第15話

 (※ナタリー視点)


 あぁ、お母様とお出かけして、いろいろ買い物もして楽しかったわ。

 楽しくて、ついついたくさん買ってしまった。

 でも、日頃のストレス発散になったので、今は気分がいい。

 お金はお店の売上金を使ったけど、べつに問題ないよね?

 私、経営者だから。


 気分がいいので、仕事をてきぱきと片付けた。

 また店からの報告書や要望をまとめたものが届いていたので、それらに目を通した。

 そして一つ、気になるものがあった。


「えっと……、お店に一度来てほしい? いったい、何かしら?」


 しかし、ここ数日はしごとをせずに遊んでばかりいたので、書類仕事が溜まっている。

 私はそれらを片付けて、三日後にお店に向かった。


「ナタリー様! あぁ、やっと来てくださった」


 店長は落ち着きがない様子で、私を出迎えた。


「いったい、どうしたの?」


「どうしたもこうしたもありませんよ! どうしてこんなにたくさんの設備が、店に届いているのですか!?」


「え、どうしてって……、あなたたちが新しい設備が欲しいと希望したのでしょう?」


「え……、ええ、確かにそうです。ですが、いくつか候補を上げて、どれか一つだけほしいといっただけです。それなのに、どうしてこんなにいくつも新しい設備が届いているのですか!?」


「え、だって、どうせなら、たくさんあった方がいいでしょう? みんなの要望を聞いてあげたんだから、喜びなさいよ」


 私は少し苛立っていた。

 一つだけ聞き入れて、ほかの候補を却下すれば、却下した人たちから不満が出ると思った。

 だからみんなの意見を聞き入れて、誰からも不満が出ないようにしたつもりだったのに、どうして私が責められるようなことを言われないといけないの?


「報告書にも書いていた通り、新しい設備は、一つで充分だったんですよ。むしろ、たくさんあったら困ります。置き場所がないのに、何とかして置いたせいで、仕事の効率は明らかに下がっています。このままではまずいですよ!」


「あぁ、もう、うるさいわね……。わかったわ。お店が狭くなって困っているのね。だったら、簡単に解決できる方法があるわ」


「ほ、本当ですか!?」


 店長が期待の目で私の方を見た。


「ええ、二号店をオープンしましょう。余分に頼んだ設備はそちらに回せば、問題ないでしょう?」


「え……、えっと……、しかし、従業員はどうするのですか? うちからそちらに回すなんて、不可能ですよ。何人かそちらに回せば、こちらが仕事どころではなくなります」


「大丈夫よ。あなたは考えが足りないわね。そんなの、新しく人を雇えばいいだけの話よ。それですべて解決。このお店のスペースを狭めている設備は移動させることができるし、お店が増えれば、売り上げも増えるわ!」


 完璧な解決策だわ。

 不測の事態が起きても、優れた頭脳で素早く解決策を導き出す。


 やっぱり私って、できる経営者だわ!

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