第21話

 ぼくがすべきはマリーを護ること。


 マリーはまどろんでいる。たのしい夢をみているようだ。


 ぼくは上体をおこす。腕をのばし、そっと頬をなでてみる。するとマリーはほほ笑む。これでじゅうぶん。過去なんていらない。地位も名誉も通貨もいらない。そんなモノ、あってもわずらわしいだけだ。必要なのは、ひとにぎりの好奇心。それとほんのすこしの勇気だと思う。


 マリーといっしょに生きてゆきたいと想うこの気持ち。はじめてこみあげる感情だ。うそ偽りない。マリーとふたりでタスカロラの深宇宙まで旅するのが、いまのぼくの唯一の望みだ。


 ぼくにいまできるのはマリーを護ること。


 生きてふたたび目覚めることだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る