第7話―契り結ぶクリスマスⅢ―

クリスマスはイエス・キリストの生誕日ではないが昔の宗教による事情から決められた。

聖書では記載されていない。

様々な祭が開催されていた日から25日と晩の教会で祈ることが本来のイベント。

しかし室町時代ほど、1552年さかのぼり布教活動していた方がミサ(神に感謝して祈願をする)したと記されており日本の最初とされている。

クリスマスは時代が経つにつれてミサからパーティと変遷へんせんされていた。

固定概念と化した本来の目的から歪曲していたクリスマス。

そんな盛り上がりたいという認識のクリスマスで俺たちは豪邸の敷地にいた。

金髪碧眼の美少女の片手にはマイクを握って言う。


拙者せっしゃここでの生活で文化の違いには常に驚いているのでござる。

ザビエルと共に日本に訪れられし同士の

コスメ・デ・トレースがヒノモトに概念を持ち込んだのですニンニン」


古来の日本を愛する彼女は語尾が特徴的。

すこぶる特徴すぎるけど、鈴を転がしたクリアな声。

きらびやかな長い金髪、淀みのない陽光に照らされた水面ごとく碧眼。

花恋と年齢が近い彼女はペネロペ・レードル・サファイア。この豪邸の令嬢さんだ。


「ペネおねえちゃん割愛してください。

歴史好きだから、もっと耳を傾けたいところだけど関係の無い話は」


「ええ、そうですね。

失礼しました。それでは皆さんカンパイ!」


「「「カンパーイ」」」


空いた手にグラスを上げて最後に敷地内に響き渡るボイス。

俺と冬雅たちは乾杯とグラスを同時に上げてご唱和をする。


「えへへ、お兄ちゃんと無事に祝えて…わたし凄く嬉しくて幸せです。

来年も再来年も一緒に居ましょうねぇ」


「ああ、そうだな。はい冬雅このハンカチで拭いて」


「あ、ありがとうございますゔぅぅぅ」


ポロポロと涙は、とめどなく流れるのと嗚咽にある冬雅。

初めて知り合った頃に比べると感受性が高くなったと感慨深くなる。

二年前と去年は色々とあった。悲哀から涙を流されるよりも歓喜して流れる方がいい。

冬雅の泣いている顔を見て心の奥から強くそう思った。


「お兄さんメリークリスマス」


左方向から真奈の声。振り向く前にグラスを持たない左手を華奢な手が包むようにして握てきた。


「真奈…メリークリスマス」


「ワタシただお兄さんの笑っている顔を見ているだけで心ポカポカして幸福感があふれて満たされて、凄く極みに立っている気持ちにさせられます」


「そ、そうなのか」


真奈は喜色満面となっている。

かなり好意のある言葉を面と向かって言っているのは分かる。

強いて言うなら多幸感が極まって酔っているようにみえる。

月夜の下で真奈は静かに優しく輝いている。


「また真奈さんに褒められて鼻の下を伸びている。もう、いい大人なんだからデレデレしない!」


真奈の後ろで苛立って指摘して注意をするのは花恋だ。デレデレしてなんかない!と言い切りたいところだがデレデレしていないと

断言が出来ない。

とはいえ全幅の信頼から笑顔をする真奈に

デレデレしないほうが難しい。一つの宗派が生まれるぐらいに神々しいから。


「そ、それよりも大人といるよりも同年代の花恋はペネお嬢様と猫塚ねこづかさんと遊んでいた方がよくないかな?」


「むぅ、少なくとも真奈さんよりも精神年齢は上だと自負しています!

そんなことよりも東洋お兄ちゃん。私を見てどうですか?」


その場で滑らかに回る花恋。

何をしているのかは読める。ドレスの評価を促している。この場に参加している皆はドレスやタキシードなど袖を通している。

例外があるとすれば普段着でいる俺とミニスカートというサンタのコスプレしている冬雅になるだろう。

参加していた花恋のドレスは知己であるサファイアから借りている。深紅のドレスは夜の中で、より鮮やかに目立って映える。


「似合っているよ。花恋とても可愛いよ」


求められたなら思ったことを、そのまま言葉にして言った。


「え、えへへ。そうですか…似合っていますか。どうですか可愛いですよ冬雅さん、真奈さんどうですか!」


自惚れと思われるが花恋は、おそらく俺に好意を抱いている。絶対な自信はなく確信とまでいかなくても判断材料はたくさん。

腰に手を当てて花恋は無邪気な笑みで冬雅と真奈の順で視線を動かして主導権を取ったみたいにして言い放った。

ライバル視しているの隠そうとしていない。


「やったねえ花恋。わたしも深紅のドレスかわいいと思うよ」


「うん。彼岸花ヒガンバナみたいだよ」


だがしかし剥き出した感情には、そっぽを向いて…いや違う。

冬雅は分かっていながらも敵意として返さず似合っているドレス賞賛。

真奈は気づいておらず比喩的な表現をして賞賛をする。ここでのアニメや漫画などの

ヒガンバナの花はよく出てくる。

さて鬼を退治して青いヒガンバナでも探そうとする首魁しゅかいを探すか…と

俺は現実逃避。

ともあれ二人は大人の対応を取っている。

成長したんだなと俺は、しみじみなる。


「マジで感謝だよ!敵視している私が小物みたいで嫌になりますよ。言っていいのか迷っていたけど今の勢いに乗って言いますけど、冬雅さん変態だとしても、どうして外でもコスプレしているの」


「……さ、さすがに変態と突きつけられると。いくら氷のわたしでも傷つくよ」


静かに冬雅はショックを受けるのであった。

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