スヤァ(_ _).。o○
よっ!
階段から飛び降り、
デバイスが通常状態ででも使えれば…
最下層に行くとミネさんのデバイスが置いてあった。
周りには小さいナイフが散乱している。
奥で何やら震えているものがあった。
「…ミネ…さん?」
「しょしょしょ祥ちゃん!?たたたた助けてくんない?」
「え?」
「そそそそその辺にくくく蜘蛛っ蜘蛛が…いるのっ!」
「この辺ですか?」
特に見渡しても蜘蛛らしいものは見当たらない。
「っす〜…いないっすね」
「うそよ…絶対いたわ。こう足がたくさんっ…うわあああああああ」
思い出して一層ガクブルし始めたミネさん。
よくみると彼女の足元に黒い影が動く。
下…あ、見ちゃいけないやつだ…
じゃなくって、上か!
危うく絶対領域のその奥を見そうになったが、多分今はそんなことをしていい感字じゃない。
明らかに毒々しい蜘蛛が最下層の天井に張り付いていた。
「こっわ…」
「い…いたの?」
「あ…見ちゃダm」
上を見上げたミネさん。そのまま意識が飛んだのか、ピクリとも動かなくなった。
「ここで下手に争うのは怖いなぁ…」
ちょっと気恥ずかしいがミネさんをお姫様抱っこしながら、階段を駆け上がる。
…デバイスは…後で回収すればいいか
『致し方ありません。緊急モードに移行させます。目標ポイントを指示するのでそちらに急行してください』
え?あ、はい!
視覚が一瞬白光りし、眼前に赤いラインが浮かび上がる。
「このまま進めばいいんだな?」
少しづつコントロールできるようになった能力を使い、後々に響かない程度の速度で駆け巡る。
途中で壁を蹴り上がったり、片腕を自由に動かせるようにしないと登れないようなところもあったが何とか目的地につけたようだ。
「で?次は何を?」
もうすでに精神的には限界…
『7秒後に対象“蜘蛛”が来ます。デバイスもくっついていると思うので、いい感じに倒しちゃってください』
「はい?」
『3…2…1…』
え、あ、ちょ
近づいてくる影になりふり構わず殴った。
目の前でかなりグロテスクに飛散する蜘蛛さん。
ミネさんのデバイスといえば、どうしてそうなったのか検討もつかないが、飛散する蜘蛛さんに紛れて飛んできた。
わぁ…なんか、うまくいってる。
『よかった。予想通りになりましたね』
あ、え?これも全部想定通り?
『はい。代わりに“嶺嶋 静雅“のデバイス“フーリ”の電力は残り3%ですが…』
あらま…
『なので、一旦“神仇 日暮”との合流を提案します。そこで次の行動を決めるのが良いかと』
オッケー
『あと、私もフーリの分のデータ処理をしなければならなくなったので、当分の間は省エネ状態でいきたいと思います。できれば3時間以内に充電して欲しいです』
わかった!
ミネさんのデバイスをカバンに詰めこみ、床を見ないようにしながら外へ向けて駆け出した。
幸い現在地が見覚えのあるところだったので、すぐに外に出ることができた。
さて…どこにいけば師匠いるだろうか…
正直そろそろミネさんをどっかで寝かせたい。
なんかさっきから、心なしかあどけない表情に変わってきているような気もするし…
師匠を呼ぶには…
「あ、こんなところにプロテインっ!」
「何?野生のプロテインだと!?」
「やっぱり来たっ!」
「お?でどこに野生のプロテ…って、どうしてそうなった!?」
「ってことがありまして…」
「あ〜…何ともまぁ、情けないやっちゃなぁ」
「あはは…」
道中ことの経緯を説明しつつ、いい感じのキャンプ地があったらしいのでそこに向かうことになった。
「にしても…なんか、ミネ…幼くなってね?」
「ですよね!」
「もしかして…」
突如、神仇さんがミネさんの頬をつつく…
「ちょ!流石にそれは…」
「いや、よく見てみ?」
ん?なんか隙間が…
「やっぱそうだったか」
「やっぱり…とは?」
「全身アーマーつってな、体が大きくなって動くのも楽になるっていう結構便利だが扱いの難しい代物があるんだよ。まぁ、こいつ器用だからな、1日中とはいかなくともかなり長い間使えるんだろう」
「へ〜。便利そう」
「ま、だからこいつは二種類の服を持ってたってわけだ」
「…んん!?」
「嫌な、タオルでも取り出そうと思ってカバン開けたらよ?1番上にミネの服が入っててな」
「あ〜」
いや、それでもサイズまでわかるとは…
「あ、ここだここ。別段、外敵とかいるわけではないが一応な。見晴らしもいいし、仮設トイレも近くに作れるし、川もいいぐらいの位置にある。床が草なのも良いだろ?」
「なるほど。あの、川から良い位置っていうのはどういう…」
