第33話
ブルーベリーってことは、まさか……。
私と殿下もあの出店でクッキーを買って、それを食べている。
ブルーベリーやチェリーなどが入っていて、いろいろな種類があったけれど、私たちが選んだのは……、ブルーベリーだった。
なんてことなの……。
私たちも、被害者が口にしたものと、同じものを口にしている……。
呼吸が、速くなってきた。
胸を締め付けられるような感覚が、襲ってくる。
まさか、そんな……。
*
(※ナタリー視点)
私は珍しく、お店に来ていた。
普段、現場に出ることはほとんどないけれど、今夜は両親や婚約者が来るから特別だった。
べつに現場の仕事を手伝うわけではなく、彼らの仕事ぶりを裏から見ていた。
万が一、皆に粗相があってはいけない。
もしもの場合に備えて、いつでも私が手を打てるように控えていた。
しかし、幸いそんな事態にはならず、皆は食事を楽しんでいた。
今夜はお客様もたくさんいるから、皆から経営状況を怪しまれる心配もない。
みんなが今夜店に来ることはわかっていたし、お客様がたくさん来ることも、あらかじめわかっていた。
だから、本店からの応援で、従業員を一人こちらに呼んでおいた。
忙しいことに変わりはないけど、一人増えれば、何とか店を回すこともできる。
私のこの采配のおかげで、サービスの質を落とすこともなかった。
そしてみんなは食事を終えて、満足して店から出て行った。
無事に切り抜けることができたので、私は安堵のため息をついた。
なんとか、ごまかせた。
とりあえず今は、そのことに満足していた。
みんなが帰ったので、私がもう店にいる必要はない。
私も店を出ることにした。
とりあえず皆には経営状況が悪いことはバレなかったけれど、経営状況が悪いという事実が消えたわけではない。
最近は、利益が増えないどころか、赤字だわ……。
私はため息をついて、歩調を速めた。
自分が苛立っているのがわかる。
街灯の明かりしかない暗い夜道を、私は一人で歩いていた。
周りには誰も人がいない。
ストレス発散として、思いっきり叫びたい気分だった。
まあ、実際にはしないけれど、それくらい、日々のストレスが溜まっていた。
私は大きく息を吐いた。
早く、この状況を何とかしなければならない。
このままだと、お店が潰れてしまうなんてことになりかねない。
でも、大丈夫。
今夜だって私は、ピンチを乗り越えた。
店の経営状況も、絶対に良くしてみせるわ。
私は改めて決心した。
しかし、せっかく気持ちが前向きになっていたのに、私の前に、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている、たくさんの男たちが現れた……。
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