳にしっかりと入った。


「そういえば冬雅。大学の方はどうだい?

いつも付き合ってくれるのは嬉しいけど、たまには学友とか遊んでもいいんだよ。

こんな俺と買い物なんかせずに」


「いえ、そんな事ありませんよ。

むしろいいんです。大学の帰りに堂々とお兄ちゃんにイチャイチャしたり告白が出来るんですから。

あっ、せっかくですので告白ここでしないとですねぇ。

お兄ちゃん大好き。将来もここに 一緒に並んで行こうねぇ」


赤面しても冬雅は告白をする。

その場で思いついて行動に移れるほどに胆力があるのは素直に凄いとは思うが、事前に来るのを備えていないので俺は額が熱くなるのを感じながら、それでも思考して応える。


「………それは、どうかな」


感情は歳を重ねるにつれて慣れて薄れるようなものだと思うが冬雅よりも、羞恥に堪えられずに目を逸らした。


「えぇー、ここでバトルみたいな回答。

もしかして、荒唐無稽になるぐらいに照れているのですか」


ここで訊いてくるのか。

俺はそれに答えれる余裕がないので違う話題にと誘導して広げることにした。

それから他愛の話をして3階フロアの通路。


「そうだ。冬雅いつも買い物の手伝いをしてくれる礼に化粧品をプレゼントするよ」


「へっ、プレゼント…ですか?」


唐突なことで冬雅は首を傾げる。

それは俺も、いきなり話を振ったのは自覚していた。

右には女性用の化粧品を取り扱った売り場があったので、せっかくだから自主的にやってくれるのを甘えるのも年上としては、どうなんだろうと感じての発言。

ただ、手伝わせるだけとデートするだけの間柄にしたくないし冬雅には、もっと我儘わがままになって自由奔放にしてほしい。


「ああ。ちょっと人には言えないバイトもしていたからなぁ。

一万でも十万の化粧品でも買ってあげるよ」


「人に言えないのってサファイア家で姉妹の遊戯ゆうぎの相手をするバイトのことですよね?

そんな言い方しなくても。

化粧品そこまで高いの使っていませんし、そこまで気遣いしなくていいですよ。お気持ちだけで十分です」


サファイア家で臨時的な執事としてのバイトはクリスマスを豪邸で催したペネお嬢様の気まぐれから発した言葉からによる。

こんなことで、多くの金額が入ることに情けを受けているように感じている。

その抵抗感から人に言えないバイトだと気持ちを抱いていていた。

その過剰分を少しでも担うように使用人として努めようと意識している。

自分の分を支払いには罪悪感が襲ってくるが、冬雅たちの使用ならペネお嬢様と仕える皆も許してくれるだろう。


「そんな訳にはいかない。

だから…とりあえず日頃の感謝ことで。

それじゃあ行こう」


「ええぇーー、考えるの放棄したッ!?」


スマートにはいかず、ゴリ押しをしてたなに置かれた化粧品を見ていくが、

どれがいいのか男性の俺からして分からない。

後ろを振り返る。強引であったが冬雅は困った表情を浮かべて、商品と俺の交互と視線を巡らして見る。

本当にスマートにいかない。

なら、ここで巻き返すとしよう。

しかし改めて商品を見るとブランド品なのか数十万もする。ただ1番高いのは効力は1番とは限らないので二番目に高い化粧品をを手にした、


「冬雅これなんか、どうかな?」


「はい?……にゅうじゅうまん!?

わ、わたし高い化粧たまにしか使わないですし。いつも使用しているのは、あれですよ」


どうやら出てきた言葉から高級の化粧品は使うらしい。

そして冬雅が手に取って愛用している商品も万はいかなくとも高い。

ほとんど一緒にいたから美意識は高いとは知ってはいたが使う物も高いのか。

意見を聞かずに強引にまた突破するか迷いながら、俺が選んだ応えは。


「よし、なら両方を買うよ」


失敗してもいいように愛用している分も含めて両方を選択することにした。


「両方はダメです!

お兄ちゃん気持ちは嬉しいですけど無駄遣いはよくないですよ」


「冬雅それは違うよ。

好きな相手のために買うことが無駄遣いなんてあるはずが無い!」


「あ、はい。

好きな相手のためなら無駄遣いじゃないですねぇ…お兄ちゃん」


「冬雅?」


勢いが削ぐれてうつむき始めた冬雅。

どうしたんだろうと言動を振り返ってみると思い至る点があった。それに気づくと「あっ!」と呟いて冬雅の俯いたことに少しは納得した。

足りない分は、惚れるまで毎日と告白していくと言って実行するほど積極性がある一方で予想されない想いを告げる言葉には弱点を

持っていることを。

そのあと二番目に高い化粧品を購入して後にするのであった。

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