なるほど!
「くうぅ〜沁みるっ!」
ミックス牛乳…うますぎる。
「おうおう。キマってんなあぁ」
「あ、先輩。最高っす」
「そうかそうか。で、さっき何に悩んでたんだ?」
「え?」
「弟子の悩みを聞くのも先輩の務めだからな」
「な…なるほど」
まぁ、先輩ここで長いみたいだから何かわかるかもしれないか…
「あの、実は…」
「おお〜もう仲良くなってるみたいね。よかったよかった」
「奏音さん!?」
「おお〜。奏音じゃねえか、ライブ良かったぜ」
「ありがと、神仇さん」
「あ、お前も聞いてやってくれよ。”俺の”弟子の悩みを」
「へ〜祥くんの悩みかぁ。なになに?」
「え…あ…その…」
やばいやばい。これ本人に聞く感じになってる…。
それはなんかやだ。
何か何か、いい感じの悩み…悩み…
「どした?相談しにくい内容だったか?」
「そうなの?」
「えっと…あ!デバイス!デバイスをもっと使ってみたくて」
「そうなの?」
「はい。最近触ってなかったもんですから、ちょっと気になって」
「なら、準備しておくわ。あとで、部屋行くわ」
「わかりました」
ぱっときて、ぱっと去ってしまった奏音さん。
危ねぇ〜。助かった…
「で?悩みってほんとにそれか?」
「え?」
「嘘じゃねえみてえだが、なんかもっと大きな悩みがあるような気がしてな」
「はい。まぁ…」
「あ、まさかお前、奏音に!?」
「違います!」
「ごめんなぁ…色恋沙汰は詳しくねえんだ…」
「だから違いますって!」
「え?違うのか?」
「僕はただ、奏音さんにお礼がしたいというか、何かできることがないかなって…。その、色々助けてもらっているんで…」
「ほう?だったら、お前さんが強くなることだな」
「え?」
「まだ、明日戦ってみるまでは坊主の強さが俺の中ではっきりしねぇが、強くなることに越したことはねえ」
これが…脳筋…
「あいつは…」
先輩がポッケから手帳を取り出す。
「あいつは、よく周りが見れる女だからな、あいつに心配かけないぐらい強くなるっていうのが、一番なんじゃねえか」
「なるほど…」
「後は、だいたい年頃の女子供が好きなのはお菓子じゃないか?」
「え?」
「まぁ、俺も好きだがな」
お菓子か…確かにスコーンに釣られてきてたっけ…
「坊主は料理できるのか?」
「得意ではないですけど…」
「できるに越したことはないぞ?来週からはミネとキャンプ演習だからな」
「キャンプ!?」
「なんだ、聞いていなかったか?」
「聞いてないも何も初耳ですよ
「え?そうだったか?すまんすまん」
頬をポリポリとかき、ちょっと申し訳なさそうな顔をする先輩
「あ、じゃあ明日の訓練のことも伝えてなかったか?」
「はい。なんかさっき戦うみたいなことは言ってましたけど」
「そうそう。訓練室で模擬戦して、それを見てから当分の間は能力なしの猛特訓するつもりだから」
「おお〜ってことは」
「おう。まっ、強くなれるかどうかはお前次第だがなっ」
「は…あいよっ!」
「じゃ、まあ晩飯にするか」
今日もまた一段と香ばしい香りがする。
どうやら餃子らしい
「ハイっお待ち!ラー油ましましでいいのよね?」
「なんでそうなるんですか?」
「え?辛いの好きなんじゃないの?」
「食べれるってだけで別に…」
「そんなぁ〜」
狐巳さんは相変わらず辛いのを勧めてくるけど…
「おーい坊主。冷めちまうぜ」
「あ、今行きます!」
「おう」
…やっぱり辛いの欲しいかも
「あの…」
「ん?ラー油ましましにする気になった?」
「…それで、お願いします」
「はいはい。じゃ、持ってってあげるから先チャーハン食べてな」
「ありがとうございます」
そんなこんなで腹も満たされ、自室に戻った。
まだ、来てないみたいだ…良かったぁ
特に散らばってたわけではないが、掃除をして、椅子に座って卓上に小箒をあてた。
「何やれるかな…」
デバイスというか電気の無駄遣いはしたくないし…でも、慣れておきたいし…
そこで、扉がノックされる音がした。
「入るわね」
「あい…どうぞ!」
吸ったりとした格好で現れた奏音さん。
…これが…可愛い…
「どうしたの?そんなに見つめて」
「いえ…なんでもありません」
なんだろう。でもやっぱり好きとかって感じじゃないけど…なんなんだ?この気持ち…
「ま、とりあえず始めようか」
「はいっ!」
久しぶりに首にひんやりとしたものをくっつけ、感覚を研ぎ澄ます。
『お久しぶりです。赤隥さん』
「久しぶり…えっと」
「最初に読んだ名前が、今後もそのこの名前になるからね」
え?ちょっとそれ早く教えてくださいよ…
「個体番号、”え?ちょっとそれ早く教えてくださいよ…”にしますか?」
「NO〜!」
「では、もう一度お願いします」
…レナ
『レナですね?』
「うん」
「決まったみたいね」
「はい。でも、突然なんで名前を決めることになったんですか?」
「前使ってもらった時はまだ私の使ってる子で試用させてたから」
「あ〜」
「まぁちょうどいい機会だし?君専用のデバイスが届くのはまだ先だけど、データは作り放題だから」
「あ〜。じゃあこのデバイスは…」
「私のよ」
っ!…気にしちゃいけない。気にしちゃ!