「山は天気が変わりやすいからな。大雨でも降った日には川の近くだと、寝てる間に服が濡れかねん。そうすると気持ち悪いだろ?」
あ〜。服ね…。まぁでも、川辺は割と危ないんだな…
「どうする…先、飯でも食うか?」
「僕はまだ、お腹ぺこぺこってほどではないんで、ミネさんを寝かせたいです」
「それもそうだな! じゃあ俺が見本にテント建てるから、それ見ながらミネの分建ててみるか?」
「はい!」
まずは、地面にこれを敷いて…
10分が経ち、骨組みやら何やらが完成し始めて見るテントの形に出来上がった。
僕と師匠が荷物をテントの奥に押し入れ、ミネさんをそっとテントで寝かせておいた。
ちょっと、歪な感じになってるミネさんの体が気にならないわけではないが、一旦それは考えないでおき、二人で焚き火の前に座って並んだ。
「そういや、今までもテント張ってたんだっけか…結構手際いいじゃねえか」
「どう…なんですかね。なんかやったことあるような無いような…」
「なんだ?あんま覚えてないんか?」
「…はい。奏音さん曰く、しっかり向き合うことが大事なことらしいんです」
「過去と…向き合うか…」
「はい。」
何やらテントで物音がする。
「んあ…ここどこぉ〜」
「おう。起きたか」
「あれえ…私…って、ひゃああっ!」
今にもテントが倒れそう…
金属音やら、ドタバタとした音が少しの間犇く。
「…み…見られたっ!?」
「どうした?小さいミネなんて見てないぞ」
「みみみ見てるじゃないっ!」
「あぁ〜。でも、全身鎧使えるなんて、ほんとお前器用だなぁ〜」
「もう全部バレてるのね…」
「まっ、うちらの団は結構訳ありって感じの奴も多いからな気にすんなっ!」
「そう?まぁ、私は単に、今の容姿が嫌いなだけ」
テントから出てきたミネさんは、面影はあるものの明らかに体が小さく…というより幼くなっていた。
「おっ!思った通りのチビだったなぁ!」
「うっさい!おっさん!」
「なんか、いつもより辛辣!?」
いや変わってない気が…
「で、これからどうすんだ?」
「何もしたくないっ!」
「ええ?」
「何もしたくないったら何もしたくないのっ!」
結局この日は、子供をあやす感じで終わった。
「……忘れて」
っす〜。これわぁ…。
次の日の朝。朝食を食べながら、いつもの姿に戻ったミネさんが、絶望の淵に立たされたような顔で落ち込んでいた。
「お願い…ほんまに…まじで」
「なんのことですか?」
「え?」
「なんか昨日のことあんま覚えてなくって」
すると、師匠も起きてきた。
「あれ?もう幼女終わったのか?」
師匠おおおおおおおお!
それを聞いて目の前で机に突っ伏せるミネさん。
目を擦って、いまだに眠そうな師匠。
一体、いつになったら収拾つくのかと思っていた矢先、少し離れたところから足音が聞こえてきた。
「この足お…」
いつの間にかミネさんはいつもの戦闘服…というか、初めて会った時の格好に変わっていて、神仇さんもじっと物陰を見ていた。
「軍…か?」
「だろうね」
「どうする?」
「接触は避けたいわね」
「だな。祥はどうしたい?」
「え?」
今何が起きているの…だ?
どう答えるのがいいんだろうか…
『接触しても戦闘は起きないかと』
え?
『多分、第二皇女部隊が演習しているのかと』
なるほど
「予定通り、行動していて問題ないらしいです」
「ほう?」
「レナが…ハ-ナビシステムがいうには…ですけど」
「なるほどな。じゃあ、それに従ってみるとするか」
「じゃあ、すぐに片付けて5分後に出発ねっ!」
ミネさん完全復活、
支度を終え、昨日行けなかったもう一つの施設へと向かった。
「久しぶりに来たが…不気味だなぁ」
入口が苔やら蔓やら雑草で生い茂っており、ぱっと見だと廃屋というか、建物かすら曖昧になっていた。
「ここってこの辺り一体に点在する施設を管理しているんでしたっけ?」
「そう!昨日…最初に行ったところ以外のデータは大体ここに集まってくるわ」
「本部じゃないんですね」
「そうね。ここみたいな施設がこの国の全土にあって、そこで集約してから本部に送るようになっているから」
「元々は、この団のものじゃない施設でな。団の発足当時は部分ごとに取り込んでいったから、ちょっと複雑なんだ」
「なるほど…」
デバイスは充電中というのもあり、慎重に奥へと進んでいった。
また蜘蛛が出たらたまらないので、銭湯を神仇さんがいき、ミネさんが指示を出しながら上へ上へと向かっていった。
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