第17話
私たちがこの町へ来てから、三か月近くが経過していた。
この町で過ごす毎日は、本当に楽しい。
市場の近くは、珍しい食材を売っていたり、その珍しい食材を調理してくれるお店があったりして、いつも賑わっていた。
それに、この町ではイベント事もたくさんある。
本当に毎日、楽しい気分で過ごすことができる。
でも、不安が全くないわけではない。
この町にも殿下を捜している兵は、ちらほらといる。
王宮周辺に比べたら、兵の数は減っているけれど、それでも不安なことに変わりはない。
人相や性別を変えて変装しているからといっても、油断はできない。
しかしそれでも、この町で暮らすのは楽しい。
嫌な過去なども忘れることができる。
「エミリーさん、今日はあっちの方で、雑技団の人が曲芸をやるそうですよ。行ってみましょう」
「ええ、そうね。楽しみだわ」
私たちは目的の場所を目指して歩いていた。
しかし、にぎやかな雰囲気とは正反対の、寂れた場所に来てしまった。
えっと……、道を間違えたのかな?
とりあえず、さっき曲がったところまで戻った方がよさそうね。
「そこのかわいいお嬢さんたち。こんなところで何をしているんだ?」
私たちの前に現れたのは、ガラの悪い男たちだった。
彼らの手には、剣や棒などが握られている。
えっと……、ナンパではありませんよね?
*
(※ナタリー視点)
どうしよう……、非常にまずいわ……。
二号店の売り上げが芳しくない。
お店が完成してから、二か月ほど経ったけれど、未だに軌道に乗る気配すらない。
お店が完成して二か月だから、まだ仕方がないともいえるかもしれない。
でも、軌道に乗る兆候すらないのは、かなり不安だ。
このお店を建てるのに、借金までしたのに……。
そんなの、お店の営業が始まれば、すぐに返せると思っていた。
しかし、お店の売り上げは少ないし、伸びる気配も感じない。
まず、客が明らかに少ない。
そのことについて店長に何とかしろと言ったけれど、「そもそも立地が悪いので、客が少ないのは当然ですよ」と言われてしまった。
なんてことなの……。
このままでは借金を返せない。
それどころか、土地代などの支払いなども、できるかどうかわからない。
日が経つごとに、焦りや不安も大きくなっていた。
もしかして私、何か選択を間違えたのかしら……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます