腹を縦横に割って話したいこと。
「付いてきなさい」
ボスと呼ばれる男に恐る恐るついていった先で長い廊下を歩く。
階段を降り、庭を抜け、また廊下を歩き。
でも、早る気持ちがあるからか、次第に歩幅が広がっていく。
「ここだ」
そう言われ扉を開けた先に、金髪野郎と軍人がいた。
到底、拳が届かない目の前に。
「…この柵壊していいですか?」
「自分で考えてみるといい。君を縛れるのは君自身だ?なら...」
ドンッ!という轟音を響かし殴りつけ、柵を掴んで引き剥がそうとする。
が、ピクリとも動かない。
...くそっ
どうして...どうして...僕はこんなにも非力で..どうして...
さっき枯れたはずの涙が、また溢れてきた。
何回。何十回。もう何回殴ったか分からない。
前がぐしゃぐしゃになっても、殴って、殴って、殴って、殴り続けた。
今、何回殴っただろうか。
終いには力が入らなくなり、膝から崩れ落ちる。
次...次の一発...を
残ってた力全てを拳に込め、届くはずのないところ目掛け、柵と柵の間に拳にを突き出す。
と、今まで殴ってきた時と違って、何かあったかいものにぶつかった。
はっと目を見開き、拳の先に目をやると、金髪野郎の手が窺える。
「.....ごめん」
は?
全身の力という力が抜け、震え出し、寒くなってくる。
すると、柵が四方八方に動き出し、届かなかった壁が一瞬で消え去った。
もう障害となるものは何もないはずだ。
でも、どうにも力が入らない。
手を伸ばしたまま、顔が地面にぶつかるすんでのところで、また暖かいものにふれた。
「…ごめん。間に合わなかったこと。どう接してやればいいかいまいちだったこと…ごめん」
「せめ...て殺...さ」
「それはできない。どんな理由があっても...殺さないし、殺されない」
「なん...で」
「ぼくたちの団はね、命を守るのを使命としているんだ。だから、敵であっても、人殺しだとしても殺さない。」
「...」
そんなの...皺寄せがくるに決まってる。
人殺しは殺さない?じゃあ、殺された人間は...残された人の気持ちは...
「君からみれば、甘い夢かもしれないし、殺すより酷い現実かもしれない。でも、誰も理不尽な死のない済む世界を作るために、僕はなんでもする。そう決めてこの団にいるから。」
金髪野郎は右手をギュッと握りしめ、左袖をはためかせる。
そして、強い眼差しでこっちを見つめて言ってきた。
「どうか、力を貸してくれないか」
…そんなの…困るじゃないか…
そんな..。
そのまま、後味悪く眠りについてしまった。
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