第3話 カツ丼
大きな爆発音とともに僕のたるんだ乳房が大きく揺れた。このお話とは全く関係のない情報ある。
「ライトニング!」
河川敷につくとあの男が雄たけびをあげ、ドラゴンと奮闘していた。
彼は光を失いつつある剣を振りかざすと月夜に輝く刃があのドラゴンを襲った。しかし、無残にもそれはドラゴンにはびくともしない。過去にドラゴンを葬った一撃も今は豆鉄砲である。勇者は力尽きたように地面に這いつくばった。
「クソ勇者ぁ!」
僕は叫ぶと同時に勇者のもとへ駆け寄った。うますぎる棒(焼肉味)たった30本であの凶悪なドラゴン2体を倒せるとは思えない。早くこのカツ丼を届けなければ彼は本領を発揮する前にお陀仏である。しかし叫んだせいでドラゴンがこちらをとてつもない眼光で見つめている。やってしまった、ついノリでかっこつけてしまった。このままじゃ勇者を助けるどころか僕が塵と化してしまう。いったいどうすれば。
「よく来たぁ、クソガキ!」
視界から勇者が消えた瞬間、手に持っていたカツ丼の質量が瞬く間に消えた。手のほうを見ると、満腹の笑みを浮かべたひとりのおっさんが汚いゲップをしていた。
「時にクソガキよ、なぜ助けに来た?俺はもうお前の薄汚い顔なんてもう見なくていいと思ってたのによ」
「なんてひどいことを言うんだ!それでも勇者かよ!でも・・・」
「あんたには助けてくれた借り、あるからね」
「ではこの借り、きちんと返さなくてはなぁぁぁ!」
あんなにボロボロだった鎧は恐ろしい速さで修復されていき、彼の持つ剣は光を取り戻し、暗かった夜の河川敷を明るく照らした。これが本来の勇者の力なのだろう。
それを良しとしないドラゴンは一瞬にして勇者に襲いかかった。鋭い爪が勇者に振りかかったが、勇者には効かない。それどころかドラゴンの爪は簡単に折れてしまった。怒り狂うドラゴンは口を大きく開けたとおもうと口内が赤く光る。次の瞬間、河川敷は赤黒く燃え盛る灼熱の炎に包まれた。河川敷の芝は燃え盛り、焦げ臭さが鼻にばかり来る。
がしかし、勇者はそこに立っていた。ドラゴンはその後も嚙みついたり、尻尾でたたきつけたり、また炎を吐いたりと様々な攻撃を繰り出したがいずれも勇者には届かなかった。
「ライトニングッ!」
刹那、視界が真っ白になった。暖かい空気が顔にかかる。そして大きな爆音とともに爆風がまた僕を襲った。ドラゴンの悲鳴が聞こえてきたが、それも一瞬にして消えた。
爆風が運んできた土埃が空中に舞い終わり、あたりがよく見えるようになった。
夜明かりに照らされた勇者ヴィルタスはたっていた。ドラゴンの姿はない。静かな静寂が河川敷に戻った瞬間であった。
~次の日~
『おはようございます、ご主人様ぁ~!』
朝のアラームが僕の部屋に響き渡る。僕の私物はほぼ母に売却されてしまったがこの『魔法少女JK!サキちゃん目覚まし時計!~メイドVer~』は僕に残された数少ない宝物である。
スイッチを切ってベットからいやいや体を出した。時計は9時過ぎを指していた。学校はそろそろ1時間目の授業が始まるころだろう。
階段からダンダンと足音が聞こえてきた。母が起こしに来たのだろうか。だとしたら遅すぎる。親として我が子を思いやり、もう少し早く起こしてほしいものだ。(といっても起きる保証はない)
「おはようございます!勇斗ぉ!」
野太い声が僕のさわやかな朝の時間をぶち壊した。ついでに僕の部屋のドアもぶち壊された。
「おはよう、って言ってんだろぉがぁ!」
エプロン姿のゴリゴリマッチョマンのイカした外国人が僕の部屋のドアを蹴破って大胆に侵入してきた。その姿はまさにヤクザやマフィアである。僕はパジャマから着替える間もなく部屋からつまみ出されるとリビングに放り出された。
「おはよう、勇斗」
聞きなれた声の主は我が母である。初っ端からインパクトが強すぎたせいかいつも聞きなれている母の声は僕の心を安心させた。一応言っておくが僕はマザコンではない。
テーブルには3つ料理が用意されていた。母と僕と、
「ではいただこう」
変態マッチョの勇者ヴィルタスの分である。しかもなぜか一人だけ量が朝飯の量ではない。ご飯はどんぶり、みそ汁は鍋まるまる、おかずの目玉焼きと焼き鮭は5つとフードファイターのような献立である。これを朝から見るとなると胃が痛くなる。
昨日の事件以来、勇者ヴィルタスは僕の家に居候することになった。ドラゴンを倒した後、パトカーが数台河川敷を囲んでしまったので面倒くさいことにならないようにかくまった。(こいつが警察に連れていかれたらややこしくなる)初めて家に入れたときも母はまんざらでもなくヴィルタスの居候を許可してくれた。
「母殿、今回はこの家に住まわせていただきありがとうございます。自分の魔力が完全に復活するまでの期間ですがどうかよろしくお願いします」
猫を30匹ぐらいかぶっているクソ勇者ヴィルタスはどういうわけか魔力的に消耗しているらしい。後で聞けたら詳しく聞くことにしよう。
朝食を食べた後、自分の食器をキッチンの流しに置き自分の部屋に戻ることにした。
「勇斗、今10時なるけど学校どうする?」
「休むでござんす」
そういうと母はそう、といいキッチンへと戻った。
僕の部屋に戻ると、後ろからヴィルタスが何も言わず入ってきた。しまったこれでは僕がひそかに隠していた秘蔵の同人誌を堂々と見れないではないか。しばらくヴィルタスと気まずい時間が流れた。
そうだ、彼の過去について聞くことにしよう。
「おい勇斗、学校とはなんだ」
会話のネタを切り出したのは意外にもこいつだった。もしかしてこいつは学校というものを知らないのだろうか。
「簡単に言うとモンスターどものたまり場」
それを聞いたヴィルタスは目の色が変わった。
「勇斗、その『学校』という場所を今すぐ教えろ」
勇者様の恩返しっ! VAN @loldob
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