ヤバディ!俺の彼女は合成怪人

ムネミツ

第1話 秘密のミッション

 「え~と、俺に何か用ですか谷花さん?」

 病院にも似た白い壁の研究室に上下青の隊員服に身を包んだ短い黒髪に釣り目気味な少年、山吹晃助やまぶき・こうすけは呼び出されていた。

 「へ~イ、ボ~イ♪ 私と君は親友じゃないか、つれないな~♪」

 大げさに両手を広げるのは、谷花たにはなと呼ばれたスーツの上に白衣を着た金髪ドレッドヘアの青年。

 眼鏡を掛けた知的な細マッチョイケメンだが、どこか胡散臭く残念に見えた。

 彼の名は谷花トニーたにはな・とにー、アメリカ人とのハーフで天才科学者。

 ヒーロー組織である、アルゴスの研究開発部の主任と言う立場の青年だ。

 「互いにヒーロー好きでSNS相互フォローしてて、職場以外でも家族ぐるみで付き合いはある程度ですね」

 谷花との関係を列挙する晃助。

 「ヘイヘイ♪ それに加えて、君のお婆さんのカンフー教室の同門と立派に親友じゃないか? 訝しむ必要なんかないだろう?」

 トニーがニヤリと微笑む。

 「谷花さんの専用ラボに呼び出しって時点で、ヤバい話の予感しかしないっすよ」

 「勘が良いな、そのと~りだよボーイ♪ これは、君の特性に関わるスペシャルにお得な話だ」

 トニーが晃助に語り出す。

 「熱田あつた教官からは、ヒーローは地道な訓練だって言わてるんですが?」

 晃助が自分の指導教官の言葉を口にする。

 「彼のような空回り気味な努力男の話は、話半分位聞いていれば良い! 私のこの話は確実に君にコミットするよコミット!」

 トニーが真面目な顔になって語る。

 「なら信じますが、何処か行って来いって奴ですか?」

 トニーが本気らしいので、真面目に聞く事にする晃助。

 「イエス♪ 流石は我が友だ、君に相応しい怪人に出会えるかもしれない場所が見つかった」

 トニーがニヤリと笑う。

 「俺に相応しい怪人ですか?」

 晃助が聞き返す。

 「そう、君に怪人使いの能力があるが家の人工怪人ではその能力を活かせていない

だろ? 私の調べた結果、君は正義の組織が作った人工の怪人とは合わない事が判明した」

 トニーが叫ぶと壁にデジタルスクリーンが浮かび映像が流れる。

 怪人使いとは、ヒーローの敵に当たる悪の怪人の力を使い戦うヒーローの事だ。

 「まさか、俺にどっかで悪事を働いている怪人を捕獲しろと?」

 晃助は嫌そうな顔をした、そう言う悪の怪人はヒーローに倒されて欲しい。

 「半分は正解だ、現役バリバリの悪の怪人は世間的にも組織的にもアウトだよ」

 トニーの言葉に晃助はですよね~と相槌を打つ。

 「だが、すでに壊滅した悪の組織の未使用の怪人ならばギリギリ法的に行ける♪」

 トニーが悪い笑顔をする。

 「それは上に相談した方が良い案件ですよね? 報連相は大事でしょ?」

 晃助が苦い顔をする。


 「問題ない、私の変身ヒーローへの愛の故に上には認めさせよう♪ それに、悪の怪人を捕まえて事前に事件を防ぐのはヒーローの仕事じゃないか♪ これは、君の上司である私の命令だから合法だよ、合法♪」

 トニーが一応つじつまの合う事を言い、晃助を丸め込もうとする。

 「部署違いじゃなかったでしたっけ?」

 平の隊員である晃助にとって、確かにトニーは上の立場だが部署違いのはずだ。

 「い~や、辞令はまだだが君は今から私の直属の試験運用部隊に異動だよ♪」

 トニーが晃助にわけのわからない事を言う。

 「谷花さん、めっちゃ良い空気吸ってますね?」

 晃助はこの人、趣味の為なら何でも有りだなと思った。

 「これまでの私の組織への貢献からすれば当然だよ、天才の役得だね♪」

 ハッハ~♪ と、芝居がかった身振りで笑うトニー。

 「了解しました、チャンスは逃すなってのが家訓なので乗ります!」

 晃助はトニーの企みに乗る事にした、彼も変身ヒーローになりたくてこのアルゴスのユース試験を受けて入隊したのだ。

 「そのチャレンジする冒険心、良いね♪ では明日から、君のバディゲット作戦の開始だ♪」

 トニーと晃助は互いの拳を打ち付けた。


 そして、晃助は山の中へと踏み入れていた。

 「今頃、谷花さんと熱田教官がもめてるだろうな?」

 トニーが晃助の指導教官である、熱血ヒーローな青年を煽ってからかっている姿を思い浮かべる。

 そして晃助は山の中を歩き回り、ついに山肌に付いている怪しげな金属のドアを見つける。

 「良し、こう言う時はまず気息を整えて練気れんきだ」

 自分の臍の下を意識して深呼吸を行うと、晃助の体が山吹色の光を発する。

 そしてドアノブに手をかけると、重い扉を力を込めて思い切り引いて開けた。

 「ぶへっ、黴臭いっ!」 

 ドアを開けた瞬間漂うカビの臭いに彼はむせて、気功のパワーでブースとした筋力が抜けて倒れた。

 立ち直てから中に侵入すると、壊れた蛇の紋章やら研究資料やらが散乱していた実験室後らしい部屋だった。


 「谷花さん、どっからこういう情報集めてるんだろ? 資料は回収しないと」

 ファイルやら研究ノートの類を鞄に入れる晃助。

 辺りを見回すと、地下へと続く扉を見つけたのでもう一度気を練って扉を開ける。

 開けた先の階段を降りて行くと、地下の部分は稼働していた。

 彼の目の前には、巨大なシリンダーの中に謎の緑色の液体漬けになっている銀髪ショートの全裸の美少女が眠っていた。

 晃助は近づいて観察するとその美少女は、耳の位置は人間と同じだが生えているのは蝙蝠の耳。

 豊満な胸は黄色い体毛が水着のように覆っている、それ以外の胴体部分は人間性分が多く腹筋は晃助よりも割れていた。


 そんな人間部分を辿って見て行くと、両手は黒く硬質で蜘蛛の脚を人間の五指に変えた感じであった。

 液体漬けの美少女は、明らかに異形の怪人であった。

 腰には彼女を作った組織の紋章であろう、金色の蛇を象ったバックルのベルトが巻かれており下半身は人間と同じ二本足だが両足の外側は緑色の鱗に覆われ内側は黄色い蛇腹であった。

 「蝙蝠と蜘蛛と蛇かな? 顔は可愛らしいんだが、この組織は何でこんな怪人を作ったんだろうか?」

 晃助が呟いた瞬間、怪人美少女の目が開き金色の両目が彼を見つめる。

 そして、瞬時にシリンダー内部の液体がすべて彼女に吸収されるとシリンダーが開き晃助は怪人美少女に組み伏せられた。

 「……ミツケタ、デアエタ、ワタシの、ウンメイノ、ハンリョ♪」

 怪人美少女は嬉しそうに牙を剥いた笑顔でそう呟くと、組み敷いた晃助の首筋に吸血鬼の如く噛み付いたのであった。

 

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