第18話
えっと、どうしよう……。
大きな声で叫んで、助けを呼ぶ?
でも、ここは周りに人がいるような場所ではない。
おそらく助けは望めない。
それなら、逃げるしかない。
でも、逃げたところで、追いつかれるに決まっている。
えっと、それなら……、あぁ、どうしよう……。
「エルシー、私のうしろでじっとしていて。危ないから、下手に動かないほうがいいわ」
「え……」
殿下は、私の前に出た。
剣を持った男が、殿下に近づいてきた。
男は剣を持っている手をぶらぶらとさせながら、殿下の目の前まで来た。
「お嬢さん、この状況でビビらないのは大した根性だが、そういうほうが、こっちもやりがいがある。まずはこの剣で、その服を切り裂いてやろうか」
男が下品な笑い声をあげた。
周りの男たちも、それにつられて笑っていた。
しかし、いつの間にか殿下が、男から剣を奪っていた。
「……はぁ!?」
男は驚いている。
私も驚いていた。
殿下の動きが、速すぎて見えなかったわけではない。
しかし、無駄のない自然な動作で、簡単に男から剣を奪ったのだ。
「おい! その剣を返せ!」
男が殿下に手を伸ばす。
しかし殿下はそれを躱し、男に一撃を浴びせた。
切ったのではなく、柄でみぞおちを突いたので、死んではいない。
しかし男は地面に倒れたまま意識を失っていた。
「お前! よくも!」
ほかの男たちも、殿下に襲い掛かった。
しかし、殿下は彼らの攻撃をかわし、柄で突いて男たちを倒していた。
彼らは地面に倒れたまま、動くことができなくなっている。
私は殿下が戦っている姿を見ていた。
かなり男の部分をさらけ出している。
ワンピース姿で戦っているから、激しい動きのせいで下半身をボロンしてしまった、という意味ではない。
戦いの中で、ちょくちょく声が出ているけれど、普通に地声だった。
まあ、喋っているわけではなく、動きに連動して声が出ているだけだから、ぎりぎりセーフかもしれない。
私はしばらく闘いを見守っていた。
そしてついに、殿下は男たちを全員倒したのである。
えっと……、殿下って、こんなに強かったの?
確かに剣術か何かをしていそうな感じはしていた。
しかし、こんなに強かったとは思わなかったので、私は驚いていた。
*
(※ナタリー視点)
「ナタリー、お店の方はどうだ? 売り上げは好調か?」
「ええ、お父様、もちろんよ。この前新しくお店を出したから、売り上げもどんどん伸びているわ」
私は笑顔で答えた。
しかし、内心では焦っていた。
現実を受け入れられなくて、家族にまで嘘をついてしまっている。
いずれこの嘘もバレてしまうのではないかと不安だった。
このままだとまずい。
経営者がお姉さまから私に変わったせいで、こんなことになったと思われてしまう。
嘘がバレる前に、何とかしなければいけないわ……。
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