第34話
「あなたたちは、出店でクッキーを買いましたか?」
「は……、はい。しかも、ブルーベリーが入っているものです」
私は憲兵の人の質問に答えた。
なんだか、視界がぼやけてきたような気がした。
「そのクッキーを、食べましたか?」
「ええ……、二人とも、出店で買ってすぐに食べました」
そう答えた私の声は、僅かに震えていた。
「そうですか……。ああ、でも、ご安心ください。クッキーに入っていた毒は遅効性のものでしたが、効果が現れるのは食べてから一時間後くらいです。だから、もしあなたたちが食べたクッキーに毒が入っていれば、とっくに症状が出ているはずです。しかし、そうなっていないということは、毒は入っていなかったということですね。あ、でも、万が一ということもあるので、もしクッキーがまだ余っているのなら、口にしない方が賢明です。今日はそれを伝えにきたのです」
「あ……、そうだったんですか……」
え……、私たちが食べたクッキーには、毒は入っていなかったの?
あらら……、気付いたらさっきまでの息苦しさも消えている。
病は気からっていうけれど、まさにそれだったのかしら……。
そういえば昔読んだ本で、思い込みで症状が出て、そのまま死んだ人の話があった。
私ももう少しで、同じようになるところだったのかもしれない。
ほっとしたら、何か甘いものを食べたくなってきた。
確かこの宿屋は、ホットケーキとホットコーヒーを頼める。
出店で買ったクッキーがまだ余っているけれど、それを食べる勇気はなかった。
*
(※ナタリー視点)
「あんたが来るのを、ずっと待ってた。ああ、今日はなんてついている日なんだ」
「確かに、こんなに運がいいことは滅多にない。さあ……、金を出しな」
私の前に現れた男たちが、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべていた……。
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