うわぁ…( ´Д`)y━・~~

最上階と思わしきところに着くと、見覚えのある黒い箱があった。

「充電どのぐらい溜まってる?」

「83パーセントですね。」

「じゃあ、情報の回収を願いするわ」

「はーい」

「ヒグちゃん。ちょっと肩かして」

「へいへい」

僕がデバイスを箱の上におき、ミネさんと師匠は点検やら修理やらをし始めた。

時に、自分で何かできることも無さそうだったので外でも眺めていることにした。

「すごい…自然」

山を登る途中でも、下を見ると一面が緑一色の圧巻な光景だったが、こう高い場所から見てみると一層その緑の美しさと自分の小ささが浮き彫りになる。そんな感じがした。

少し離れた所から何やら声が聞こえた気がしたので覗いてみると、見覚えのある格好をした人達が全速力で駆けていった。

あれは…

「なんか騒がしいな。軍か?」

「多分そうだと思います。」

「まさかここを狙って…」

「確かに近いて来てます。」

「…そうか。あ、先頭にいる奴とかわかるか?」

「先頭…」

紺色の兜に銀髪を覗かせ、ほかの軍人と異なり固そうなスカートを纏っている人。

後ろに続くのは迷彩柄の人たち。大体10人ぐらいか?

「女性の人が率いている軍隊ですかね。紺の兜をつけて銀髪の人が先頭にいます。」

「ってことは、第二王女ね」

「作業は、あとどんぐらいだ?」

「一分ぐらいで終わるわ。これが終わり次第私達も動くってことでいいわね?」

「あぁ。じゃあ祥!支度済ませたら先に降りて軍の動向を見張っててくれ。そこから先は、レナとお前で決めて動くんだ。いいな?」

「あいよっ!」

既にデータ収集が終わっているデバイスを手に取り、カバンにしまいながら階段を降りた。

レナ。通常モードで頼む。

『もう、なってますよ』

流石だね。

『おかげさまで、割と自由に動いてますから。これぐらいお茶の子さいさいです』

な…なるほど。

『では、入り口付近で右側に続く通路があるので一旦そこに向かってください。』

了解っ!

足音を最小限に抑えつつ、今回は能力を使わずに進んだ。

やっぱり能力を抑えてると、こんなもんなのか…

決して遅くはないと思うが、いつものようなテンポ感で動こうとすると転けそうになる。

『私も能力制御出来ればいいのですが…』

いやいや。いつものサポートでも十分だよ…

いくらレナが優秀でも、能力と筋肉は僕自身で鍛えてこそ意味があるように思うかな…

『そういうものですか』

なんでだろうね。多分、全部任せた方が効率的なのかもしれないけど…

『そういう風に思えるかどうかが…私達と団員…人間との違いなのかもしれませんね』

そういうもの…か

『あ、前ぶつかりますよ?』

「えぇっ!?」

痛たたた…

すごい音出しちゃったけど…バレてないよね?

『どうでしょうかね。多分その物陰からなら彼女らが通り過ぎていくのが見えると思います』

わかった。

ね…ほんとに交戦にはならない?

