陽助の見たもの
朝の食堂で、僕と陽さん。師匠と奏音さんにミネさんの5人が集まった。
「いやぁ…なんかこう…改まってこんなことするのは照れるね」
「へ〜。貴重だねぇ、こんな感じの陽くん見るのは」
「ここに、集まってもらっておいてなんだが僕の部屋にきてもらっていいかい?そこには琴もいるんだ」
「いいけど…やっぱりあなたと琴ちゃんって!?」
「いや、ちょっと大勢の前では言いたくないことだ」
女性陣がご馳走を見るようなはしゃぎようだけど……
「それと、デバイスの電げ…」
「おはよう諸君。朝からどうしたんだい、なんか、面白そうじゃないか」
「ボス!?」
「ははっ。ここんとこ色々と忙しくてな」
「ボス。それは、これに関係することかい?」
陽さんが銃弾を手に持ちボスに見せた。
「むうっ。まぁ、そんなところだ」
「そうか。お疲れ様ぁ〜」
一瞬だけ異様な空気が流れるも、結局それ以上ボスとの会話はなかった。
「いらっしゃ〜い。適当に座っててよ。陽助がお茶出すからさ」
「ほんとに琴ちゃんいた」
「ってちっちゃ!」
「ねぇ…あなたの能力ってさ」
「いいいいいわ言わないでくだしゃい」
「ねぇ、お茶って必要?」
「陽くんが呼んだんでしょ!!お茶も出せないダメ男になっちゃうよ!!」
「あぁ。もう、ダメ男ってバレてるからさ…いいじゃん」
「だ〜めっ!和tしが、陽くんの淹れたお茶…とにかく作って!」
「へいへい。あ、みんなデバイスはOFFにしてもらえると助かるんだけどさ」
入って早々情報過多すぎる…
デバイスの電源をOFFにして少し大きい机をみんなで囲った。
琴さんもいつの間にか元の姿に戻り、陽さんの淹れた紅茶をいただいた。
「ま、話たいのは二つだけ。僕のことと、この団…ボスのこと」
陽さんの過去。数日前に食らった銃弾がトリガーとなって断片的にしか覚えていなかった入団直前の日のことを思い出した。
その時の友人が軍によって能力を洗脳によって無理やり発動されて以降銃の存在自体に価値がなくなり、銃を用いたあらゆる攻撃ができなくなった…と思われていたのにも関わらず、何者かが発砲。
当たったのが陽さんだったため全くの無傷だったものの、狙って当てたにしては色々と不可解な点がある。
そして、あっけなく終わった戦争の本当の狙い。
これに関しては信じ難いが、能力の存在自体による消化試合だと考えられる。
そして、それらのすべてを知った上で密かに軍…あるいは国と共謀して、なんらかの企みをしている可能性がある。
「まぁ、僕の中での悩みはこんな感じだ。だから念のために、ここによんでデバイスも切ったってわけ。ボス…あの男は何を考えているのかわからん。ここ最近のことの裏に必ず奴はいる。そのはずなのに目的がさっぱりなんだ。」
や、ややこしすぎる……。
力になるとか言ってたけど、何ができるのかさっぱりわかんねぇや
「まぁ、話せてだいぶ楽になった。多分俺らはこれまで通り何も変わらず過ごしていけるとはおもうが…今日話したことを覚えていてくれると助かる」
「ねぇ…お菓子ないの?」
「え?」
「あ、紅茶美味しかったからおかわりちょうだい」
「はい?」
「あ、俺も頼むわ」
「あのぉ…お開きの流れは…」
「あ、じゃあ僕もお菓子食べたいなぁ」
「いや、じゃあって…ああもうわかったよ、出せばいいんだろうだせば。太っても知らないよ?」
「へ〜。女の子はお菓子で太らないんですう」
「男だって、お菓子で太らねぇよ」
「ええ…」
そうこうしながら、ここにいる6人でこの団について、ボスについて、世界について調べる活動を開始した。
デバイスに記録はするものの、暗号化しつつ本部には送らないようにすることで、できる限りボスから見つからないようにすることで決まった。
最初思っていたのとは全然違う流れになったけど、どこか胸が高鳴るというか、踊るというか…そんな感じがして、気持ちがよかった。
「じゃ女子組で聞き込み調査をするわね」
「俺は、適当に資料室でも覗くとするわぁ」
「祥にはボスをつけてほしい」
「僕は…ボスに密着取材ってことですか?」
「いや?普通にストーカー」
「犯罪じゃないですか!?」
「大丈夫大丈夫。この中で唯一の未成年なんだから」
「わ…わかりましたけど、陽さんは何をするんですか?」
「自由組を潰そうと思う」
「は?」
「それぐらいやれば、ボスもいい感じにボロ出るかな〜って」
「それで潰されるんですか!?」
「まぁいけるとは思う。流石にデバイス無しはきついから準備しないとだけど」
潰した後どうするんだろ…
「というわけで、なんか僕もやること見えたので解散っ!」
いつもの感じに戻った陽さんだったが、前にもましてチャラさと頼り甲斐のミックスジュース感が強まっていた。
さて、ボスをつけるって言ってもなぁ…
そもそも、あんまりボスを見かけないというか。
ふむ…
ま、いつも通りいろんな人の手伝いでも言ってればタイミングあるっしょ!
