第12話

「宇宙の旅はたのしいかい?」


ぼくは知らぬまに訊いている。


 気のきいたセリフひとつ言えないじぶんがなさけない。


 考えてみればオンナとの接しかたなんてぼくは知らない。乳房をもみしだいて襞の奥に射精することしか学んでこなかったのだ。やめておけばよいものを、マリーのためを想っても、なにも言えなくてとうぜんだ。


「ありがとう。満喫してるわ」。


 ト書きを棒読みしたようだ。マリーはぼくの逡巡に気づいてない。長い黒い髪。ほとんど怒っているような真剣なまなざし。艶のないその瞳には、ぼくのすがたは映ってない。地上で抱いたオンナたちとは趣がちがう。ちがうことが、ぼくを惹きつける。


「よろこんでる顔には見えないけどな」


 マリーは窓外をながめている。


「そんなことはないわ」

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