『そうですね。データで見る限りだと第二王女部隊は少数精鋭。無駄な争いは好まない人たちかと。』

なら…いいけど。

次第に足跡が近づいてきた。

「よく見ると、なんかの建物な気もしますね」

「つっても、誰もいなそうだけどな」

そんな会話が聞こえてくる。

この建物に入ってくるかと思ったけど、そうじゃないようだ。

物陰からすこしだけ顔を出し、先頭の方を見た時だった。

あっ……………

確かではないが、目が合ったような気がする。

なぜか、うっすらとだけ見えた相手の顔を思い出すとすこし胸が高鳴る。

どうして…

何が起きているんだ…

結局のところ、交戦どころか接敵すらしなかった。

ほかの軍人の話を聞き、レナと話を合わせる限り、ただたまたまそこで演習をしていたという結論に至った。

少しして降りて来た師匠たちに、事の顛末を目があったことを除いて説明し、軍の進行方向とは逆の道から次の目的地に行くことになった。


それからは、またミネさんが蜘蛛を見て卒倒したり、毎夜毎夜血を抜き取ろうとしてきたりしたが、予定通りに活動できた。

道中で山についての危険性やら、キャンプ道具の使い方を教わり、食べれる山菜なんかも教わった。

そうして一週間の工程を済ませ、拠点…家に帰った。

「おかえりーっ!どうだった?」

「面白かったです」

「…もう二度とごめんだわ」

「ほんとに何があったの…でも、ミネ以外にすぐに壊れた箇所治せる人いないからね?」

「あぁぁぁぁぁあっ…。もう…寝るわ」

ぐったりした顔で、部屋へと帰っていった。

「で?ロリミネ見たの?」

「ロリ…?」

「幼女よ幼女。いつもとのギャップがえぐいアレよ!」

「あぁ…2回ほど見ましたね。」

「可愛くない!?」

「まぁ…確かに。」

「だよねだよね!あと、神仇さんと仲良くなれてた?」

「すっごい言い合い…と言っても楽しそうにしてました」

「はぁーっ!よかった。君もなんやかんやで仲良くなれてるみたいで安心したよ」

「はい。いろんなことを教わりました。」

「そう?ならよかったわ」

「何か、一週間で変わったことありますか?」

「そうね。そろそろ戦争が始まるかもってところかな…」

「はい?」

「明日、いろいろ説明受けると思うから…今日は、ゆっくり体を休めなね」

「わ…わかりました。」


突然…だな。

今まで、色々と教わったり楽しんだりしていく中で、何となくこんな感じが続くとばかり思っていた。

けれど、そんな世界は”戦争”という単語一つで変わってしまうのだ。

習っただけの知識しかない戦争だけれども、風呂に入って眠るだけのことすらおぼつかなくなった。


「おはようございます」

食堂に向かうと見たことある人ない人含め五十人近く集まっていた。

「さ、座って座って」

さらに後からぞくぞくと人が入ってきて、広く感じてた食堂がかなり窮屈に思えた。

「ふむ。読んである分の人数は揃ったようだな」

食堂の中心にボスが一人佇まい、演説を始めた。

「まぁ、多くのものは知っていると思うが、一度情報の整理をしてから話を進めようと思う。よろしいかな?」

全員が頷くのを確認し、説明が始まった。

「えぇ〜まずは、今まで何とか遅らせてきた軍と自由組との戦争だったが、とうとう軍の本部で、自由組の掃討作戦が決定されたようだ。」

「こちらがつかんだ情報によると、結構は三日後で雨天の場合は遅らすらしい。」

すごい情報収集能力だ…

「で、ここが問題なんだが…」

「その作戦の要に第二王女が就いた。」

え?

「え?」

………ってことは

「その第二王女なんだけど、私達キャンプ組と遭遇したんだよね」

「ほう?で、どんな感じだった?」

「特に変わった感じはしなかったわね…」

「そうか…流石に王女一人ではなかったと思うが何人ぐらいでどんなことしてたんだ?」

「それについては、祥ちゃんから聞いた方がいいと思うわ」

『私が代わりますか?』

いや…僕から話すよ

『わかりました』

「えっと、僕が見た時に5、6人ぐらいの軍人を連れて、施設の前を走って通り過ぎて行きました。多分、トレーニングか演習か。そんな感じでした」

「5、6人!?第二王女がか?」

「…は…はい。」

「ありえない。見間違いじゃないのか?」

あってる…よね?

『はい。6人部隊を引き連れてました』

「レナ…デバイスに確認しましたが、確かに6人でした。』

「そう…か。ほんとに見えなくなってきたな。」

あの…どういうこと?

『第二王女の能力は味方が多いほど強くなるという、戦闘向きのかなり強いものなんです。なので、今まで戦場に現れた計3回のうち2回は数百人を引き連れて来ていたのです。』

なるほど…それなのに、少数精鋭だから驚かれているの?でも…

『はい。彼女の場合、戦争となれば数百人を引き連れますが、普段は少数精鋭なんです』

なる…ほど。なんで?

『一説には、数百人の時の負担が大きく、逆に連れている人の強さにも影響を受けるとされています』

なるほどね。普段は別段少数でも違和感ないけれど、戦争前だと少し怪しいってことなのか。

『概ねその通りかと』

ありがと

「取り敢えずこの話を作戦室に持ち帰り、これからの予定を決めていこうと思う。あとは、各自デバイスの充電と体調管理、可能ならば作物の収穫の手伝いも行って欲しい。以上だ。解散っ!」

僕より後から来た人たちが次々と部屋から出ていった。

「あぁ、祥と幹部の連中はまだ残っていてくれ」

一同「了解っ!」

そして。一分ちょっとでいつもの食堂の感じに戻った。

「さて、戦争に巻き込まれる…いや、突っ込むわけだが、お前たちはどうしたい?」

「まぁ、第一に死者ゼロを第一に動くとして…」

「あの…この戦争のほ…の、も…もく…」

言葉が詰まる。ただ気になるだけなのに、どうして…

「どうした?何か知りたいのか?」

「い…いえ。」

「じゃあ、話を続けるぞ。我々は二つの合戦の終結と鎮圧を行いつつ、誰一人として殺さない立ち回りをするわけだが、どうやらこの戦いはかなり軍が有利だそうだ。」

「なら、団としてはやや自由組に味方するということ?」

陽さんがひょこっと現れた。

「そこだよ。いっそ自由組を潰すのも手かもしれないと思い始めてな。」

「でもそれじゃぁ…」

「あぁ。間違いなく当分の間は小競り合いが続くし、いつものように仲裁もできんから物資が足りなくなったらこちらも楽に動くことはできなくなる」

「ならなぜ?」

「今後を考えて…だ。今のままだと、また同じことの繰り返しになりかねん。ならいっそ、一つにまとめておくのも…手かもしれないということだ。」

「…」

誰も次の言葉を発っせなかった。

推するに、どちらも一理あるからでのことなのだろう。

琴先生に教わったが、自由組も最初はただ自由を求めるだけだったが、一部が暴徒化し今では手に負えない集団となっている。

一方で軍も行き過ぎた統制活動で、いつその体制が崩壊するかわかったもんじゃないそうだ。

かと言って、我々団が世の中をまとめるには力不足である。そして何より、人の命ひとつひとつ守ることを主とする以上、そこで集団全体を考えるには正直限度がある。

結局どちらの立場に付くかすらも決まらず、昼になってしまった。

どうやら、どちらの場合についた時のシュミレーションを繰り返しつつ、それを見てもう一度判断することとなったそうだ。

「あ、祥!後でお前の部屋行っていいか?」

「は…はい。」

「何、久しぶりに色々話したいと思ってね」

「そうですか。」

「せっかくだ、茶菓子でも持っていこう。だから多少お腹空かせておいてくれよ?」

「わかりました。」

昼を少なめに済ませた。

部屋に戻って、合宿前にもらったダンベルという重りを探した。

「あったあった」

そして、教わった筋トレメニューのうち、コンセントレーションカールとリアライズを10回3セットでこなす。

そんなこんなで、陽さんを待つこと1時間。

なかなか来ないな…

「よっ!」

「うわああぁぁあっ!」

陽さんが天井に張り付いてこっちを見てくる。

怖っ………

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