戦争前と変わらず、トレーニングと手伝いをする毎日を過ごし、三日に1度ぐらい見かけるボスを追ったりもしたが全く掴めなかった。
女子組改め、“カナミコ”と名乗っているらしいが…
そんな彼女らは動画撮影と題して、いろんな団員に10の質問をしているそうで、デバイス間コミュニケーションツールの機能を使って誰でもそれをみれるようにしているんだとか。
実際はプラスで何個か質問していき、団の中での噂だったり違和感。恋模様から馴れ初めまで、幅広く取材しているとかで忙しなくしている。
神仇さんはあの日以降会わないが、どうやら資料室に籠っているらしい。
陽さんはここんとこトレーニングルームでデバイスをつけながら色々としていたし…
そろそろ、ボスに接近したい…
「うおっ!?」
曲がり角のところでボスとぶつかった。
「おっ。前見て歩けよ〜」
「は…はい。すいません」
珍しい。いつも誰かしらといるのに、一人だ…
怪しいっ!!
気取られないように、こっそりついていった。
…お墓?
入団して間もない時に一度連れてきてもらったっけ…
施設と施設の間にある広場で、いろんな人がそこで眠っている。
ボスは、そこを真っ直ぐ進み大きな木に手を触れ目を閉じていた。
「ボス…?」
「どうしたんだい?もう、迷子はしなくなってきただろう?」
「ボボボボボスっ!?」
バレてた!?
「ちょっと、付き合ってもらいたいんだ。いいかな」
「は…はい」
怒られる…
「ちょっと今日は気分がいいですから。そこのベンチでどうだい」
サクッと殺される…
「は…はい。お手柔らかにお願いします」
「ははっ。そんな畏まらなくていいよ」
あれ…殺され…ない?
「なんか君を見ているとね。昔のことを思い出してしまうんだ」
ベンチに腰掛けた二人。実はこの風景を遠くから睨んでいる者がいた…が、その人の話は次で。
「私に奥さんがいるように見えるかい?」
「い…いえ。見たこと…ないですし…」
「まぁ。そう思うだろうねぇ…いたんだけども」
「あ…っ…」
「それはそれは美しい。僕には不釣合いなほどの…存在だったんだ」
「…」
「その方と出会ってから今日まで。僕は彼女のことを忘れたことはないよ」
「すごく…愛していらっしゃるんですね」
「それしかできることがないから。非力な僕なんか…ね」
「ボスが非力って…そんなこと…」
「少なくとも彼女に僕は勝てないだろうな…」
「そんなに強いんですか!?もう、世界一じゃないですか…」
「世界一。まぁ、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「団みんなとどっちが強いのでしょうか…」
「赤隥君以外は負けることはなくとも…絶対に勝てないだろうね」
「そんなに!?」
「ああ。まぁ、じきにわかるさ…」
そう言い残し、またどこかへ行ってしまった。
「私を呼んだのは君かい?」
「…はい。」
「私を呼ぶってことがどういうことかわかってるの?」
「一応は…わかってます」
「そう。で、何が望みなの?金?力?」
「あなたの全部」
「はい!?」
「僕はあなたが欲しい。一眼見た時からずっと好きでした」
「ちょっと待とっか?ね?」
「待てません!僕はすぐにでも、あなたの返事が聞きたい。あなたが僕をすいてくれるかどうか。それを知るのが僕の望みです!さぁ!」
「いや、普通に無理」
「そこをなんとか」
「だったら、お願いで無理にでも手に入れればよかったじゃない」
「それじゃあ貴女が報われないでしょう?」
「はいぃぃ?」
「絶対にあなたに、あなたの心に、好きと言わせたいんですっ!」
そうして、ある若男のプロポーズ祭りが始まった。
ある日は花を、ある日は手紙を、ある日は宝石を。
嬉しそうに抱えて届け続けた。
一向に好きになってくれなくとも、男は嬉しそうにいろんなものを捧げ、時にいろんな話をしに行った。
そんな時間をひたすら続け1年以上が経過した。
とうとう彼女は心を開く。
「もう、貢がれ続けるのはごめんだわ。今度は私が好きになってyryからかくごしろっ!」
………ちょろかった。
ゴホンっ
彼女と壊れかけの世界を旅した。いろんなものを見て、困っている人を助け、大海原を超えて。
男も相手も、心からの幸せに手をかけていた。
でも、そんな日々は長くは続かなかった。
「最後まで、僕は君を愛し続けるから…」
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