第2話 ヤバいバディ、ヤバディ誕生!

 「……う! ここは何処だっ!」

 意識を取り戻した晃助、彼は首を動かすとファンファンと音が鳴り何に使うのかわからない端末機器が壁に設置された部屋の中心にある丸い台の上に大の字で寝かされていた。

 「て、手足が拘束されている? あの怪人の女の子はどこに?」

 自分の手足が蜘蛛糸のような白い糸で台に縛り付けられているのを見て緊張する。

 「これはまさか、改造手術台か! やめろ~っ!」

 脱出しようともがく晃助だが、蜘蛛糸は頑丈で彼が気功で筋力をブーストしても逃れられなかった。

 彼がもがくと、ビー! と言う警告音が鳴り響き出入り口のドアがブシュッとガスを噴き出して開くと白いエプロンに黒のドレスとヴィクトリアンメイドの姿をした銀髪の美少女が入って来た。


 「お目覚めになりましたか、山吹晃助やまぶき・こうすけさん♪  ようこそ、ではなくお帰りなさいませ♪ 私達の愛の巣、秘密結社チョッパーへ♪」

 少女が晃助に近づきクールだが優しい口調で語りかける。

 「チョッパーだって、壊滅したはずじゃ? 君はあのシリンダーの怪人なのか?」

 確かめるように少女に問いかける晃助。

 「私の人の姿での名はシュリ、今後は山吹シュリになります♪ あなたの妻にしてチョッパー大首領の娘、合成怪人バラクネラでございます♪」

 シュリが自己紹介をして、耳だけ蝙蝠の物に変える。


 「バラクネラ、俺を一体どうするつもりだ!」

 自分がピンチな状況な晃助が、銀髪美少女を問いただす。

 「大丈夫です、あなたに危害を加えるつもりはありませんから……ね♪」

 銀髪の美少女が頬を赤く染めながら微笑む。

 「待て、俺に噛み付いたのは危害じゃないのか!」

 首筋に噛み付かれた時点で、晃助は彼女を信じられなかった。

 「あれは貴方の情報をいただき私の情報をマーキング、もとい伝達する為です♪」

 彼女が語ると同時に、晃助の頭の中に見聞きした覚えのない情報が流れ込み彼の目に脳が再生した映像を映し出す。


 悪の組織の基地と言わんばかりの場所で、巨大な魔神としか言えない鬼のような異形の男性の像の口からどろりと赤ん坊が吐き出されたのを受け止める手術着の男。

 赤ん坊は液体入りのシリンダーに入れられると、他のシリンダーに液体漬けにされていた蝙蝠とコブラと蜘蛛の怪物が緑色の液体となり赤ん坊の入っているシリンダーに注入される。

 すると、瞬く間に赤ん坊が注入された怪物の特徴を持った姿に変化した。

 その様子を見て喜ぶ手術着の男達と魔神像。


 『成功だ我が娘シュリよ、これからそなたを安全な場所に移送する』

 魔神像が言葉を発すると同時に、黒ずくめの戦闘員達が現れシュリの入ったシリンダーを運び出した。

 

 「これは、お前が生まれた時の記憶か?」

 晃助が映像の意味を理解して叫ぶ。

 「はい♪ そして組織は私を地下へ隠し、上層階をカモフラージュの為に荒らして廃棄したのです」

 シュリが敬意を語る。

 「そこに現れたのが俺か、俺を改造する気か?」

 自分達はトラップにかかったのだと悔しがる晃助。

 「いいえ、これから始めるのは二人だけの結婚式です♪ 私達と私達の子供達で世界征服をしましょう♪」

 シュリが予想外の事を言い出した。

 「ちょ、待て! 止めろチョッパー!」

 「貴方が私を見つけた時、センサーは貴方が私ん恋心を抱いたのを感知して私を覚醒させました♪ 悪魔の愛の囁きを受け入れましょう……ね♪」

 シュリが晃助に口づけをすると同時に、自分の血液を晃助の体内へと注ぎ込む。

 

 それはシュリからすれば逃れらえない悪魔との契約、絶対の支配のはずだった。

 晃助の目に炎が灯り、彼の怪人使いの能力が目覚め手足の拘束を引きちぎる。

 「そ、そんな! 私の糸が!」

 シュリが自分の拘束から逃れて立ち上がった晃助に驚く。

 「逆転だ、俺が怪人使いだと知ったはずだろ? 支配されたのはお前の方だ!」

 今度は逆に晃助が手をかざすろ指から蜘蛛の糸が射出され、シュリを拘束する。

 支配した怪人の能力を自分が使うという、怪人使いの技の一つだ。

 「お前が世界を脅かすなら、俺がお前を支配して世界を守る!」

 シュリに宣言する晃助。

 「それはつまり、私と共に生きてくれると言う事ですよ……ね♪」

 微笑赤く染めてシュリが恥じらう、その仕草に晃助はときめいてしまった。

 

 その一瞬で、晃助によるシュリの拘束が解けるとシュリが怪人化して全身からピンク色のガスを噴き出した。

 「……くっ! こ、このガスは力が抜ける!」

 ガスの甘い香りで体の力が抜けて行く晃助を、バラクネラが受け止めた。


 「私が体内で合成した、心と体をリラックスさせるガスです♪ 」

 バラクネラは、晃助を抱きかかえされに地下へと秘密の階段を降りて行く。

 彼女が降りた先は、漆黒ののキングサイズのベッドがある寝室。

 「私があなたを支配しようとすれば、貴方は私を支配しに来るのは貴方の血を吸い

貴方の記憶を得た事からわかっていましたそれも含めて私の計画通りです」

 晃助をベッドの上に寝かせ、母が子に語りかけるように優しい口調で語りかける。

 「私はあなたの物、貴方は私の物♪ 私達、両想いなんですよ晃助さん♪」

 晃助の青い隊員服を脱がして、発信器を破壊するバラクネラ。

 「愛らしいお顔です、きっと私達の間に生まれてくる子は可愛いですよ」

 そう囁き、バラクネラは晃助と結ばれた。


 「で、俺達は契約を結んだってのか?」

 意識を取り戻した晃助、自分が寝室で寝ており怪人使いが怪人と契約した証拠である左掌に小さく蛇と蜘蛛と蝙蝠を象った黒い刻印が刻まれているのを見る。

 「はい、私と契約で結ばれた証もあります」

 人間態に戻りメイド服を着たシュリが、自分の左掌を晃助に向けて同じ刻印がある事を見せてしれっと言い放つ。


 「ああ、こうなった以上お前に世界征服や悪事をさせない! お前と言う悪の力を、俺が制御して見せる!」

 実際に結ばれた事で覚悟を決める晃助。

 「私を支配した責任、取っていただきますからね旦那様♪」

 そんな晃助の指と自分の指を赤い糸を出して繋ぎハートマークを形作るシュリ。

 「いや、ハートマークとか作るなよ!」

 ツッコミを入れる晃助。

 「良いではないですか、私は貴方に身も心もチョッパー大首領としての権限と大首領細胞だいしゅりょうさいぼうも全て奉げたのですから♪」

 クールだが嬉しそうな口調でシレっと危険なワードを口に出すシュリ。

 「いや、大首領細胞だいしゅりょうさいぼうって何だよ~っ!」

 自分の体が改造されていた事を知って叫ぶ晃助。

 「悪の大首領のスーパーパワーをあなたに与えてくれる、素敵な細胞ですよ♪」

 かくして、晃助は悪の合成怪人バラクネラことシュリと言うヤバイ相棒バディを得たのであった。

 

 

 

 

 

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