お前が..殺ったのかぁあ゙あ゙あ゙
「お前がっ...よくも兄弟たちをっ!」
「ぼくのこと恨む?」
「殺ったのか?殺してないのかっ!どっちなんだ」
「答えになってないじゃないか少年。まぁ、それはそうと。君は誰一人として殺せないよ?」
隻腕、金髪、ツンツン頭。シワひとつない赤い服がすごく目立った男。
そんな装いも相まってか、我慢できなかった。
拳を思いっきり握り締め、丹田に力を込め、ひとつ大きく息を吐いた。
生まれて初めて思いっきり殴った...筈だった。
金髪野郎の手に当たった途端、威力という威力がかき消され、ジャリッとした感触だけが残った。
「じゃあ、そのまま殴り続けてもらっていいから、質問していいかな?あ、沈黙はイエスととるから。」
何言ってんのこいつ?
蹴って、蹴って、殴って、頭突いて。
それを何回も繰り返す。
繰り返して繰り返して繰り返して。
結果何も変わっていない。
「あのさ、君達の緑髪のリーダー格の子って生きてる?」
「...しらない」
何処を殴っても、相手に傷ひとつつかない。
強いて言えば、何かに触れてる感覚まではある。が、手応えが全くと言っていいほど無い。
「じゃあ、生きてるみたいだ。ふむ。5人分でここまで強くなるのか...」
「何をさっきからごちゃごちゃとっ!」
こいつが、仲間を、兄弟を殺った奴なら...
僕は...
「ちょっと陽っ!何、軍のやつと遊んでんの?」
元々2階だったであろう場所から、また別の赤服の人が顔を覗かせる。
「あー違う違う。この子は保護対象」
「そうなのっ?でも、5人だいた筈じゃ?」
「対象は4人ね?まぁ、色々あったんだよ」
「そう。まぁ、取り敢えず渡しとくわね」
その赤服の女が、露出した太ももから注射のようなものを生み出し、相対してる金髪野郎に投げた。
「じゃ、続きは後でねぇ〜」
は?
...あれ?力...入らない...
なにやら話しているのが聞こえる。
「後少し早く出ていれば...」
「そうね。最近.........」
何が...なんだか...
ううっ..
うっすらと目を開けると、真っ白な天井が目の前に。
「うわぁあっ!」
慌てて飛び起きようとするも、天井に激突。
けれども、ぶつかった瞬間その衝撃は消え去った。
とは言っても全身の筋肉が張り裂けそうなほど痛い。
「やぁ、目覚めたかい?」
「ここは...あいつはっ!?」
「ここは病院さ。それよりも...」
銀色マスクに白衣姿の女性がポケットからハンカチを取り出した。
「涙ふきな?あと、痛いとこにこれ貼っておきな」
...あれ?なんで...涙なんか...
そう思いながら、いたるとこに湿布を貼る。
その時ふと、育ててくれたおばさんの顔がチラついた。
孤児院でかすかに香った、ちょっとさっぱりした感じの匂い。
そんなことを思っていると、さっきまで遊んでたはずの兄弟たちが思考を過ぎる。
一度、呼吸を整え、体の力を抜いた。でも、頭の中だけは思考が止まりそうにない。
僕は、メンバーの中で誰よりも力持ちだったし、何かと面倒見る役になることが多かったことを覚えている。
だからだろうか。目の前でみんな死んじゃってった時も、強がろうとした。
考えるのをやめて、すぐにでもみんなの元に行こうとした。
でも、死ぬのは怖かった。咄嗟の考えだったけど、そう思ってしまった。
だったらせめて、殺し合いの中で死ねば少しは気がまぎれるんじゃ無いかって直感的に思ってみたものの、結局何もできずじまいだったわけ..か。
せめて、さっきの金髪野郎だけでも…
「呼んだぁ( ^ω^ )?」
…………
「お前はっ!金髪野郎」
何処までも呑気な顔立ちが、やはり苛つく。
「どーどー。まー落ち着けって。あと。僕のことは気軽に陽さんでいいから」
「陽くん?そんな言い方してるから誤解生むんだって」
「いやぁごめんごめん、それはそうと」
ん?
「君、この団に入る気はないかい?」
「は?」
「まぁ、考えておいてくれよ。無理強いはしないから」
それだけ言って、またどこかへ行ってしまった。
「なんなんですか、あの人は...」
「あははは...悪い人ではないから」
…絶対嘘だ。
「でさでさ、うちらの団に入るの?というか入ってくれた方が助かるかな」
「ええぇ…嫌ですよ」
「いやぁ、ほっとけなくってね」
「さいですか」
絶対何か裏がある。絶対そうだ。そうに違いない…
「おっす〜!少年生きてる?」
「あら、ミネちじゃない。どしたの?」
…こいつは、なんか足から出してきたやつだった…気がする。
「なんとなく。少年を見にきただけ〜」
「なるほど。あ、自己紹介でもしたら?」
「どうも〜、ミネでーす。」
黒服に赤いベルト。印象的な腿が丸見えのズボン。…だめだ、視線が勝手に…
「ところで少年!」
「な..なんです?」
「血液型なに?」
は?…え?…知らないけど?