「どうしたの?顔が熱そうよ?」
この人わああぁっ!
「ちょっと顔見せてみて」
「いやっ…その…」
目の前に奏音さんの顔がある。
『心拍数上がってますよ』
「ちがっ!」
「え?」
「いや、急にデバイスが」
「あぁ〜デバイスがまだ馴染んでない感じ?」
「あ…はい。そんな感じです…」
助かった…
『良かったです』
え?全部想定通りだったってこと?
『ええ。まぁ、できるAIちゃんですから』
すごいっす
「じゃ、何しよっか」
「すみません。頼んでてあれなんですけど…その…」
「あ〜だったら、ちょっとした旅に出てみようか」
「旅…ですか?」
「そう、旅。視覚と二次元を何やかんやして、実際に近い感じでいろんな場所に行ったような体験ができるのよ」
「すごいですね。あ、でも電気が…」
「電気?私がいるうちはなんも心配しなくていいわ」
「心強いっす」
「ありがと。さ、どこ行きたい?案内してあげる」
ん〜どこ行こうかな…
久しぶりに故郷を見たいし、見たことないところも行ってみたいし…う〜ん。どうしよ
「あ〜王城とか…行きたいっす」
「おっけ〜ざ、座標セットするからベットでデバイスけたまま寝てて。最初はなれるまでは体動かさないようにしたほうが楽だからさ」
「はい!」
ベットで横たわり目を瞑る。
と、目の前…にはさっき名前をつけたレナがふわふわしている。
「なんか、不思議な感覚」
『私がですか?』
「うん」
『感覚というのがいまいちよくわからないのですが赤隥さんがいうのだからそうなのでしょう』
「ねぇ、僕のことを赤隥以外に呼ぶことってできる?」
『できますけど…何にしますか?』
「ん〜なんだろう…」
『無難にあっくんとかでしょうか?』
「いや、できれば名前の方がしっくり来そうな気がするんだけど…どう?」
『では、ユウさんに見習って、祥くんと呼びましょうか?』
「あ〜じゃあ祥って呼び捨てにしてほしい!」
『わかりました。祥。これで行きますね』
「うん。よろしく」
「準備できたわ。さ、心の中でもいいから1番起動って行ってみて」
1番起動。
すると視界が一瞬霞み、音も途絶えた。
「さ、起きてみて」
んん…
ふわっと、風が通る。
眼前には昔見た王城。
体の感覚はないけれど、思った通りの動きというか視点移動ができる、ちょっと不思議な状態。
「お、こっちこっち」
振り返ると、手招きする奏音さん。頭の上に”ユウ”の文字が浮かんでいた
「頭の上の…」
「これ、なんか不思議でしょ?結構離れていてもそっちからはっきりと見えるんだよ」
「へ〜。あ、僕のところにも何か書いてあるんですか?」
「祥ってなってるわね。何か他のものに変えたい?」
「あ、いえ。ちょっと気になっただけです。」
「ふ〜ん。ま、とりあえず進もっか。歩けそう?」
歩く…
いつも見たくあるこうとすると、思ったより体…というかなんというかが動いてしまった。
「きゃ!…って、まぁぶつかることはないけど…」
「ごごごごめんなさい!」
「いいのいいの。まずは、足を動かすイメージを少しだけしてごらん?そうすれば勝手に進んでいくから」
足を…ゆっくり…
体が少しづつ動き始め、そこで歩いていう感覚をやめてもそのままのペースで動いていた。
「で、止まる時は”止まれ〜”って強く念じるか、一瞬後ろに進もうとするかだね」
”止まれぇ〜”
「あ、止まった…」
「うんうん。いい感じね。じゃあ、王城に乗り込もっか!」
「はいっ!…って、ええ!?」
飛び跳ねた奏音さんばそのまま真っ直ぐ王城の、てっぺんに降り立った。
「ほら、はやくはやく」
今度は上に向かって、少し力入れて…
「うわぁあ!」
思いっきり上昇して、慌てて止まろうとしたらそのまま落下。
ぶつかる…
「あれ?痛くない」
城の上で笑い転げる奏音さん。
…今度こそっ!
