第28話

 私たちは町を散策していると、人がたくさん集まっている場所を見つけた。


「エミリーさん、あの人だかりは何でしょうか? なんだか賑わっていますね」


「なんだか楽しそうだわ。行ってみましょう」


 ということで、私たちはその人だかりの方へ行ってみた。


「あの、皆さんここでいったい、何をしているのですか?」


 私はそこにいた人に尋ねてみた。


「ああ、これはね、町の人が何人か、手作りの商品を販売しているんだよ。食べるものは一店しかないけど、ほかにも彫刻とか絵とか、あと雑貨とかの小物を出している店がいくつかがあるよ」


「へえ、そうなんですか……。食べ物を提供しているお店はどこですか?」


「ああ、それなら、あっちだよ」


「ありがとうございます。早速行ってみますね」


 私は殿下と、その出店に向かった。

 食べ物というのは、クッキーだった。

 チェリーが入っているものやブルーベリーが入っているものなどが、それぞれの箱に梱包されている。

 箱のデザインは可愛い感じのものだった。

 私と殿下は、並んでいる箱を見ながら相談して、ブルーベリーが入っているクッキーの箱を選んだ。


「これください」


 私は商品をお店の人に手渡した。

 お金を払い、袋に入れてくれたクッキーを受け取った。


「エミリーさん、さっそく食べましょう」


「ええ、そうね」


 私たちは近くにあったベンチに移動して、クッキーの箱を開けた。

 そして、さっそく食べてみた。


「あ、美味しいですね。いい感じですよ、これ」


「クッキーの甘みと、ブルーベリーのほのかな酸味が、いい相性だわ」


 私たちはクッキーを食べていたが、近くで騒ぎが起こった。


「おい! 人が倒れたぞ! 誰か来てくれ!」


「どうしたんだ!? 何があった!?」


「わからない。突然倒れて……」


 倒れた人は、すぐに病院へ運ばれて行った。

 その様子を見ながら、そこにいた人たちは様々な憶測を口にしていた。


「どうして急に倒れたんだ? 寝不足か?」


「どこか、体調が悪かったのかしら?」


「まさか、毒を盛られていたりして……」


「おいおい、そんなわけないだろう?」


「はは、冗談だよ」


 えっと……、その冗談は、あまり笑えませんよ。

 もしかして、出店で売られていたクッキーに、毒が入っていたりはしませんよね?

 


 (※ナタリー視点)


「お父様たちがお店に行ったのは、もしかして、お昼だった?」


 私は話しながら、緊張していた。

 うまくいくかしら……。


「ああ、そうだ。みんなでお昼に行って、そこで食べた。味は、まあ悪くないが、客が私たちしかいなかったのが気になったな」


「えっとね、それには理由があるの。あのお店が一番繁盛する時間は、夜なのよ。いつもお昼はお客さんが少ないの。でも、静かで落ち着いた雰囲気を味わいたい人は、お昼に来ることが多いわね。お店の雰囲気は、どうだった? 悪くなかったでしょう?」


 さて、とりあえず考えた言い訳を言ってみたけれど、皆の反応は……。

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