第5話―契り結ぶクリスマス―

クリスマスイブのスケジュールはデートでめつくされていた。

明日からの予定を他人事のように感じているのは、あまりにも現実味をびていない。もう1つ、恋人がいないからだろう。

冬雅と真奈の二人は年の離れていて、成人になるまでは応えを保留にしている。

ほとばしる二人の強い想いにぶつけられて

現在は恋人とまでいかなくても近い位置にあったりしなかったりする。

要するに…もう俺さえも関係性を口で説明するには難しいほど進行となっている。

そして12月24日――

クリスマスイブ。

冬雅と出逢う前だったら呪詛じゅそを唱えたくなる日では、あったがそれが遠い昔となった。


「…うそ…だろッ!?」


「パーフェクトゲームですねぇ。フフっ、

お兄さんこれでワタシの連戦連勝!」


その日、俺は真奈とゲームで遊んでいた。

それも数十年前になるロックマンエグゼ。

遊んでいたシリーズは4。

この4ではレッドサンとブルームーン二つがあり、ソウルユニゾンというパワーアップやチップという武器などの専用がある。

ちなみに何故かレッドサンはチップでは攻撃力は高いけどブルームーンの方はソウルユニゾンは攻撃力は高い。とくに同じ属性のチップをチャージすれば威力が倍になるのは

強力すぎる。

今ではゲーム機のスイッチでダウンロードして遊べるが、ここは敢えてゲームボーイアドバンスで遊んでいた。

小学生のときに遊んでいた俺が持っていてもおかしくは無かったが何故か真奈も持っていた。ゲームオタクとなれば一つや二つも持っているものだろうか。


「おかしい…こういったゲームでの対戦は通常攻撃などで必ずダメージが入るのに、

ノーダメージは…おかしい」


ともあれボロ負け。

どんな腕の差があっても必ずダメージは入るようになっている。

ロックバスターの速度は肉眼では避けれないほど速いのと弾切れなど制限が一切ない。

それを真奈は呼んだかのようにドリームオーラとインビジブルの展開と連続エリアスチールで完敗を喫した。


「すごく楽しかった」


「そりゃあ絶対に不可能な勝利すれば清々しいんだろうね。よし、次は何をする。

外で散歩とか買い物とか?」


クリスマスイブの午前までの間、真奈と付き合おうことに話になった。そのあと午後は冬雅と付き合うことで話をつけた。

いわゆるクリスマスデートなのだけど真奈は

家で過ごすと言った。


「それもいいですけど、やっぱり時間がもったいないから却下。

さて今度はワタシ個人的に遊びたいゲーム。アンダーナイトインヴァース家庭版でファイトしましょう!」


「それでいいなら」


本人がそれでいいなら何も言うことは無いし従うけど真奈は本当に楽しんでくれているのか不安だ。

たぶん、いや女の子なんだから外で絶景を観ながらとかのデートを楽しみたいはず。

それも日常と変わらないデートを。

そのゲームディスクは事前に用意していたらしく泊まり用のカバンから取り出す。

プレステ4のディスクを変えて真奈はコントローラー二人分を持って近寄る。

無邪気な笑顔を向けるとコントローラーを前に突き出して渡すのを一瞬だけとはいえ見惚れてしまった。

くっ、もう29歳なのになんて思春期みたいな反応をするのかな?


「ワタシこれで非常に満足を感じているのですよ」


「えっ?満足」


コントローラーを受け取り、俺はオウム返しするように呟いた言葉。


「こうしていられるのも今だけかもしれませんし…もし、その時が来たらワタシ後悔したくない。だから、お兄さんと一度は遊びたいゲーム。それとアニメを一緒に感じて共有していきたい。

…つい、口にすると恥ずかしくなってきた」


薄々と感じていたのだろう。

その時が訪れるのは約束した成人まで応えを置いておくという時間稼ぎを。

苦肉の策として出した案。本来これを提案した俺の計画は冬雅や真奈に、いっときの恋愛感情を冷めて若さ故の過ちと悟らせるのが目的だった。

その提案したのは彼女たちがJKだったとき。

恋愛は長くて三年しか持たないし覚めるとされる言動も多くをしてきた。

それでも、より想いが募ってきた。

俺も含めて。それは後で良い思い出として語れる。いや、そう納得しないと前に進めないだけかもしれない。

こんな重要な責任を伴うことを選択をしなければならない。いつか、必ずに。


「そこまで告げられたら俺も何もしないわけにはいかなあなぁ…真奈が最高のパートナーと思っている」


「さ、最高のパートナー?」


突然の言葉に瞬きすると、おさなそうに首を傾げる真奈。

いつも手を握っていて言葉を読まれたりとされれば最高のパートナーと言っているようなものだ。


「ああ、最高のパートナーだ。

絶対に真奈のような人と絶対に逢えないだろうし、ここまで心を読まれたりされたことは無いと思う」


「最高のパートナー…

それだったら、お兄さん。来年にはワタシを選ぶのですか?」


求められるように、すがるように真奈に。足元が崩れたかのように、その先を紡ぐには勇気を起こさないとならない。

相手の期待を違うことを告らないとならないのは正直に言って辛い。


「…冬雅を選ぶと思う。

少しカッコつけるけど、冬雅には

揺るがない信頼を持っているんだ。

裏切らないとか、妄信的なものと違う。透き通った信頼を」


こんなことを口にしてはいけなかったけど応えをつけるといって予定よりも早く口にしたことの後悔。

予定という線路を一直線には進もうとしない、必ずといっていいほど感情が割り込んできて止まったり別の方向へと変更させようとさせる。


「………そうなんですねぇ。

この話は終わりにして、そろそろ遊びましょうよ」


気丈きじょうにも真奈は何事も無かったように変わらぬ笑顔を作って促した。

その変わらぬ笑顔を作るの裏で、どれだけ堪えたのか俺は窺えることは出来ない。

泣き叫ぶに等しいほど苦しいんでいるとしか理解することしか出来ない。

そして時間が経過して正午を迎える。

玄関まで送ろうと思ったけど、帰り道が不安になったので真奈を家の前まで送った。


「真奈また明日」


「うん、また明日……お兄さんのこと

大好き。ハッキリとお兄さんの口から冬雅を選んでいると聞いたときは諦めようと思ったけど。劣勢になったの今から始またことじゃなかったと遅まきながら気づいた。

成人式までには、お兄さんがワタシをパートナーよりも存在だって言わせてみせる」


「……」


頭が真っ白になった。

言葉を失って茫然自失となり真奈が自宅に走って入るの見ることしか出来なかった。

どうやら真奈は素直に敗北を受け入れるほどには無いようだ。

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