ふんわりと浮き上がる体をなんとかコントロールできるようになってきた。
ふぅ…ついた。
「じゃ、あっち見てみて」
奏音さんが指差す方向を見ると、広がる街並みと、ビル壁群。その奥には真っ青な場所が続いていた。
「あれが…海…」
「綺麗でしょ〜。でも、あれの本物を毎日見れるんだから、ちょっぴり羨ましいわよね。」
「あぁ〜。ですね。」
ちょいと下を覗くと、時が止まっているのがすぐわかった。
人が誰も動いていないのだ。
声もしない。動きもしない。ちょっと不気味。
「あ、あそこにいるのが第一王女で、その後ろが第二王女。第三は…ここにはいないみたいね。」
なんかあの人、どっかで会った気もする…な。
「あの、第二王女様って名前なんて言うんですか?」
「あ、え?第二王女?氷雨 羽衣じゃなかったかしら?習わなかった?」
「氷雨一族がなんとかして、今の気候を維持しているのは学んだんですけど…」
「なるほどね。今後、彼女らには振り回されるはずだから覚えとくといいわ。ちなみに第一王女が、氷雨 舞衣で、第三王女が翠衣ね。」
「おお〜。みんななんか似てますね」
「そうね。でもまぁ呼びやすい名前よね。」
「はい。もっと堅い感じかと思ってました。」
「それは…まぁ、色々あるんだよ」
「…なるほど」
王家も大変なんだな…
「さ、次はどこ行きたい?山?海?」
「海…行きたいです」
理由はないけど、前からずっと海を目指したような気がする。
海に何をしに行きたかったの…かな。
「はい!ついた」
「早っ!?」
「私もよく気晴らしに、来てるからね。データ常に読み込んであるのよ」
「なるほど?」
……これが、海。
どこまでも真っ青で、いつもみてた空も一層広く感じる。
「飛び込みたくなりますね」
「じゃあ、これしかないわ、ね!」
「…っ!」
突如、僕と奏音さんの体に光が集まる。
「海に行く人は昔からこういう格好をしてたらしいのよ!なんか、こう、凄いわよね」
これじゃ、もう、パンツ一枚と変わらないんじゃ…
「ってか、あんまり奏音さんは格好変わらないんですね」
「あぁ…うん。ちょっとね?恥ずかしい…かなーって」
…すっごい気になる。え?いや、下心とかないですよ?…ほんとに。
「見てみたい…なー。なんつって」
「はいはい。海に飛び込んできな!ね?」
冷たっ!…これが海…
ちょっとクセになる香りというか、伝わってくるしょっぱい感じというかがなんか面白い。
それに、水がすごいリアルというか、なんというか。
「結構すごいでしょ?リアルすぎて日に焼けそうだよ」
「そうですね…ってええええ!?」
下着?じゃないけど…なんか、すっごい格好してる奏音さん。
「やっぱ恥ずかしいからなし!。もう次行くよ?次…」
一瞬で辺り一面が草木の生い茂る草原に変わり、服装も最初のものに戻っていた。
「ここは…」
「ここはね、今はほとんどないサバンナと呼ばれた動物の楽園みたいなところよ。」
「動物の楽園…ですか?」
「そう。ゾウ、キリン、シマウマ、ライオン、チーター、色々いたらしいのよ。今はもう、専用の区域にだけ管理されて暮らしてるみたいだけどね…」
「ネズミとか、猫とかは見たことあるけど…ほんとに、いろんな動物がいたんですね。」
「そう!で、ここはそんな世界も再現しているのよ。せっかくきたのですから、いろんな動物を見て回りましょうか!」
「はい!」
そこから二人で色々飛び回りながら、みたことない動物をたくさん見ることが出来た。
鼻の長いゾウ、首の長いキリン、角が特徴的なサイ。すごく強そうなライオンに、足が速いらしいチーターなど、いろんな動物がいたことがわかった。
「やっぱいなくなっちゃったのって、あれのせいなんですか?」
「そう。世界を巻き込んだ三度目の戦いと、謎のウイルスの蔓延。それらが災いして生態系が…って。この辺は琴ちゃんに教わったんだっけ?」
「はい。全ての原因が人間であった…そう教わりました。」
「ほんとに。私たちはどこで道を間違ったのかな」
「どうなん…ですかね。もっと前の時代なのか、今まさに人がいる事自体なのか…」
「ま、今も大事だけど、やっぱりこれからどうしていくかじゃない?そのためにも、自分で考えを持って、そのために動ける人にならないとね」
「なるほど。しっかり自分で考えれる大人にならなきゃですね」
「だからって、誰にも頼らないのは違うからね?」
「はい!」
ほんとに奏音さんは、周りのことを見てらっしゃる。
それに、すっごい大人だ。
…僕ももっと強くなって、頼ってもらえるように頑張らなきゃな。
そうして、いろんな世界を見ながら2時間ほどで現実に帰ってきた。
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