って、さっきからなんとも言えない笑顔を見せつ女医さん!?ちょ…怖っ
「O型だったよ」
そう、女医さんが言った途端。ミネさんが目の色を変えてこっちに顔を近づけてきた。
「血を…血を取らせて?お願い!」
ほぉぉら、やっぱりそうだった。どうせ次は、腎臓やら肝臓やら…ああぁ。売られるんだ。
短い人生だったな…でもこれでみんなと会えるならっ…グスン
咳払いをするミネさん。
「君は、人を救う人間になれるとしたら…どう?」
キリッとした顔に戻って、そう言ってきた。
「えっと…血…血を抜かれ、臓器を売られれば、幸せ…?」
「なにを馬鹿なこと言ってんの?ここの団はね、人の命を何より大事にするところだから?それに血っていうのは…」
急に視界から消えたミネさん。
ちょっと下を覗くと、ピクリとも動かなくなった彼女がそこにいた。
「ああ彼女、能力使うと血液減るのよ…でも、この団に血液型がOの人ほとんどいないの…」
「そういうの…見ず知らずの僕に言ってもいいんですか?」
「あ……じゃあ、君が入れば、万事解決。おーけ?」
「いやいやいやいや。助けてもらったお礼はあるとはいえ…こんなとこ居たくないですよ。兄弟を殺した仇のいるところでなんて…」
なぜかキョトンとした顔をする女医。
「なんです?」
「本当に陽ちゃんが君の友達を殺ったって思ってるの?」
「え?いやでもあいつは確かに…」
「たしかに?」
「僕を殴れだとか言ってたし...」
ただ、保護対象とかなんとか言ってたような気もするけど。
「はぁ。あいつ、ほんとに面倒くさい性格してるんだから...」
「改めて、わたしたちの紹介をするわね」
「その話は私からしよう」
「団長!いらしてたんですか?」
「どんな少年か見ておこうと思ってな」
「そうですか。まだ体が弱ってるんで、立てないですよ?」
「寝かしたままでいい」
奥の方に見える、黒い帽子を被った男。
片手には何やら板を持ち、赤い服が様になった風格と背丈。
「やぁ、少年。ご機嫌いかがかな?」
...なんだろう。目が怖い。そう思うと背中が少しゾッとして気持ち悪い......
「…こ、こんにちは」
「早速だが少年。ここはどんなところかと思うかい?」
「え、あ、兵隊のいる所みたいな…とこ…ですか」
「そう見えるかい?」
「あ...えと...いや...はい。」
「なるほど。じゃあ、この紋章に見覚えは?」
...ん?孤児院の本で見たことあるような...
四角い小さな穴が横一列に並び、板で挟まれたようなものが描かれたもの。
確か、おばちゃんも持ってた気がするけど。
「これは、ハーモニカと言ってね。昔の世界で使われてた楽器の一つさ。」
「へー」
やっぱ初耳かもしれない。
「誰でも簡単に音を奏でられてね、他の楽器の音のズレを治すのに使ったりしてたそうなんだ」
「な...なるほど」
「でな、私たちの団は、そんな乱れた楽器を整えるような事をしているのだよ」
「人殺しがですか?」
「ふむ。君は大きな勘違いをしている」
「...」
「君の...兄弟を殺したのは軍の連中。つまり私たちが相手している奴らだよ」
「…証拠は?証拠はあるんですか??」
そう尋ねると、ボスと呼ばれる男は手に持っている板に目をやり、何やら板の上で指を仕切りに動かしている。
「この板を見るのは初めてかい?」
「…はい。なんなんですか?それ」
「そうだな。君がうちの団に入る時にでも教えようか...お、あったあった。」
そう言って、板の表面を見せてきた。
見ると、確かにさっき兄弟を殺した連中と同じ顔したやつが映っている。
だが様子がおかしい。腕は拘束され、顔が所々赤く腫れていた。
すると、そいつらの前に金髪野郎が現れ、こっちを見てきた。
別のチームなのかもしれない分かった。けど、自作自演かもしれないし、どっちが殺ったかなんて分からない。
けど、どちらにせよ目の前に仇がいるのはわかる。
「ちょっとその板貸してくれませわか?」
「…ふむ。彼らならこの板の中にはいないぞ?」
「じゃぁ…あいつの。金髪の居場所…どこですか?」
立ち上がると足がふらつく。肩は今までにないほど重いし、腰は動かしたくもない。
でも、仇がそこにいるのは確かだ。
…だったら今やるしかない。
そう思うのは必然ではないだろうか。
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