ドドドドドドドドドドドド
戦争が終わって二ヶ月が過ぎた。
今も、たまに日記を書きながらも変わらぬ日々を過ごしていた。
「カナミコチャンネルだよぉ〜。今日は頼れ情報室の長。手綱さんに突撃ぃ!!」
女性陣も変わらず、活動を続けていた。
「え?好きな人?好きな人ですか…それは…か…か」
「あ〜なんかガチっぽいんで次行きますねっ!」
「え?あ、ちょ…」
神仇さんとは週に一度、模擬戦をしながら戦闘経験を増やしていった。
調べ物の方はというと、能力の起源にまつわるところだけが不自然に切り取られている。といったことしかわからず、肝心なところがなかなか巡り合えないという。
「今日だっけか?陽助の作戦実行日」
「…はい。どうしても一人で行くと言ってましたけど…」
あの日の集まりの後も、定期的に集まっては報告しあってはいたが、特に進展はなかった。
僕としても、ボスのことは少しづづわかるようになってきたものの、結局ボスの奥さんの正体はあの日の話以上は進まなかったわけで…
食堂の方に行くと今にも耳が倒れそうな狐巳さんがいた。
「赤隥ぁあああ。私の相談にのれぇえ」
「いいですけど…どうしたんです?」
「ちょっと前に戦争みたいなのあったよな」
「ありましたね」
「なんかあっけなくって、勝った感じがしなかったとかだったんだろ?」
「まぁ…僕には最初から何が何だかって感じでしたけど」
「それはいいんだ。だがな」
「だがな?」
「私の出番がなかった」
「あ…」
「みんなが無事に帰ってくるのは予めわかっていたからな、手の込んだパーティーでもやろうとしたんだよ」
「でもたった一週間で帰ってきてしまった」
「うむ。しかも、みんなやることなど覚えておらなんだ」
「そうですね。僕もすっかり忘れてましたし」
「おいっ!」
「いてっ」
かなりいい威力のチョップをくらう。
「というわけだ、何か案を出せっ!」
「そう言われましても…」
レナ…なんかない?
『そうですね…今のところ電力は問題ないですし、他に何か別の口実でもあればいいんですけど…』
他の口実か…
僕が入った時みたいに誰か入ってくるとかあれば…いいのかな
『緊急伝令 緊急伝令。我が団員の咲楽 陽助が自由組を壊滅。繰り返す、咲楽 陽助が自由組を壊滅』
ほんとにやったんだ…
『祥。支給作戦室に来いとのことです』
え?僕だけ?
『いえ。神仇さんに嶺嶋さん、椎倉さん、奏音さんも召集がかかっています』
うわぁ…まじか
「ごめん狐巳さんっ!また後で」
「あ、ちょ、逃げるでないわ!まだ聞きたいことがあるんじゃ!」
作戦室の前に来ると、すでに扉は開いていて、皆さんは奥のテーブルを囲って椅子に腰掛けていた。
「さて、どうしようか」
ボスがいい笑顔で言ってきた。
「まぁ…いいんじゃね?」
「ほう」
「陽助は単独行動を認められてるしよ、話聞く限りだと別に誰も死んでないんだろ?だったらなんも言う事ないんじゃないか?」
「まぁ…そうだね」
「何か、気になることでもあるのか?」
「いえ。…ただ、世の中を乱す行為というのは頂けないと言いますか…ね?」
「なんだ?自重しろってか?」
「そう捉えられたなら、そうなんですね。あまり勝手に動かれるとこちらも動きにくいですから」
…ん?
それから少しの間気まずすぎる沈黙の後、結局何かのお咎めはなく、話は終わった。
『私がいない間に何やってるんですか!?』
まぁ…色々ね。後でしっかり話すんだけど、当分の間は全部の会話履歴を暗号化してほしい。頼めるかい?
『わかりました』
「さて、陽助はまだ帰って来てねぇが…いいだろう」
そうして、陽さんの部屋に入ると、知らない人が数名机を囲んでいた。
「ちーっす。やっば、えぐべっぴんさんしかいねぇじゃないっすか、アニキ」
「だから、俺のことはアニキじゃなく、陽さまと呼びな!」
「いやっす、アニキ。うちらの頭をやったんですから、アニキはアニキっす」
…何が…なんだか…え?
