第46話

 (※ナタリー視点)


 私は店を出て、サクラたちに報酬を渡しに来ていた。


「ああ、楽な仕事だな」


「確かにそうだな。こんな楽な仕事は、ほかにはない」


 約束通り、私は今までの倍の報酬を彼らに支払った。


「それじゃあ、また次もお願いするわね」


 報酬を支払ったので、私はその場を去ろうとした。

 しかし……。


「次の報酬は、さらに二倍にしてくれよ」


「……何ですって?」


 私は足を止めて、振り返った。

 いったい、何を馬鹿なことを言っているの?

 そんな要求飲むわけないでしょう?

 ただでさえ報酬がいつもの倍になったのに、さらに倍にするなんて、ありえない。

 そう彼らに伝えたところ……。


「それなら、次からおれたちはこの仕事を降りる」


 というのが、彼らの主張だった。


「べつに、それでもかまわないわ。ほかの人に頼めばいいだけだから。あなたたちみたいに、倍の報酬じゃなくても、引き受けてくれる人はたくさんいるでしょうからね」


 まったく、馬鹿な人たちね。

 私がそんな条件を飲むとでも思っていたの? 

 次にお父様たちが来るのは一週間後だから、それまでに新しいサクラを見つけるなんて、たやすいことだわ。

 そう思っていたけれど……。


「いいのか? おれたち、仕事をしているうちは口は堅い方なんだが、仕事を辞めると、急に口が軽くなるんだ」


 彼の言葉を聞いて、周りにいた連中も、下品な声を出して笑っていた。

 なんて奴なの……。

 この私を、脅そうというの?

 でも、このことをばらされて困るのも事実だ。

 私はしかたなく、彼らの要求をのむことにした。


 これでまた、出費の額が増えてしまった。

 赤字は増える一方である。

 なんだか、何もかも、手遅れなのではないかという気がしてきた。


 運命の分かれ道はとっくに過ぎていて、今は既に、分岐点を間違えて選択した道にいるような気分だった……。

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