「あぁ。紹介しておかないとね。じゃあ奥から順に言ってって」
「どうもっ!もと自由組、副組長の夏宮 伊三郎っす」
「同じく、自由組副組長の柊 真弓 よろしく。」
「組員の橘 栄枝です。サクラさんのかっこよさに惹きつけられてここにきましたっ!」
「…秋津 言。よろ」
「ってなわけで、もと自由組の4人が新たに団に入るよ。よろしく〜」
もう…何でもやるじゃん…陽さん…
「おい陽助」
さっきから黙っていた師匠が口を開いた。
「こいつら…強いのか?」
あああああもう。先輩達は揃いも揃って…
「そうだな…まぁ、実際に見てみるのが早いんじゃないか?」
「ねぇ、陽くん。ほんとに4人だけなんだよね?これ以上拾ってきてないよね?ね?」
「琴…ごめん…」
「え?」
「元自由組組長の椎倉 仁だ」
「陽くんのばかああああああああああっ!表でろぉ!」
「…はい」
「陽くん?あれだけ言ったよね?めんどくさいやつだから、最悪殺してもいいって。何がなんでも連れてくるような真似しないでって」
「琴ちゃぁん。そりゃないぜぇ」
「娘を思うなら、現れんなよハゲ親父っ!」
「いいじゃあん。お父さんとの再会だぜ?少しぐらい厄介かけてもさ…ね?」
「厄介って自覚あるなら、どっかいってて!」
今までに見たことない、琴さんの一面を見た。
道中はそんな親子?喧嘩しながら、いつもの模擬戦会場に行った。
「じゃあ、祥。相手してこい」
「え?」
元組長を名乗る琴さんの父と思われる人を除く4人と相手取ることになった。
「あなたが、最強の新人っすね?」
「いえ…」
「あの時の戦場で、一人無双していた子ね?」
「…」
「君は確か…」
「もう、こっちから行きますね」
これ以上何か言われたら、精神が持たんっ。
「こいっす先輩」
「先輩いうなっ!」
いつもの師匠と相手する時と同じような力加減で殴りかかった。
が、結果はあっけなかった。
というのも、一撃入れた後で立っているのは夏宮という男ただひとりだった。
「すごい威力…だね。痺れちゃうよ」
「あの…まだ、抑えてます。」
「なんだ、対して強くないんじゃないか?」
神仇さんが鋭い言葉を放った。が、その時だった。
ムクリと倒れた人たちが立ち上がり、攻撃を仕掛けてくる。
相手がどんな能力を仕掛けてくるのか…
とりあえず回避を…
「かべっ!」
柊さんがそういうと、自分の体の後ろにぶ厚い壁ができた。
「さっすが、壁」
「ナイス壁」
なんか、こういい連携が取れているようにも見えるが、なぜか柊さんの表情は暗い。
「そうですよ…私は…壁。壁…」
じっと、カナミコの胸元を見つめる柊さん。
「…私の山はどこかしらね」
戦闘中に何言っってるんだ?
かくいう僕は、壁で逃げ場をなくすも他の人からの、攻撃も全て回避した。
ぬかるんだ地面だったり、視界を遮られたり。
多分、この人たちの能力は体力を代償に周りの環境に干渉するものなんだろう…
この後、何分か攻撃せずにじっと相手を観察していくうちにそれは確証となった。
「あの、陽さん。この人たちって」
「そうさ。後方支援が得意な奴らさ」
「まぁ、俺以外の戦闘員はみんな旅に出ちゃったからね」
「そういうこと…ですか」
そういうわけで、今度は元組長と1体1で戦うことになった。
最初は能力なしで5分。
正直、ギリギリ耐えたというのが適当だった。
5分経過で、能力を使うとなった時だった。
丹田に力を込め、拳を振るう。
が、一向にかすりもしない。
10発、20発。コンボで攻めても全く当たらない。
「どうすればいいのか…」
「まぁ、僕に攻撃当てれば相当だよ」
「…絶対当てる」
今度はほぼ同タイミングで2発。
「おっ」
当たらなかった。
が、多分避ける位置に拳を置きつつ、一気に押し込む…
これならいる気がする。
結局、今度は上に…
「もうあれしか…」
最近になってようやく思いっきり一発かます技。
…なんの能力なのかわかんないけど…当たればいける。
最速の一撃を…叩き込むっ…
足から順に流れるように力を込めた。
「え…」
初めてまともにとらえた一撃。
前に陽さんとやった時よりも確実に強くなっていると思っていたけれど…
拳と拳がぶつかり、押し負けた。
畜生…
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